髙橋 諒大
東京都港区海岸一丁目2-20 汐留ビルディング3階髙橋様: 新卒でSMBC日興証券株式会社に入社し、いわゆる証券会社の証券マンとして勤務しました。その後は長年にわたり金融業界に従事し、M&Aに携わる前は外資系のフルコミッション制の保険会社に勤務していました。その保険会社で出会った一人の経営者のお客様とのご縁がきっかけとなり、M&Aに挑戦することを決意しました。
その方は会社経営をされており、事業上、多額の借り入れが必要なビジネスを展開されていました。会社の規模は大きかったものの、借り入れに伴い個人で連帯保証を付けておられたため、保証の重要性が非常に高い状況にありました。
保険の提案を行ったところ、ご本人も加入を希望されたため、保険会社による審査を受けることになりました。この審査は健康状態を確認するものですが、その過程で脳に病気があることが判明し、残念ながら保険加入の審査には通りませんでした。あらゆる手を尽くしたものの、最終的には保険に加入することができず、打つ手がなくなり、やむを得ず手を引くこととなりました。
それから数ヶ月が経った頃、その経営者の方から「会社をM&Aで売却した」という連絡をいただきました。詳しくお話を伺うと、脳の病気が見つかったことで、いつまで仕事を続けられるかわからないという不安を感じていらっしゃったそうです。また、小学校に上がる前のお子様がいらっしゃり、ご家族や従業員の方々の将来を考えた結果、「今のタイミングで会社を譲渡しておきたい」と決断されたとのことでした。
この話を聞き、私のM&Aに対するイメージは大きく変わりました。これまでは、M&Aは企業の成長戦略の一環として、経営戦略上の一手として行われるものであり、主に企業を買収する手段という認識がありました。また、ITベンチャー企業の経営者が次の事業資金を確保するためや、多額の資金を得ることを目的に会社を売却し、現金化するようなケースを想像していました。
しかし、そのオーナー様が行われたM&Aは、私がこれまで抱いていたイメージとは大きく異なるものでした。ご自身の置かれた状況を冷静に受け止め、想いを形にする手段としてM&Aを選択された姿に深く感銘を受け、M&Aという分野に強い興味を抱くようになりました。そして、自分自身もM&Aに携わりたいという思いが次第に強くなり、この業界へと進む決意を固めました。
髙橋様:M&Aの案件に携わる中で、私は違和感を覚えることがありました。例えば、私たち仲介会社は比較的高額な報酬をいただいていますが、その報酬が障壁となり、交渉が破談に至るケースや、M&Aに対して一歩踏み出せないオーナー様が多くいらっしゃいました。また、残念なことに、仲介会社の都合によってディールが進められなくなる事例も存在しました。
こうした状況を目の当たりにする中で、譲渡企業や譲受企業にとって仲介業者が本当に正しいバリューを発揮できているのかという疑問を抱くようになりました。現場の感覚として違和感を覚える場面も多くありました。また、当時は部下もいたのですが、彼らからの質問に対して自信を持って納得のいく答えを返せないこともありました。
日本においてM&Aへの期待感は非常に高いため、その期待に応え続けられる仕事をしていきたいと強く考えるようになりました。そのためにはどのようなスタイルが最適なのかを追求し続ける中で、お客様に対して真に貢献できる仕事、そして妥協せずに貢献し続けられる環境を実現したいという思いから、会社を設立いたしました。
髙橋様: 弊社の最大の特徴は、売主様からいただく報酬を0円で仲介することにチャレンジしている点です。創業当初は報酬が0円ではありませんでしたが、新たな取り組みとしてこの挑戦を始めました。
また、全業種を対象としている点も弊社の大きな特徴です。担当者個々によって得意・不得意分野はあるものの、会社として特定の業種に限定したり、特定の業種をお断りするような方針は取っていません。M&Aは業種や業界を問わず必要とされるものであり、「必要な方にサービスを隅々まで届けること」をミッションに掲げ、全業種に対して真摯に取り組んでいます。
髙橋様: 証券、保険、M&Aとさまざまな分野での経験を積んできましたが、その中で特に中小企業のオーナー様とお仕事をさせていただく機会が非常に多くありました。そのため、経営者の方々の想いについては、他の方々よりも深く理解できているのではないかと感じています。
また、実は父をはじめとして家族や親戚にも経営者が多く、周囲に経営者がいる環境で育ったことが、私の仕事への親和性に影響しているのかもしれません。今後も経営者の方々の想いをしっかりと汲み取り、それを反映させた形で仕事をしていきたいと考えています。
髙橋様: 言ってしまえば、M&Aは単なるプロセスに過ぎません。しかし、オーナー様や経営者様にとっては、M&Aという選択がご自身のキャリアプランを大きく変える一手になる可能性もありますし、人生そのものを変えることにも繋がり得ると考えています。さらに、M&Aによって従業員の方々の環境も変わることになりますので、そのプロセスには予想以上の波及効果や影響力が伴うと感じています。
一方で、譲受企業様や我々仲介会社は、年間に何件ものM&Aに取り組んでいるため、温度差が生じてしまうと、良い結果を生む仕事はできないのではないかと考えています。我々仲介会社にとっては、年間に何件もある案件のうちの1件に過ぎないかもしれませんが、オーナー様にとっては、人生で一度きりのM&Aであることが多いです。そのため、「オーナー様の想いや責任から逃げずに、一度きりの選択をベストな形に導くサポートをする」という思いで仕事に取り組むことを、常日頃から従業員にも伝えています。
