譲渡額
~1億円
売上高
非公表

IT/システム/通信業界の事例

IT企業の事業譲渡:逆境を乗り越えた挑戦と再出発

エリア
関西
オーナー
60代
売却検討理由
後継者不在
スキーム
事業譲渡

西下 純平

M&Aイノベーション株式会社

本案件は、資金繰りや後継者不在といった厳しい課題を抱えながらも、従業員の雇用を守り、事業を持続させるためにM&Aを決断した成功事例です。売り手企業の優秀な人材や独自の技術に買い手企業が魅力を感じ、大手企業とのマッチングによって新たな成長の道が開かれました。逆境の中で迅速かつ的確に対応したことで、双方にとって意義ある結果を生んだ点が印象的です。

事業譲渡を決断したIT企業の挑戦

-ディールの概要を教えてください。

売り手様は大阪でIT業や情報システム業を展開されている、売上1億円程度の小規模な会社です。環境に配慮したパッケージシステムをお持ちで、従前はそのパッケージの導入で売り上げを順調に伸ばしておられました。

しかし、 大規模な受託開発の案件があり、多額の資金調達や人員調達も行ったのですが、 結局その案件は流れてしまいました。それを機に、一気に資金繰りが悪化し、その案件のために集めていた人材も辞めてしまい、事業規模を大幅に縮小せざるを得なくなってしまいました。

利益は少し出ていたものの、金融機関の債務が大きく、このまま返済を続けていけるのかも不透明な状況でした。また、社長は65歳を過ぎており、後継者も不在でした。こうした中で、お客様に迷惑をかけるわけにもいかないため、 事業を譲渡して得たお金を債務の返済に充て、従業員の雇用を守りながら事業を続けていこうと、M&Aをご決断されました。


資金繰りの課題と後継者問題が背景に

-売り手のオーナー様は、どのような不安や課題を抱えておられたのでしょうか。

M&Aを検討された背景には、後継者不在と事業の先行きへの懸念という2つの大きな課題がありました。

特に、資金繰りは非常に厳しい状況にありました。従業員1名が働けなくなってしまったのですが、その方は結構な売り上げを取ってきている方だったんです。中小零細企業の場合、従業員1人の売上が落ちるだけで非常に資金繰りが厳しくなるため、間もなくキャッシュも足りなくなるような状況で、早期にスポンサーを見つけてくる必要がありました。 


-売り手のオーナー様が抱える不安や課題を解決するために、どのようなサポートを行われましたか。

何度も社長と面談や会食の場を持ち、お話を伺っておりました。会社の財務状況は厳しく、直近では従業員の方がご病気になられるなど、悪い要因が重なっていたため、最初に「正直厳しいかもしれません」という話をさせていただきました。その上で提案したのが「とにかく幅広く買い手候補企業へアプローチしていきましょう」ということです。

弊社の親会社はコンサルティング会社で、「顧問先含めてアプローチしていくので、一緒に頑張っていきましょう」というお話しをしました。そこから、とにかく各社にアプローチをかけていきました。

期限付きのM&Aで課題解決に挑む

‐今回の案件で最も印象に残っているポイントや難しかったことはございますか。

一つは、期限が決まっていたことです。資金繰りがショートしてしまう前に、必ずお相手を見つけて成約しなければならず、大変でした。

もう一つは、直近の売上や財務状況がダウントレンドである中での検討だったことです。譲り受け先候補の皆様から「本当に大丈夫なのか」と不審に思われることも多く、不安を払拭することに苦労いたしました。

‐期限が決まっていたとのお話しでしたが、案件を受注してからどのぐらい期間で成約まで行う必要があったのですか。

当初は3ヶ月というお話でした。しかし、売り手のオーナー様がもう1社抱えており、 その企業のの事業譲渡が成功して資金繰りは当初より余裕ができたため、少し期間が伸びて最終的には約半年で成約まで進めることになりました。

‐今回の案件が成功した要因は、どこにあると思われますか。

1つ目は、買い手オーナー様を、弊社の顧問先からすぐに紹介できた点です。成約には至らなかったのですが、 売り手様に「M&Aはこのように進めていけばいいんだな」という感覚を掴んでもらうことができたので、今後の交渉をスムーズに進めることができました。

2つ目は、プラットフォームを活用した点です。業種柄プラットフォームを通じた問い合わせも多く、上手く活用しながら進められたのは良かったと思います。

M&Aイノベーション株式会社 西下 純平 氏


‐M&Aを行い、売り手のオーナー様が最も満足された点を教えてください。

買い手様が非常に大手の企業で、 様々なメリットがありました。まず、従業員の雇用が継続され、安定して働き続けることができています。事業面では、例えば資金が潤沢にあるため、今後の採用費や人材の育成費、教育費も十分に捻出できます。さらに、今後は買い手企業の開発も受けていき、専門性に特化したような開発にも取り組んでいけるということで、 会社のさらなる成長と安定が期待できる状況になりました。

売り手のオーナー様も引き続き社内に残り、老後の生活がしっかり担保されたうえで働き続けられるということも、満足されたポイントだと思います。

大手企業とのマッチングが生んだ成果

‐ダウントレンドの中で大手企業とのM&Aが成立しましが、買い手様は売り手様のどこに魅力を感じておられたのでしょうか。

大きくは2つあると考えています。1つ目は優秀なエンジニアが揃っていたことです。 開発の履歴書を一目見るだけで非常に優秀な人材であることはわかりますし、多くがプロパー社員で歴も長いため、離職のリスクも低いとお考えで、人材面に大きな魅力を感じていただけました。

2つ目は、オーナー様の存在です。これまで大阪の会社を見てこられたオーナー様にM&A後も残っていただけることは、買い手様にとって非常にありがたいことでした。買い手様は全くの異業種の買い手であったため開発には知見がなく、大半を外注している状況でした。M&Aを行うことによって内製化を図ることができ、スキルの高い人材が揃い、オーナー様にも残っていただけることで、営業やPMなど上流工程にも対応していけるというところで、ニーズが合致しました。

‐M&A後のアフターストーリーをお聞かせください。

従業員向けの説明会や従業員を交えた会食も行われたそうで、その場でしっかりお話もでき、「問題なくこのまま進めていけそうだ」と伺っています。

また、買手企業様の潤沢な資金を活用して積極的に採用しており会社の規模も拡大傾向にあるという状況です。

感謝のお言葉も多々いただき、幸甚の極みです。

M&Aをご検討されている皆様へ

‐最後に、M&Aを検討されている売り手様へメッセージをお願いします。

取引先や知り合いからの紹介で直接M&Aの取引を行い、後にトラブルに発展するケースをよく耳にします。そのため、必ず間に業者を入れるか、入れない場合でも条件交渉等の進め方に関しては必ず専門家に相談を行いましょう。契約書に関しても必ずM&Aに精通した弁護士に確認してもらうことをおすすめします。
 
また、アドバイザーを選ぶ際には、手数料もしっかり確認することが大切です。例えば自社の株価が2000万円で、最低手数料は1000万円と提示された場合、アドバイザーは買い手側からも同額、もしくはそれ以上の手数料を取っています。
 
そうなると、買い手が株価2000万円の会社を、手数料1000万円を払って本当に購入するのかは疑問です。普段の経営で取引を行う際は、その金額が適正であるのかをしっかりと考えられると思います。同様に、M&Aにおいても業者の話を鵜呑みにするのではなく、これまでの取引のご経験とも照らし合わせながら、慎重にご検討されることをおすすめします。
 
我々は中小企業の支援に特化して少額から対応しているので、ぜひお気軽にご相談ください。