世間では「M&A(合併・買収)=企業同士のビジネス取引」というイメージが強いですが、実は個人でM&Aを行なっている人は年々増えています。
この記事では、個人がM&Aを成功させるポイントや個人のM&Aのメリット・デメリット、個人のM&Aの案件の探し方について解説します。
M&Aに興味があるけど、個人で始めるには何からしたらいいのかわからないという方は、ぜひこの記事を参考にしてM&Aを始めるために何が必要なのか学んでみて下さい。
この記事の監修者目次
個人M&Aとは、個人が他の事業や資産の買い手となる小規模の事業の合併・買収のことです。個人M&Aの多くは、規模が小さいというハードルの低さや、事業の拡大や新しいビジネスチャンスの獲得など様々な目的で行われています。
小規模な事業や会社であれば、数十万〜数百万円程度で買収することができます。近年では、事業承継の後継者不足問題や副業や起業のハードルが下がっていることもあり、個人のM&Aは徐々に注目されはじめています。
規模が小さい個人M&Aは「スモールM&A」「マイクロM&A」とも呼ばれています。
また、個人が事業の買い手となるM&Aの他に、個人が売り手側になるM&Aも増えてきています。
会社売却や事業承継など、M&Aに関するお悩みは、ぜひM&A Leadへご相談ください。
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近年、個人によるM&Aが急増しており、その背景にはいくつかの重要な要因が存在します。これまで企業間での取引が主流だったM&Aですが、個人でも参入しやすい環境が整備されたことで、その数は年々増加しています。以下では、個人M&Aが増えている具体的な背景について詳しく解説します。
日本の中小企業の多くは、経営者の高齢化に伴う事業承継問題に直面しています。帝国データバンクの調査によると、日本の経営者の平均年齢は年々上昇しており、多くの経営者が引退を考える時期に差し掛かっています。
しかし、後継者が見つからないケースが多く、その結果、事業承継が困難になる事態が生じています。特に、子供に事業を引き継ぐ意思がない場合や、適切な後継者がいない場合、M&Aが唯一の解決策となることが多いです。このような背景から、個人が後継者として企業を買収するケースが増加しています。
最近の労働環境の変化も、個人M&Aの増加に寄与しています。厚生労働省が副業・兼業の推進を図るガイドラインを改定したことにより、多くの企業が副業を解禁しました。これにより、サラリーマンが本業を続けながら、M&Aを通じて中小企業を買収し、副業として経営に携わることが可能になっています。
特に、既に確立されたビジネスモデルを持つ企業を買収することで、リスクを抑えつつ収益を得ることができるため、個人M&Aは魅力的な選択肢となっています。
個人がM&Aを行いやすくなったもう一つの要因は、M&Aマッチングサービスの普及です。これらのオンラインプラットフォームは、事業の売り手と買い手を簡単に結びつけることができ、個人でも手軽にM&A案件を探し、交渉することが可能です。特に、数百万円程度の小規模案件が多く取り扱われているため、個人が初めてM&Aに挑戦する際にもハードルが低くなっています。
個人がM&Aを選択する理由の一つに、資産形成やセカンドライフの一環としての利用があります。年金制度の不確実性や平均寿命の延びにより、老後の生活資金を確保する必要性が高まっています。
そのため、個人M&Aを通じて中小企業を買収し、安定した収益源を確保することで、将来の経済的な安心を得ようとする動きが広がっています。特に、比較的低リスクで収益を上げることができる事業を選ぶことで、定年後のセカンドライフを充実させる手段として注目されています。
個人M&Aの相場は、主に「マイクロM&A」や「スモールM&A」と呼ばれる小規模取引が中心で、取引額は数百万円から1,000万円未満が一般的です。特に多いのは300万~500万円程度の案件であり、大企業のような巨額の資金を必要とせず、個人でも十分に実施可能です。
また、インターネット上のM&Aマッチングサイトの普及により、数十万円から数百万円で取引が行える案件も増加しています。これにより、個人がM&Aに参加するハードルが下がり、資金力に応じた案件を選ぶことで、リスクを抑えながら事業を手に入れることが可能になっています。
次は、個人でM&Aをおこなうメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
まずは、買い手側と売り手側それぞれのメリットを解説します。
個人M&Aのメリットの一つは、事業を軌道に載せるまでにかかる時間とコストを削減できることです。