髙橋様: 数年前に、若いオーナー様のM&Aをお手伝いさせていただいた案件が印象に残っています。オーナー様からは「できるだけ早く譲渡を完了させたい」というご要望をいただいていたのですが、会社は急成長を遂げ、非常に儲かっている状況でした。当初、私は「これほど事業が上手くいっているのに、なぜ売却を希望されるのだろう」という率直な感想を抱いていました。
しかし、ディールが進む中でオーナー様と様々なお話をしていると、オーナー様がご病気を抱えていらっしゃることがわかりました。その病気はかなり深刻なもので、数ヶ月後には手術を受けることが決まっていました。この手術は非常にリスクが高く、命に関わる可能性もあり、命が助かったとしても仕事に復帰できない可能性もありました。そのため、オーナー様は「手術の前に会社の譲渡を成立させたい」と希望されていたのです。
また、オーナー様には4、5人のお子様がいらっしゃり、会社も設立してから数年ではありましたが、急激に社員数が増えている状況でした。オーナー様は非常に求心力のある方で、「この社長だからこそ入社した」という社員も多くいらっしゃいました。オーナー様自身も、病気さえなければM&Aをする必要はなく、したくもなかったと感じていらっしゃったと思います。
結果として、手術前に譲渡は完了しましたが、与えられた期間が数ヶ月しかなかったため、迅速に進める必要がありました。しかし、単に早ければ良いというわけではありません。売主様としても、安心できる相手でなければ決断できないという点がありました。万が一、ミスがあれば大きな迷惑をかけてしまうという緊張感の中で、ディールを進めていきました。
無事に成約に至り、クロージングを迎えた際、それまで見せたことのなかった緊張が緩んだ売主様の表情は、今でも忘れられません。従業員の皆様も涙を流されていました。その瞬間、私は「良い仕事ができたのではないか」と感じましたし、今後も忘れられないディールとなりました。
髙橋様:アウトドア派のように見られることが多く、見た目から怖いと言われることもありますが、実際には飼っている猫を眺めながら家の中で過ごすことが一番の幸せです。出張が多く、人と会う機会も非常に多いため、休日はできるだけ家に籠もって過ごしています。
髙橋様: M&A仲介として、業界において変革をもたらすというほどではありませんが、一つのチャレンジを通じて業界に一矢報いる存在になれないかと考えています。その一手として、売主様・譲渡企業様の手数料0円にチャレンジしています。
また、将来的には我々がM&Aの当事者になりたいと考えています。仲介ではなく、いわゆる譲り受け側として取り組んでいくことも視野に入れています。仲介だけでは、どうしても当事者としての立場を完全に感じることができず、経験したことのないプロセスを仲介としてずっと続けることに、少なからず違和感を抱いていました。
我々は自ら後継者問題を解決していきたいと考えており、そのために自主的にM&Aを実施し、買い手となってこの課題に取り組みたいと考えています。これは将来的な話ではありますが、グループインしていただいた企業様には、後継者として弊社のアドバイザーをアサインすることも視野に入れています。また、現在私はアドバイザーとして現場に出ていますが、時折「この会社を自分で引き継ぎたい」と強く感じることがあります。そのような場合には、可能であれば積極的にグループインしていただけるよう努めていきたいと考えています。
さらに、アドバイザーの独立支援制度を整備していきたいと考えています。非常に優秀なM&Aアドバイザーが多く、我々のように独立志向の強い方も少なくないと思います。そのため、独立を希望する方に対して、支援制度を整えて、積極的に独立を促進していきたいと考えています。現在、アドバイザーの数はまだまだ必要であり、M&Aを待っている企業様も多いはずです。一社で大きくなることも重要ではありますが、個人的には限界があるのではないかとも感じています。それよりも、例えば地域に特化するなど、個性を持った仲介会社やアドバイザーが多数存在する方が、顧客のためになるのではないかと思います。
独立するとなると、社内インフラの整備や、M&Aに関わる契約書やリーガル的な専門知識の提供が必要となります。そのため、これらのサポートを行いながら、独立支援を進め、独立後も協業できるような良好な関係を築いていきたいと考えています。こうした仕組みづくりも進めていきたいと思っています。
髙橋様: 弊社では、売主様側には手数料を無料でご支援させていただいております。最初の一歩を踏み出しやすい環境を整えておりますので、少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談いただければと思います。
また、すでに他の仲介会社に依頼されている方や、直接M&Aを進めている方、税理士や銀行からの紹介で活動している方もいらっしゃるかと思います。そのような方々におかれましても、セカンドオピニオンとしてご利用いただければ、さまざまな角度からのご提案が可能です。ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。
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