売り手様は、郊外の住宅街に1店舗運営されている調剤薬局の会社です。買い手様は薬剤師の個人の方で、長年大手の調剤薬局チェーンに勤務されており、独立をご希望されている方でした。
一番の課題は後継者不在でした。売り手様は70歳を超えており、お子様はおられましたが、調剤薬局とは全く関係のない業界に従事されておりました。そのため、親族内に後継者となり得る方がいらっしゃらない状況でした。会社内には薬剤師の方々がおりますが、経営に関しては専門分野が異なり、後継者候補にはならないとのご判断をされておりました。そのため、最適な解決策としてM&Aを選択する決断に至りました。
1店舗のみの運営でしたので、売上規模は大きくはありませんでしたが、数千万円後半ほどの売上があり、役員報酬もしっかりと取られており、黒字で順調に運営されておりました。さらに、借入金もほとんどなく、財務内容は非常に健全でした。小規模ではありますが、安定して運営されている優良な会社様でした。
本件の特徴の1つが社長が女性であり、さらに働いている薬剤師や事務の方々も全員女性で構成されている事業体制ということでした。そのため、店舗の雰囲気やこれまでの運営における歴史をお伺いした際、この環境には、男性よりも女性の方がスムーズに回るイメージがあったため、こうした職場環境を尊重できる買い手様や女性薬剤師を派遣できる会社が適していると考えておりました。売り手様ご自身のそういったご意向も強かったと思います。
買い手様は、それまで大手の調剤薬局チェーンで勤めており、大手の環境では効率重視で事務的な業務が多く、お客様とのコミュニケーションが少ないことに自分自身が思う仕事の形と比較し、物足らなさを抱かれていたそうです。この案件をご検討された際に、郊外の住宅街に位置するこの店舗では、地域のリピーターのお客様が多く、病院のかかりつけの方々と密なコミュニケーションが可能な環境がありました。このような地域密着型の店舗であれば、自分自身の望む形でお客様と直接関わりながら、サービスを提供できると感じ前向きにご検討いただけたのだと思います。
買い手探しを行った際、郊外の小規模な薬局にもかかわらず、複数の買い手候補が現れたことが印象的でした。中堅クラスの調剤薬局で複数店舗を運営している会社から、個人の買い手まで幅広い候補者が関心を示され、トップ面談も3社ほど実施いたしました。売り手様は非常に悩まれておりました。初めは「女性ばかりの職場ですので、女性が望ましい」とおっしゃっていましたが、面談を重ねる中で、中堅企業の安定感や魅力にも心を動かされていました。最終的には、個人の方を買い手に選ばれたことも印象に残っております。
売り手様としては財務内容も良く、利益も出ている会社だったため、しっかりとした希望価格をお持ちでした。決して高額ではありませんが、ご自身で一定の金額基準を設定されており、それ以上では売却したいというお考えでした。中堅クラスの会社であれば、この希望価格を自己資金で十分に賄える状況でしたが、独立を目指す個人の方の場合は、借り入れが必要であり、その資金調達が一つの課題となりました。まず、売り手様の取引銀行に事業承継のご説明と買い手様のご紹介を行い、買い手様への資金調達のご相談を行いました。しかし、メインバンクからの融資が断られてしまい、地域の信用金庫にアプローチを切り替え、再度事業承継のご説明と買い手様のご紹介を行いました。信用金庫の方々は非常に前向きに検討してくださり、結果的に時間はかかりましたが、買い手様が必要な資金を確保することができました。この資金調達の成功が、成約に至る大きなポイントであったと考えております。
売り手様が最も満足されたポイントは、買い手様との性格、相性や価値観の一致ではないかと思っています。買い手様が地域のお客様を大切にし、密なコミュニケーションを取りたいという姿勢が、売り手様がこれまで大切にしてきた価値観と一致しておりました。また、引き継ぎの際もお互いに協力的で、非常に円滑に進められたことが成功の要因の一つだと思います。年齢差もあり、まるで親子のような関係性で和やかに進んだM&Aでした。
その後、買い手様にお話を伺う機会がありました。約3ヶ月後に電話で状況をお聞きしたところ、「初めての経営でやることが山積みで、正直言って大変です」とお話されておりましたが、それは独立当初なら誰もが通る道であり、私自身も「半年から1年が経てば状況は落ち着いて来るはずですよ」とアドバイスさせていただきました。その後、特に大きな問題があるようなご連絡はいただいておりませんので、順調に経営を続けていらっしゃるのだと感じております。
本案件の売り手様は大手の仲介会社のセミナーに参加するなど、時間をかけて勉強して情報収集をされておりました。自分の会社がM&Aの対象となるかどうか、またM&Aのプロセスや仕組みについても理解されておりました。ただ、規模感が1店舗で数千万円の売上という会社だったので、大手のM&A仲介会社では最低報酬が高すぎてバランスが取れず、どうすべきか悩まれていたそうです。
今回は税理士様の紹介で当社と繋がった結果、成約に至った訳ですが、他の小規模な企業様であってもM&Aは可能ですし、実際に成約できるケースも多いということをM&Aをご検討されている皆様にお伝えしたいと思います。
株式会社サンアドバイザリー
株式会社サンアドバイザリー
株式会社サンアドバイザリー
株式会社アウナラ
株式会社アウナラ
売手様は郊外の住宅街にあるクリニックの近隣薬局として30年以上営業してきましたが、社内と親族には後継者候補はおらずご相談にいらっしゃいました。
買手様は薬剤師として大手調剤薬局で約15年勤務し、管理薬剤師や店舗運営の豊富な経験をお持ちで、地域に根差した薬局を作りたいというご希望で独立を検討していました。
他にも買手候補には個人や企業が複数現れましたが、売手様は真剣に悩んだ末、従業員と顧客からの理解とコミュニケーション力の高い買手様を選び、会社を託すこととなりました。