自分で0から事業を立ち上げるよりも、すでに一定事業が成り立っている会社を買収したほうが、より早いタイミングで投資を回収できる可能性もあります。
例えば、エステサロン事業を営む場合、
・出店エリア調査
・テナント物件調査、選定
・不動産契約(賃貸借契約)の締結
・内装工事
・設備(机、椅子、ベッドなど)の購入
・その他備品の購入
・サービスメニュー開発
・サービスオペレーション設計
・スタッフ採用、研修
・HP制作
・初期の集客施策
最低でも上記に取り組む必要があり、これらを一人で行うのはなかなかハードルが高いでしょう。もしこのように、ゼロから事業を立ち上げるとなると、売上を上げ、利益を出し、投資額を回収するまでに相当な時間や労力を要します。
しかし、個人M&Aによって、売上・利益が一定発生している事業を買収できれば、買収してからすぐに売上・利益を上げることも可能です。また、買収先のサロンが赤字だったとしても、事業を立て直すことができる自信があれば買収してしまうのも一つの手です。赤字事業は、オーナーが早く撤退または譲渡したいと思っているケースも多いので、黒字事業よりも安く買収できることもあります。
買収した事業と、既存の事業と組み合わせることで、顕著なシナジー効果を生む可能性も期待できます。
例えばエステサロンの場合、サロンの基盤を活用して、美容製品の販売や健康関連サービスの提供など、新たなビジネスを展開することも可能です。これにより「収益源の多角化」が実現し、ビジネスのリスクを分散すると同時に全体の収益性を高めることができます。
例えば、サロンの顧客に対して特別なスキンケア製品を提供することで、顧客満足度を高めつつ、追加収益を生み出すことも可能です。また、買収したサロンで美容製品を販売して利益を出すビジネスモデルが確立できれば、同じやり方を成功事例として競合サロンに提案し、美容製品の新たな販売先の開拓にもつながるかもしれません。
このように、「事業シナジー効果」を活かすことで、既存のビジネスモデルを強化し、新たなビジネス機会を創出することが可能になります。
買収した企業の経営者として役員報酬を得ることも可能です。
例えば、小規模ながらも利益を上げているエステサロンを買収した場合、そのサロンの経営者として、定期的な役員報酬を自身に支払うことが可能です。また、本業が会社員である人にとっては、副業としての収入源となり得ます。
役員報酬は事業の利益に基づいて決めるため、利益が増えれば、それに比例して報酬も増えるため、経営者としての動機付けにもなります。また、会社員と二足のわらじの場合、役員報酬は会社員としての給与とは「別の収入源」となります。
さらに、役員報酬を得ることで、税制上の利点を享受することも可能です。例えば、個人事業主の場合は自分への給与は必要経費になりませんが、役員報酬は経費算入できます。
また、法人税率が低い場合、役員報酬を通じて得た収入は、個人的な所得税負担を軽減することにも繋がります。買収した事業が成長し、さらに大きな利益を上げるようになれば、役員報酬を増やすことも可能になり、長期的な資産形成にも繋がります。
安定した事業を買収できれば、不労所得になる可能性もあります。
特に、自分自身が事業運営に多く時間を割かなくても利益を生み出すような事業の買収を選択することで、労働時間に依存しない収入源を構築できます。
例えば、管理や運営が比較的容易なエステサロンを選んだ場合、適切なマネジメント体制や自動化システムを導入することで、日々の業務に深く関与せずとも安定した収益を確保できます。
また、既に確立されたビジネスモデルがあれば、それをそのまま引き継ぐことで、事業立ち上げ初期段階で通常発生するリスクや不安定性を回避し、早期から安定したキャッシュフローを生み出すことが可能になります。
そうすれば、自身の時間を他の事業や個人的な活動に充てることができ、よりフレキシブルなライフスタイルを実現することもできるでしょう。
買収した事業をうまく運営し成長させることができれば、将来的にはより高い価値で売却できる可能性があります。
例えば、エステサロンのような店舗ビジネスでは、売上・利益の向上、サービスの質の向上、ブランドの確立、買収時とは別のビジネスモデルの構築(例えば物販など)により、買収時よりも企業価値を高めることが可能です。
買収して黒字経営を継続すれば、売却前に初期投資額を回収でき、さらにそこから売却することができれば大きな利益(キャピタルゲイン)を得ることが可能です。
また、金銭的なメリットだけでなく、売却にかかる交渉やデューデリジェンス(※1)対応などは大きな経験となり、今後また別の事業を行う際に大いに役立つはずです。
