売り手様は、病床約50床を有する、出資持分ありの医療法人です。 買い手様は、出資持分なしの、いわゆる新法の医療法人でした。
売り手のオーナー様は医療法人病院の理事長院長で、この病院は親族から引き継いだものでした。まだお若い方なのですが、今後もいち医療者として診療に専念していきたいという思いが強く、経営をしたい意思はありませんでした。しかし、親族内に承継できる方がいないため、譲渡先を探される運びとなりました。
こちらの病院は50床の病床を有しており、間違いなく地域に必要な病院でした。そのため、患者様やスタッフをそのまま引き継いでいただけて、かつ売り主の理事長もそのまま雇用いただいき、病院の発展を考えていただけるような買い手様に特化して探索をいたしました。
1番難しかったのは、地域で前例のなかった合併というスキームでディールを成約したことです。当初は医療法人譲渡のスキームで進めており、買い手様の医療法人も無事見つかっていました。
しかし、建物が老朽化している部分があり、このまま譲渡を行うと後に立て替え等が必要になるなど、様々な課題が出てきました。そこで、 当初の医療法人の譲渡のスキームではなく、合併スキームを使った方がより効率的なディールになるだろうという結論に至り、合併することになりました。
しかしながら、医療法人の合併は前例が極めて少ないことでした。 合併で進めていくことを決め、所在地の県庁に「合併を考えているのでご診断ください」とご相談した際も、返ってきたのは「当管内では合併の事例はないのでわかりません」という回答でした。
そこから、買い手様や売り手様と合併に関して色々と確認を行いながら進めていき、この地域で前例のなかった合併というスキームでディールを成約することができました。
売り手様は出資持分ありの、いわゆる旧医療法の株式財産権のある医療法人でした。一方、買い手様は出資持分なしの、いわゆる新法の財産権を持たない医療法人でした。
通常、このようなケースでは、出資持分なしの医療法人が出資持分や株式を買い取って内包していくのが一般的です。、
しかし、今回の案件では、合併することによって譲渡対価を支払うのではなく、買い手様から売り手の法人に融資する形で譲渡対価相当分を送る方が円滑に進められると判断しました。
一番の要因は、売り手様と買い手様双方の思惑が見事に合致したことです。
買い手様は腎臓透析を行うクリニックを複数お持ちの医療法人で、分院展開を進めておられました。戦略として、通院する透析患者様もいずれ高齢化していき、通院も困難になる可能性が非常に高く、病床を活用しながら透析が行える体制を整えていく必要があると考えておられました。しかし、病床を有する病院の売却案件はほとんどない状況でした。その中で、今回の売り手様の病院は病床を有しており、買い手様が求める条件にぴったり合致していました。
売り手様にとっても、診療分野が広がることで新たな患者様の獲得にもつながり、譲渡後もさらなる成長が期待できます。双方にとってメリットの大きいディールであったことが、1番の成功要因だったと思います。
売り手様のオーナー様は経営からは退いて医院長として残り、「譲渡後も引き続き診療に従事したい」というご希望通り、 現在も診療を続けられています。また、株主であった親族の中には、理事として薬剤師を務める従妹の女性がいらっしゃったのですが、彼女も職を失うことなく引き続き薬剤師として勤務されています。
更に、合併先から新しい患者様も増えており、より地域医療に貢献できる病院になっている点にも、非常に満足されています。
残された患者様やスタッフの方も含めて、譲渡後もご自身の病院がさらに発展していけるような素養を持った買い手様を探すことが最も重要だと思います。私どもは売り手様のご意向に沿った形で、最適な買い手様をお探しするノウハウを備えておりますので、そうした点にもご注目いただければ幸いです。
株式会社サスガキャピタルパートナー
株式会社サスガキャピタルパートナー
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本案件は、医療法人の合併を通じて、地域医療の継続と発展の実現へ挑戦した成功事例です。売り手様の「診療に専念したい」という想いを尊重しつつ、地域に必要な病院としての役割を継続できる買い手を慎重に選定しました。また、前例の少ない医療法人合併スキームを採用し、売り手・買い手双方のニーズを満たす形でディールを成立させた点が非常に特徴的です。この結果、売り手様は経営から退き診療に専念でき、買い手様は病床を活用した新たな事業展開を進めるという、双方にとってメリットの大きいM&Aとなりました。