売り手様は、ライブコマースという新しい領域での事業を展開している会社です。シリアルアントレプレナーのオーナー様で、第1号の新規事業として立ち上げたのがライブコマース事業でした。元々イグジットを前提に作られた事業で、ある程度形になってきたため、譲渡をしたいということでお預かりをさせていただきました。従業員は、業務委託を含めて10名未満です。今回の事業譲渡はあくまでもシステムを譲渡をするだけで人員の引継ぎは行わず、M&A後はエンジニアや代表がサポートする形をとっていました。譲渡希望価格は1億円で、最終的に希望通りの金額で譲渡を成立させることができました。売却先としては、この事業を伸ばしていける資金力やリソースがある会社を希望されており、条件に合う企業にアプローチをさせていただきました。何社かトップ面談を行い、最終的に選ばれたのは同じくIT系の上場企業でした。老舗のシステム会社でライブコマース事業は行っていなかったのですが、新規顧客の獲得やメイン事業やメインサービスを販売する初期的なアポイントのフックとしてライブコマースを活用したいと考えておられました。非常に大きな会社で、広告費等を考えると、1億円での買収も、ある程度の顧客の流入が見込めるのであれば十分に採算がとれると判断されました。本件は、大きく規模感の異なる企業のM&Aとなりました。
売り手のオーナー様はシリアルアントレプレナーで、事業を立ち上げては売却し、その資金を基に新しい事業を展開されていました。今回の会社も、「立ち上げて売却する」というコンセプトのもと設立されたもので、その第1号案件ということで譲渡はある意味で必然だったといえます。選択と集中とも言えますし、新たな事業を作ることが売却を検討した理由になっていると思います。
ライブコマース事業で成功している会社やマネタイズしている会社がまだ少ない時期にお預かりした案件で、事業の内容や収益化の仕組み、ビジネスモデルを買い手候補に伝えるのが非常に大変でした。初期のマッチングから、トップ面談を組むまでに、約半年とこれまでで最も時間を要することになりました。また、新しいサービスのため、買い手様もDDを行う上でもどこを見たらいいのか、なかなか整理することができないでいました。実際に行ったサポートとしては、中国ではライブコマース市場がある程度できていたため、成功している会社の特徴やライブコマースと相性品の良い商品をリサーチして、インフォメーションメモランダムに落とし込み、買い手候補に事業を理解してもらえるようにしました。事業を理解いただくために材料を集めてプレゼンをするのが、サポートさせていただいた中で1番大変だった部分です。ただ、私たちはこれまで数多くのスタートアップの案件をご相談いただいていたので、見せ方等も工夫しながら買い手様にプレゼンをすることができ、無事にクロージングに至ることができました。
1億円で譲渡することになったのですが、当時はまだ売上が立ち始めたばかりで、利益も出ていない状態でした。そのため、この事業が買い手様側にどのようなシナジーをもたらすかを明確にし、1億円という金額が高いのか安いのかを算出していったことが、ポイントだったと思います。財務内容だけを見れば、1億円では買えない状態でした。しかし、将来的な事業価値や買い手様側が事業を取り込んだ場合のシナジーを相互に算出し、納得していただけたことが、成約に至った大きなポイントだと思います。
自身が立ち上げた事業を譲渡できた点と、希望の価格で譲渡できたことの2点です。譲渡できたことが、一番満足されたポイントだと思います。
PMIは売り手様と買い手様双方が互いを尊重しながら進めていましたが、スタートアップと大手上場企業のM&Aということで、カルチャーが異なるため入り口を作っていく部分では苦労があったと聞いています。それでも両者が歩み寄り、最終的には無事に事業譲渡を完了することができました。その後のアフターフォローでは、当初より目指していた既存事業の顧客獲得のフックとなる事業として順調に立ち上がったそうです。ライブコマース事業単体でどれだけ売上を伸ばしたかは、IR資料などに記載がないため詳細は不明ですが、既存事業のフックになるサービスになったと聞いています。
レッドオーシャンの事業譲渡では、財務や人で評価される部分が多いと思います。だからこそ、売りづらいことや、 売れないと判断されてしまうケースも少なくありません。一方、スタートアップの場合は良くも悪くもお互いがマッチしていれば、1億円という価格でも買ってもらえることもありますし、むしろ「安いのではないか」と評価されることもあります。スタートアップの場合は、どのような事業の見せ方をするかが非常に重要になってきます。
PRポイントは私の方でアレンジすることができますし、ブルーオーシャンで事例が少ない領域でも譲渡まで持っていくことは可能です。何でもお気軽にご相談いただければと思います。
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M&Aイノベーション株式会社
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ブルーオーシャン市場では、事業の収益や財務内容だけに注目すると、譲渡のハードルが高く見えることがあります。しかし、売り手と買い手の双方が互いのニーズやシナジーを理解し、事業の価値を適切にプレゼンすることで、予想を上回る価格や条件で譲渡を成立させることも可能です。スタートアップのM&Aを成功させるには、ただ事業を売るだけではなく、その価値をどう見せるかを戦略的に考えることが重要です。今回の事例が、同じように挑戦する方々にとって一つの参考になれば幸いです。