一方、経営判断に失敗すると反対に損失を被るリスクもあるため、上手くいくビジョンだけでなく、撤退基準を明確に設定しておくことも必要です。
(※1)投資を行うにあたって、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査すること
続いて、売り手側のメリットを解説します。
個人M&Aの大きなメリットの一つは、事業売却によって得られる売却益です。事業を譲渡することでまとまった資金を得ることができ、その資金は新たなビジネスの立ち上げや、引退後の生活資金として活用することが可能です。特に、事業を売却することを目標に起業していた場合、M&Aは計画的に大きな利益を得る手段となります。
売却益には税金が課されるものの、安定した利益を生み出していた事業であれば、手元に残る資金も十分であり、次のステップへ進むための強力な資源となります。
後継者問題は、多くの事業主が直面する大きな課題ですが、個人M&Aはその解決策となります。特に、親族や従業員の中に適任者が見つからない場合、M&Aによって外部から信頼できる後継者を見つけることが可能です。
個人によるM&Aにおけるデメリットの一つとして、不十分なリサーチやデューデリジェンス不足(※1)が挙げられます。これらが原因で、簿外債務や法的なトラブルなど、予期せぬ問題に直面する可能性があります。
先ほどのエステサロンの買収を例にとると、財務状況の表面的な分析だけでは見えない隠れた債務や、顧客からの未解決のクレーム、仕入先からの訴訟リスクなどが存在することがあります。
さらに、サロン特有の設備の維持管理や、スタッフの人間関係問題なども考慮する必要があります。このような隠れた問題を見逃すと、買収後に大きなトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
そのため、十分な事前調査とデューデリジェンスを行い、買収対象サロンの実際の価値とリスクを正確に把握し、より安全な判断を下すことができます。
個人M&Aで少額の案件を検討している場合、一般的にこれらのビジネスは売上や利益が少ない傾向にあります。
たとえば、エステサロンにおいて、買収価格が低いサロンは通常、顧客数が限られていたり、サービスの種類が少なかったりすることが多いです。
サロンの年間売上が数百万円から数千万円程度の場合、買収価格もそれに応じて低くなります。
安く事業を買収できたとしても、元の売上や利益が低いビジネスの場合、収益力を向上させるためには、顧客サービスの改善、新たなマーケティング施策の導入、サービスの多様化など、相応の労力と投資が必要になることでしょう。
買収後の明確な戦略や計画、及び実行力がないと厳しいことも多々あります。
M&Aを実施すると、買収した企業から重要な人材が流出するリスクがあります。
特に、エステサロンのようなサービス業では、元の経営者と密接な関係を築いてきた従業員がいる場合も多く、運営会社が変わることによる環境の変化を気にして退職してしまう場合もあります。
特に、腕のあるスタッフであれば引く手数多なので、なおさらそのリスクは高いでしょう。
このような人材の流出は、サロンの運営に大きな影響を及ぼし、買収後の業績にも悪影響を与える可能性があります。スタッフのスキルを評価して買収した場合、特に打撃も大きくなります。
そのため、M&Aの際には、スタッフへの十分な説明、コミュニケーションと関係構築、新しい運営方針の共有、変化に対する支援などを丁寧に行うことが重要です。
オルトタグ:売り手側のデメリットは、「交渉に手間がかかる」、「M&Aの背景が正しく伝わらない可能性がある」の2点が挙げられます。
個人M&Aの売り手にとって、交渉に手間がかかる点は大きなデメリットです。特に買い手が法人の場合、さまざまな角度から厳密な査定が行われ、契約条件についての交渉が複雑化することが多いです。個人が納得のいく条件を引き出すためには、粘り強い交渉が必要であり、これには時間と労力を要します。
売り手側にとっては、交渉にかかるコストや負担が大きくなりがちであり、準備不足や交渉力の不足が結果に大きく影響する可能性があるため、専門家の助言を受けることが望ましいでしょう。
個人M&Aでは、譲渡の背景が正しく伝わらない可能性があり、これが売り手側にとってデメリットとなります。事業を売却する理由が十分に理解されず、「経営に行き詰まったから売却したのではないか」という誤解を招くことも少なくありません。
このような憶測が広がると、売り手の評判や信頼性が低下し、将来的なビジネス活動に悪影響を及ぼすリスクがあります。買い手側の協力を得て、M&Aの背景や意図を正確に伝えることが、こうしたリスクを回避するためには重要です。
