譲渡額
1億円~5億円
売上高
非公表

建設業界の事例

非上場の老舗地盤調査会社の上場企業への株式譲渡

エリア
関東
オーナー
70代
売却検討理由
後継者不在
スキーム
株式譲渡

仲川 康彦

株式会社サスガキャピタルパートナー

本案件は、創業50年を超える地盤調査会社の譲渡を通じて、事業の安定とさらなる発展を実現した案件でした。後継者不在という課題を抱える中、買い手企業様との親和性やシナジーを重視したマッチングにより、売り手様と従業員にとって最適な相手を見つけ出しました。役員会での説得や買収後の従業員保護に注力し、譲渡前後の課題を丁寧に解決した点が印象的です。この結果、売上拡大や企業価値向上といった成果を得るとともに、オーナー様にとっても充実したセカンドライフを実現する意義深いM&Aとなりました。

創業50年の地盤調査会社、上場企業へ譲渡

-ディールの概要を教えてください。

本案件は株式譲渡の案件で、売り手様は創業50年を超える埼玉県の地盤調査会社です。資本金は約5000万円、売上規模10億弱のオーナー企業でした。

買い手様は、東証に上場している上場企業のホールディングス会社です。傘下にIT企業や地盤整備の会社など、売り手様の業界と親和性のある子会社をお持ちの、資本金約20億円、売上約300億円の上場企業でした。

後継者不在が招いた譲渡の決断

-売り手のオーナー様はどのような不安や課題から、M&Aをご検討されていらっしゃったのでしょうか。

売り手様は、オーナーが一人で100%株式を保有されているオーナー企業でした。 
ご子息様もおられるのですが、関西で大学教授をされており、生活圏が異なるうえに研究分野も全く別の領域であったため、親族内承継は難しい状況でした。

また、生え抜きで役員に就いている従業員もおられたのですが、オーナー様はその方へ運営を任せることには不安を感じておられました。親族内承継も社員への承継も難しく、後継者がいないことに悩まれて、ご相談をいただきました。

買い手探索の鍵は「従業員の保護」

-買い手様はどのように探されたのでしょうか。

売り手様はオーナー企業で、創業時からオーナーが全国に営業をかけて販路を開拓してきた経緯もあり、オーナー様の存在が非常に大きな企業でした。そのため、オーナー様が退いた後に、企業自体がどのように拡張性を持って成長していけるかが一つの課題になると考えました。そこで、買い手の探索にあたっては、売主企業よりも大きな販路を持つ企業や、類似の業態で親和性の高い事業を展開している企業を中心に探索を行いました。 

また、オーナー様が最も心配されていたのが、これまで頑張ってくれていた従業員や役員の譲渡後の処遇についてでした。地盤調査会社の業界は、親方1人に弟子が2人いるような小規模の企業が多く、”買収後に従業員が全員解雇されてしまった”というようなケースも目にされてきたそうです。このような状況にならないかご心配されていたため、買収後も従業員を変わらず成長させてくれるお相手を探すことにも注力しました。

譲渡成功のカギは役員会の説得

-この案件で印象に残っていることや難しかったポイントはございますか。

買い手様とは会長と直接やり取りさせていただいており、非常にスムーズにお話を進めることができました。当然、上場企業のため東証への適時開示など必要な手続きも色々とありましたが、トップダウンで即断即決のような形で進められたのは良かったです。

一方で、売り手企業の社長様との交渉には苦労しました。 売主であるオーナーが他社から引き抜かれてきた方を社長に据えていたのですが、その社長様が譲渡に関して非常にネガティブな姿勢を示されていました。 当然、非上場企業であるためオーナーの株を売るにも譲渡制限がついており、取締役会での譲渡決議が必要になります。また、雇われ社長だったため、買収後に自分の立ち位置が危うくなるのではないかと危惧されており、専務や常務を含めた役員に対して譲渡をなんとか阻止するような動きも少し出ていました。

そこで、私も売り手企業の取締役会に入れていただき、今回の案件の背景や経緯、買い手企業様の特徴や買収に対するお考えについて、丁寧にお話ししました。

役員会には3~4回出席したのですが、最初は買い手企業側のアドバイザーだと間違った認識をされていたようで、アウェー感が強かったです。しかし、「私は”仲介者”であり、皆さんにとって最良のディールを考えている」ということを懇切丁寧にご説明したところ、ようやく理解を得ることができ、そこから一気に話が進んでいきました。売り手企業の経営陣の方々に今回のM&Aをご理解ご納得いただくことが、最も難しかったです。

株式会社サスガ キャピタル パートナー 仲川 康彦氏

-今回の案件が成功した要因はどこにあるとお考えですか。

今回の譲渡の理由を丁寧に説明し、売り手企業の役員を含めた経営陣に、ご理解と賛同をいただけたことが、成功の大きな要因であったと考えています。

譲渡後の成長とオーナーの豊かな老後

-M&A後の状況や売り手様が満足されたポイントを教えてください。

当初の目論見通り、買収した企業の販路とグループ会社のリソースがうまくシナジーを生み出し、新たなマーケットの開拓にも成功しました。その結果、譲渡前よりも売上も増加しております。

また、上場企業のグループ会社となったことで企業のレピュテーションも上がり、新卒も採用しやすくなるなど、非常にいいシナジー効果が出ています。
オーナー様は譲渡代金も手にされて、ご夫婦お2人で豊かな老後生活が送れることに満足されていらっしゃいます。

-最後に、今後M&Aを検討されている売り手様へメッセージをお願いします。

特に今回のディールのような土木関係や地盤調査の業界は中小企業が圧倒的に多く、似たような業態、業界は今後再編が加速していくと考えられます。

その際は、譲渡後もスタッフや従業員の雇用を守りつつ、会社をさらに発展させられるお相手を見つけてくることが肝要です。零細企業が多いと販路だけを取り、顧客や従業員はあまり大事にされないケースも多いと思います。そのため、お相手をしっかり見極めることは、大事だと思います。