譲渡額
~1億円
売上高
非公表

飲食業界の事例

売り手と買い手の信頼がカギ -経営者の不安を解消するM&Aとは?- 喫茶店M&A

エリア
関東
オーナー
70代
売却検討理由
後継者不在
スキーム
事業譲渡

鈴木 文雄

株式会社弘優社

― 案件の概要について教えていただけますでしょうか。

 50年弱続いている歴史のある喫茶店のM&Aです。東京都内に位置し、昭和レトロな雰囲気が色濃く残るお店でした。この店舗を買収した会社様は、大手喫茶店チェーンの創業者様が新たに立ち上げた新会社でした。新会社は順調に成長し、現在は15店舗程度まで拡大されているようです。以前にその方が運営されていた店舗は、現在500店舗以上まで増えている状況ですので、今後もさらに発展する可能性が高いと考えられます。

― 売り手のオーナー様がM&Aを検討した背景を教えていただけますでしょうか。

 50年にわたりオーナー様1人で経営されておりましたが、オーナー様は70代後半とご高齢で後継ぎとなる方もいらっしゃらないということで、M&Aを検討されておりました。また、オーナー様は他にも体調面でのご不安、資金繰りについても懸念されておりました。一般的に 金融機関が融資を行う際の目安として、最終返済は通常65歳が1つのラインとなっております。最近では70歳まで融資が可能になっているようですが、それでも70歳を超えると新規借入が難しいことが多いです。後継者様がいれば別ですが、後継者様がおらず、将来への不安もあったことから、結果的にM&Aを選択されました。このようなご不安は、オーナー様に限らず多くの経営者様に共通している課題ではないかと思います。

― M&Aに対する不安をオーナー様は抱えていたと思いますが、それに対してどのようなアプローチをされたのか教えていただけますか?

 不安や寂しさを感じていらっしゃったのは事実です。 しかし、今回のケースでは、買い手様が飲食店の運営経験がある方で、喫茶店の「昭和レトロ」という特徴に魅力を感じていた方だった点、買い手様が雇用をそのまま継続することを約束されており、従業員の待遇や店舗の運営もほぼ変わらない形で引き継がれるといった点で、オーナー様には安心感をお持ちいただいたのではないかと思います。さらに、大家様とも50年という長いお付き合いの中でオーナーと信頼関係を築かれていたため、大家様自身が好意的であり、スムーズに取引を進めることができました。  

大切なお店だからこそ。売り手様に寄り添ったM&Aを

― 印象に残っているエピソードや困難だったポイントについて教えていただけますか?

 オーナー様が非常に思い入れの強いお店だったため、売却の際にも時折お店に顔を出していただき従業員の方々にアドバイスを行いながら、見守っていただきました。その結果、売却プロセスは非常に円満に進みました。

― この案件が成功した最大の要因は、どこにあるでしょうか。

 買い手様が飲食店業界に精通している方であったことが非常に大きな要因でした。 さらに、お互いに価格や条件について柔軟に考え、 両方が固執せずに、最適な着地点を見つけることができた点も、成功要因だったと思います。

― 飲食店のM&Aにおいて買い手様に意識していただきたい点を教えてください。

 長年、経営されてきたオーナー様は事業やお店に対して非常に強い思い入れをお持ちです。 売却後も、可能であれば、買い手様に元オーナー様からのアドバイスを受け入れる余地を持っていただいた方が、売り手様の満足度が高まるのではないかと思います。もちろん「買ったからもう関係ない」として完全に割り切る方法もありますが、元オーナー様の経験や知識を活かす形で進めることは結果的に双方に取って良い結果に繋がるのではないかと思います。  

悪意のある買い手を回避するために!M&Aで大切な準備と相談のポイント

― 今後、飲食店を運営されている方でM&Aを考えている方向けに、一言メッセージ、アドバイスをお願いできますか?

 売り手様に特にお伝えしたいのは、正直な資料を最初から出して頂くことです。デューディリジェンスが行われる際に、粉飾されたデータ等が発覚すると非常に気まずくなり、最終的に決まらないことが多いため、最初からありのままのデータを出すことが重要です。また、最近は悪質な買い手も増えてきております。基本的に弊社でも買い手様の調査はいたしますが、様々な手を使ってその調査をすり抜けるケースもございます。中小企業庁でも対策を講じておりますが、少しでも違和感を感じた場合は、信頼できるアドバイザーにご相談することを強くお勧めします。100%リスクを防止することは難しいかもしれませんが、高い確率でリスクを回避できます。M&Aの専門家にご相談することが非常に大切です。