個人M&Aと対照である法人M&Aについて、それぞれのメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
法人M&Aのメリットの一つには、市場シェアの拡大と事業の成長を実現できる点があります。同業他社の買収によって、業界内でのシェアを拡大し、業界内での競争力を高めることが可能です。
例えば、製造業界において競合他社を買収することにより、その企業が持つ顧客基盤、製造設備、特許技術などを獲得できれば、自社の事業を大幅に強化できるでしょう。
また、関連事業との組み合わせによって、既存の事業領域を強化したり、新たな市場に進出するチャンスも生まれます。企業は多角化し、安定した収益基盤を築くことが可能となります。
しかし、このシナジー効果を最大限に発揮するためには、ただ買収すれば良いということではなく、買収先選定をする際の綿密な分析や、買収後の明確な戦略の考案が必要不可欠です。
一方、法人M&Aのデメリットとしては、異なる企業文化の衝突が挙げられます。
買収する企業と買収される企業の間には、企業文化、経営スタイル、従業員の価値観の違いが存在することが多く、これらが統合プロセスにおいて大きな障害となることがあります。
例えば、革新的なスタートアップ企業を大手既存企業が買収した場合、経営方針や業務の進め方の違いにより、従業員間での摩擦が生じることがあります。これは従業員のモチベーションの低下や組織の混乱を引き起こし、結果的に買収の効果を損なうことに繋がります。
また、買収規模が大きくなるほどに統合にかかる時間も長期化し、相乗効果が現れるまでに時間がかかることも考慮する必要があります。
そのため、法人M&Aを成功させるには、文化の違いを理解し、従業員を巻き込んだ包括的な統合戦略を策定することが重要です。
個人のM&Aを成功させるためには、個人のM&Aに適した案件を見つけることが重要です。
探し方は具体的に下記の方法があります。
1.友人や知人を通じた案件探し(無料)
2.事業承継・引継ぎ支援センターの活用(無料)
3.日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援の利用(無料)
4.商工会議所への相談(無料)
5.M&Aマッチングサイトの活用(有料)
6.M&A仲介会社の活用(有料)
7.銀行のM&A支援部門の利用(有料)
8.その他専門家への相談(有料)
No | 手法 | 金額 | メリット | デメリット |
1 | 友人や知人を通じた案件探し | 無料 | ・買収相手の人間性がある程度保証されており、話が進みやすい ・費用もかからない | ・友人、知人のツテだけだと、希望の条件にあった案件が見つかりにくい |
2 | 事業承継・引継ぎ支援センターの活用 | 無料 | ・47都道府県にある ・信頼性が高く、専門家による無料相談が受けられる | – |
3 | 日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援の利用 | 無料 | ・紹介料がかからない ・買収にかかる費用を融資してくれるケースがある | ・案件数は限られている |
4 | 商工会議所への相談 | 無料 | ・経営に関するアドバイスや情報提供をしてくれる ・案件の紹介や取引先とのマッチングをしてくれる | ・M&Aを専門としているわけではないため、詳細な手続きや法的な側面に関しては、専門家への追加の相談が必要になる場合がある |
5 | M&Aマッチングサイトの活用 | 有料 | ・希望条件に合わせて検索できる ・M&A仲介会社よりも手数料が安価で、案件サイズも数百万円程度のものもあるため、小規模なM&A案件に向いている | ・専門的なサポートは期待できないため、手続きや交渉、デューデリジェンス等に関しては個人の責任となる ・弁護士など専門家への依頼は、別途費用が掛かる |
6 | M&A仲介会社の活用 | 有料 | ・小規模案件も扱うことが増え、個人M&AでもM&Aを利用しやすくなった
| ・『成功報酬型』が一般的だが、最低報酬額を設定している場合もあり、中には1,500~2,500万円程度になることもある |
7 | 銀行のM&A支援部門の利用 | 有料 | ・買収資金の融資が受けやすい | ・仲介手数料が高くなる傾向あり |
8 | その他専門家への相談 | 有料 | ・専門知識が豊富な弁護士や会計士、コンサルタントは、スムーズに取引ができるよう、細かいサポートが受けられる | ・専門家への相談は、別途費用が掛かる |
