売り手様の業界は警備業で、規模感としては売り上げが約5億円以下の 企業様になります。買い手様に関しても同じく警備業界で、業界内では 大手に分類される企業様でした。
大きく2つございました。1つ目は、業績の低下です。これは、売り上げの問題ではなく収益の圧迫が大きな課題でした。 社会保険料の適用拡大に伴い、未加入だった警備員の方々の社会保険料の負担が大きくなりました。もともと、社会保険料を考慮しての単価設定ではなかったため、 収益は黒字の月もあれば赤字の月もあり、安定していませんでした。そのため、収益の改善が必要と感じており、将来の経営に対する不安を抱えていらっしゃいました。もう1つの不安要素は、個人的な事情ですが、親族経営に伴う債務があり、これも将来の不安材料となっておりました。
譲渡を検討するに至った理由は、大きく2つの課題へのアプローチにありました。まず1つ目は、 収益率が今後さらに低下していく可能性を踏まえ、悲観的な将来のシナリオを想定した上で、「このまま自社で経営を続ける場合に考えられるシナリオ」と「M&Aを視野に入れた場合の選択肢」を双方提示し、どちらが会社、社長個人にとって現実的な選択かを検討しました。複数回の面談で議論した上で、M&Aを視野に入れる必要があるという決断に至りました。
2つ目に、付随する課題として「債務」の問題がありました。周囲からは「返済しなくても良い」というアドバイスを受けていたようですが、督促状が継続的に届いている状態でした。周りの助言に従い返済を拒否した場合、その負担が誰にのしかかるのかという現実的な問題がありました。私は、「督促状が届き続ける人生を選ぶのではなく、今なら返済できるので返済して、胸を張って生きていく方が良いのではないか」というご提案をいたしました。 「死ぬまでにどうありたいか」という、人生、将来についてもお話させていただき、結果、最終的に会社売却を相談する相手として私を選んでくださることになりました。 「この人なら信頼できる」と感じていただいたことが、私を選んでいただいた理由だと考えております。
警備業界のマッチング自体はそれほど苦労しなかった印象です。業界自体が平均年齢50歳60歳の業界の中で、売り手の企業様は、40歳以下の非常に若い人材を多く抱えておりました。警備会社様にとって、こういった若い人材は非常に需要が高く、そのためマッチングは引く手あまたであり、複数の企業様とのトップ面談を実現できたディールとなります。加えて、営業が強い企業様や、しっかりとコスト管理ができている企業という観点で、売り手様の条件に合い、さらに現在抱えている収益課題を解決できそうな買い手様とのマッチングを進めてゆきました。
取引が終わった後のお話になるのですが、「債務を返済した方が良い」とアドバイスしたのは実は私だけだったということです。この点がディールの中で非常に印象に残った部分でもあります。周りには耳当たりの良い、つまり、甘い言葉だけを言う営業の方が多かったようです。しかし、私はあくまで自身の信念に基づき、「もし本当に胸を張ってこれからの人生を歩むのであれば、やるべきことはやった方が良いのではないか」というお話をしました。オーナー様はその点で「本当の仲間とは誰なのだろう」と感じたそうです。
厳しい言葉をかけることには、当然嫌われるリスクもあります。しかし、自分自身の信念に従って正直に話したことが、結果としてオーナー様にも伝わったことが、非常に強く印象に残っております。
あくまで私の推測にはなりますが、いくつかの要因があったと考えております。まず、弊社にご依頼をいただいてから約2か月半でご成約に至りました。売り手様がスケジュールを積極的に空けていただいたことも影響し、売り手様・買い手様の双方が非常に迅速にデューデリジェンスを進めてくださいました。最終契約書の調整も含め、基本合意から約1.5か月で終了できたことは、一時的な負担はあったものの、ストレスを軽減し、不安を払拭できたのではないかと感じております。
もう1つの要因として、老後の資金の確保がありました。生活費や引退後の資金が大きな課題でしたが、手取り分を確保できたことで、老後の資金面に不安がなくなったことも、売り手様にとって大きな満足点だったと思います。我々としても、売り手様にアドバイザーとして私を雇う価値を認めていただいた上で、買い手様から経済面も含め良いご提案をいただけたことも、成功の要因の1つだと考えております。
ご支援後も継続的に連絡を取っている方に関しては、半年から1年のペースでお食事をご一緒しています。
また、「君に依頼してよかった」「あの時に決断をしたことが本当に良かった」という声をいただくことが多いです。売主様は当然、不安を抱えられていた中でM&Aの決断をされたのですが、あのタイミングでこの決断をして本当に良かったと、毎回おっしゃっていただけます。その言葉に尽きると感じております。
いろいろな所から電話やダイレクトメールが来て、判断に迷うことがあると思います。皆様のお時間が限られている中で、まずは多くの方の話を聞いてみて、誰が正直に話をしているか、また誰が目先の経済状況にとらわれずにご自身のことを考えてくれるかを推し量っていただければと思います。特に弊社がダメというお話ではないのですが、会社単位ではなく、個人でご判断いただく方がより建設的な判断がいただけると思うので、まずは会ってみることをおすすめいたします。
経営者様に関しては、人材不足や単価が上げにくいという課題が多く、最近の最低賃金の上昇もあって、コストが圧迫される中で売上を上げるのが難しいという業界特有の課題が多いと思います。 自社での努力も当然重要ですが、努力の仕方は人それぞれ異なります。私であれば、そういった良い事例をM&A以外の観点からも共有し、実際にできそうかできなさそうかを照らし合わせながら、M&Aや今後の経営の選択肢について一緒に考え、アドバイスができればと思います。ぜひご相談いただければ幸いです。
売手様は創業20年以上の老舗警備会社であり、売上人数ともに十分な業績・体制を構えておりましたが、昨今の社会保険料適用事業所の拡大もあり、社会保険料の加入を迫られた結果、利益水準が低下、今後の低下を防ぐために、顧客数の拡大と双方に警備員の共有を行うことで、社保適用分の回収を図りました。買手様も同様に警備会社でしたが、中小企業1社では実現が難しい経営基盤の構築、採用ノウハウや福利厚生整備などを実現することができました。