売り手様は営業代行を行う、従業員数20〜30名ほどの会社です。この会社の株は親会社にあたる別の上場企業が保有しており、その上場企業の子会社として運営されていました。株主の親会社の意向で、事業の選択と集中を図るため、営業代行の会社を譲渡することになりました。買い手様は関西の上場企業のIT会社です。幅広いサービスを展開しているものの、自社の営業リソースが不足しており、初期段階のアプローチを担う部隊もいない状況でした。そのため、営業代行会社を営業の一部門として活用したいということで、買収を検討されていました。
売り手企業の親会社である上場企業は、数十社の子会社を保有していました。その中には、親会社のメイン事業に関連する会社もあれば、そうでない会社もありました。親会社は選択と集中を図るため、メイン事業に関連する会社のみを残し、それ以外の会社を譲渡する方針でいました。今回の対象企業である営業代行会社は、メイン事業とは少し毛色が異なる会社であったため、譲渡が進められていました。
営業代行業界はM&A市場でも非常に人気があり、 営業代行会社単体で数字を作っているところもありますし、そうした企業のリストもあります。今回の案件と同じように営業の一部門として営業代行会社を買収したいというニーズもあり、複数の企業が買い手として名乗りを上げていました。そのため、業界を絞ってターゲットリストを作るのは難しく、かなりの数のアプローチリストを作成しました。初回に数百社をピックアップするのは、非常に大変でした。その後、売り手のオーナー様と調整を重ね、どのような企業に譲渡したいのかヒアリングを続けていき、Tier1、Tier2、Tier3というようにターゲットを分類してアプローチを行いました。
財務DDの中で、意図しない売掛金の架空計上が見つかったことです。経理や社長に確認したところ、意図的に行っていた認識はなく、計上に誤りがあったとのことでした。財務DDの中でこの事実を初めて知ることになったのですが、売掛金が減るということは資産もそのまま減ってしまうということになります。誤って計上している部分が0円になると、売掛金の資産が0になり債務超過してしまうような案件でした。売り手様が希望する価格での買収に買い手様もほぼほぼ合意していたのですが、財務DDの中で売掛金の誤った計上という問題が発覚してしまいました。しかし、最終的には当初希望していた譲渡価格での譲渡を実現できました。これは間違いなく、心証を損ねないように対象企業の社長と共に事の経緯や今後の対策について説明し、買い手様側のシナジーについてもしっかりと伝えられたからこそ得られた結果だと思います。財務DDでこのような問題が発覚したのは私にとっても初めての経験でしたが、逆境を乗り越えて希望価格で譲渡を実現できたことは非常に印象に残っています。
売り手企業の社長は、親会社のメイン事業とはそこまで大きなシナジーがあるとは感じていない部分もあったそうです。一方、譲受企業は営業代行事業との親和性が非常に高い会社だったため、シナジーが生まれる企業の傘下に入れたことについて、「非常に良かった」とおっしゃっていました。シナジーのある会社に譲渡が決まったことが、オーナー様が最も満足されたポイントだと思います。新しいキャリアと満足感―譲渡先で描かれる未来
売り手企業の社長もそのまま残られて、営業代行事業をサポートするだけではなく、会社全体の営業をフォローしていくようなポジションにも就き、新たなキャリアを築くことができました。売り手様は上場会社だったのですが、大手に買収していただいたことで、従業員の離職もほとんどなく引き継ぐことができたと聞いています。
社長も社員も満足のいく形でバックアップが受けられているのは、非常に良かったと思います。
営業代行業はM&A市場でも取引が多い人気の業種です。買い手様が集まりやすいという側面もありますが、レッドオーシャンだからこそ独自の強みを出していかないと、「この会社を買う意味があるのか」と判断されてしまうこともあります。本ディールでは、売り手企業ならではの強みをしっかりと打ち出し、買い手に伝えることで成約に結びつけることができました。しかし、自分たちで自社の強みを見つけるのは、難しい部分もあると思います。私たちで訴求ポイントを整理して魅力を打ち出していくこともできますので、何か悩んでいることがありましたらお気軽にご相談ください。
営業代行業界は競争が激しいレッドオーシャン市場でありながらも、買い手側にとっては非常に魅力的な業種です。本ディールでは、売り手企業の特長を深く掘り下げ、買い手企業の営業リソース不足を補う「シナジー効果」を的確に示すことができました。このように、自社の強みを整理し、買い手のニーズに応じた魅力を提案することが成約の大きな一因となります。