譲渡額
1億円~5億円
売上高
非公表

IT/システム/通信業界の事例

研究者の情熱が叶えたM&A:教育事業の新たなステージへ

エリア
関東
オーナー
30代
売却検討理由
アーリーリタイア
スキーム
株式譲渡

西田 啓二

ミライズ株式会社

今回のM&Aは、売り手様と買い手様が教育への共通の情熱を持ち、互いを深く尊重し合うことで成立した非常に理想的なケースでした。売り手様は、教育に対する強いこだわりと、自身が望む研究や教育活動に専念するための環境を模索し、事業譲渡という決断をされました。その過程で、単に条件の良い相手を選ぶのではなく、教育への理解が深い企業を慎重に選定されたことが成功の鍵となりました。

一方で、買い手様である新聞社は、教育コンテンツの提供を強化する目的と売り手様の事業の可能性を高く評価し、M&Aに臨みました。双方が初対面からお互いを尊重し合い、信頼を築けたことで、ディールがスムーズに進んだ点も印象的でした。

結果として、譲受企業は事業をさらにスケールさせ、売り手様は新たなステージで教育や研究に専念するという理想的な形が実現しています。教育への情熱を共有し、深い信頼を持って進めたM&Aが、双方にとって素晴らしい未来をもたらした好例だと思います。

スタートアップから大手新聞社へ 〜 M&Aの舞台裏

ー ディールの概要を教えてください。

売り手様は、従業員数約5名のスタートアップ企業です。学校の先生向けにeラーニングのような形で教育が学べるシステムの開発や、先生方がオフラインで交流できる数千人規模のイベントも手がけられていました。買い手様は、大手の新聞会社です。

オーナーの夢を繋ぐ決断 〜教育への情熱とM&Aの理由

ー 売り手様は、どのような理由からM&Aを検討されていたのでしょうか。

オーナー様は、どちらかというと研究者寄りで教育に非常に熱心な方で、教員ではありませんが書籍も多数出版されていました。社長として会社を立ち上げられたものの、会社が成長するにつれ研究や教育に関するインプットやアウトプットが行えなくなり、事業に面白みを感じなくなってしまったそうです。事業は順調に成長して多くのユーザーを抱えていましたが、更に成長させることができる人に事業を任せ、自身は研究や教育に専念したいという思いから、年齢的にはまだお若い方ではありましたが、事業の売却を決断されました。

譲渡先を見つけるまでの苦労と成功への道筋

ー 買い手様は、どのように見つけられたのでしょうか。

教育領域に進出したい企業は数多くあり、すでに進出している企業も少なくありませんでした。しかし、「ある程度教育に精通している方に事業に関わっていってほしい」というオーナー様の意向を踏まえると、譲渡先はかなり絞れてきました。そのなかで、新聞社も教育コンテンツを提供しており、面白いのではないかということで、最終的な候補として進めていくことになりました。それ以前には、教育関連の新しい事業を展開している会社も候補として考えていましたが、教育に対するビジョンや方向性がなかなかマッチせず、そこがマッチするような会社を見つけるのは非常に大変でした。さまざまな新聞社にアプローチしましたが、同じ方向性で進むことができる企業を見つけるのが、最も大変だった点だと感じています。

ー 今回の案件で最も印象に残っていることや苦労したことはありますか。

多くの方が「自分たちが頑張って作ってきた事業を高く売りたい」という希望をお持ちです。しかし、これはスタートアップによくあることですが、市場の価値は財務上の評価と大きく乖離しており、売り手様と買い手様の間でバリエーションにギャップが生じることがあります。今回も金額の面で、売り手様と買い手様でなかなか折り合いがつかず、調整には非常に苦労しました。それでも最終的に双方が納得し、その瞬間に立ち会えたことは、最も印象に残っています。

ー M&Aが成功した要因は、どこにあると思われますか。

これまで私がクロージングをサポートしたM&A案件はまだ10〜20件程度ですが、その中でも今回は売り手様と買い手様が互いに尊敬し合っていたのが印象的でした。ディールがある程度進んだ段階で、「おそらくこれはブレイクすることはないだろう」と感じるほど、お互いを尊重し合っていました。初対面でここまでお互いを尊重し合うことは、これまで見たことがありません。売り手様と買い手様の相手を思いやる発言や行動が、成功の最大の要因だと思っています。

ー 売り手のオーナー様が満足されたポイントを教えてください。

オーナー様が最も満足されたポイントは、教育の方向性が同じ企業に事業を譲渡できたことだと思います。担当者の中には元教員の方もいらっしゃっり、そうした安心できる会社に譲渡することができた点が、満足につながっていると思います。

ミライズ株式会社 西田 啓二 氏

M&Aがもたらした未来:事業スケールとオーナーの新たな挑戦

ー M&A後のアフターストーリーをお聞かせください。

譲受企業は大手の新聞社で、PR力や資金力、知名度に優れており、もともと右肩上がりだった事業がさらにスケールし、順調に成長を続けています。一方、オーナー様は、M&Aを決断された理由でもある「教育に専念したい」という希望を実現されました。現在は大学教授として活躍されている傍ら、新たな依頼を受けて書籍の執筆にも取り組まれています。今のところ、双方が目指していた形を実現できているのではないかなと思います。先日オーナー様と連絡を取った際も、「新しいことに色々とチャレンジできている」と、大変喜ばれていました。

ー 最後に、M&Aを検討されている売り手様へメッセージをお願いします。

小規模の会社と大企業のM&Aは、結びつきそうで結びつかないのかなと思っていたのですが、非常に親和性の高い相手だと感じています。「譲渡したい先が明確にあるものの、アプローチができない」「アプローチの仕方がわからない」など、お困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。大手企業への譲渡に向けて一緒に戦略を練りながら進めていくことができますし、売りたい先が明確に決まっている場合は、ご相談いただければ実現に向けて一緒に取り組ませていただきます。