今のようにインターネットが発達し、M&Aマッチングサイトが登場する以前は、個人が売り案件を探す方法として、友人や知人に紹介してもらうことも一般にありました。よくあるのは、後継者が見つからず困っている親族(例えば父親)がいる知人を訊ねて、親族を紹介してもらうやり方です。
売り手側も、親族からの紹介なので、買収相手がどんな人間なのかある程度保証されており、話が進みやすいのが特徴です。費用もかからないことが多いので、まずは友人・知人に声かけしてみるのも良いでしょう。
しかし、希望の条件(業種・買収額など)にあった案件を探す場合、友人・知人のツテだけだと難しいことも多いので、過度な期待はしないようにしましょう。
個人M&Aで案件を探す際には、事業承継・引き継ぎ支援センターを利用する方法も有効です。事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者のいない中小企業や小規模事業者の事業承継・引き継ぎを支援する機関です。
47都道府県全てにあり、円滑な事業承継を促す役割をになっています。国の事業であるため、信頼性が高く、また専門家による無料相談も受けられます。
成約譲渡企業の約7割が小規模事業者で、業種は製造業、卸・小売業、建設工事業、飲食店・宿泊業、その他サービス業など多岐にわたります。
「事業マッチング支援」は日本政策金融公庫が運営しているサービスで、後継者不足に悩む企業と事業引き継ぎを希望する企業や個人をマッチングさせてくれます。
特に廃業の危機を迎えた小規模な企業に焦点を当てており、案件数は限られていますが、紹介料がかからない点が魅力です。また、日本政策金融公庫には、買収にかかる費用を融資してくれる制度もありますので、事業承継と合わせて買収資金の融資の相談もしても良いでしょう。
地域の商工会議所へ相談するのも一つの方法です。
商工会議所は、地域の中小企業や個人事業主を支援する目的で設立された機関で、経営に関する様々なアドバイスや情報提供を行っています。M&Aに関しても、地域の企業動向や市場情報を把握しているため、具体的な案件の紹介や取引相手とのマッチング、さらにはM&Aに関する基本的なアドバイスを受けることが可能です。
特に、地元のビジネス環境に精通しているため、地域に根ざしたM&A案件を探している場合には特に有効なリソースとなります。ただし、商工会議所はM&Aを専門としているわけではないため、詳細な手続きや法的な側面に関しては、専門家への追加的な相談が必要になる場合があります。
個人M&Aでは、M&Aマッチングサイトの利用が効果的です。個人M&Aでは、M&Aマッチングサイトは、インターネット上で、事業や会社の買い手と売り手をつなげるサービスです。多種多様な案件が掲載されており、希望条件(買収金額や業界、売上高など)に合わせて検索することが可能です。M&A仲介会社よりも手数料が比較的安価で、案件サイズも数百万円程度のものもあるため、小規模なM&A案件に非常に向いています。
一方、仲介会社のような専門的かつ細やかなサポートは期待できないため、手続きや交渉、デューデリジェンス等に関しては個人の責任となります。最近ではM&Aのサポートを充実させている会社も増えてきましたが、弁護士など専門家への依頼には別途費用がかかるのでその点には注意しましょう。
従来は法人向けに一定規模以上の案件を扱っていたM&A仲介会社ですが、近年では小さな規模の案件も扱うことも増え、個人M&AでもM&A仲介を利用しやすくなりました。
M&A仲介では、専門家によるM&Aサポートを受けながら、最適な売買相手を探す手助けをしてもらいます。M&A仲介では「成功報酬型」の報酬体系が一般的ですが、最低報酬額を設定している場合もあり、中には1,500万円〜2,500万円程度になることもありますので、報酬額や手数料の金額は確認しておきましょう。
最近は、銀行がM&A支援のための専門部署を設けるケースも増えています。銀行を利用するメリットは、買収資金の融資が受けやすいことですが、その分仲介手数料が高くなる傾向があります。利用を検討する際は、仲介手数料に関する情報を事前に確認することが重要です。
個人M&Aでは、専門家やコンサルタントに相談することも有効です。専門知識が豊富な弁護士や会計士、M&Aコンサルタントは、取引の複雑な部分をサポートし、スムーズな取引を実現するための助言を提供します。
ただし、これらの専門家への相談には別途費用が発生します。
個人がM&Aを進める際には、いくつかの重要なステップを順を追って進めていく必要があります。企業間で行うM&Aと基本的な流れは共通していますが、個人の場合は特有のポイントや注意点もあります。ここでは、個人M&Aの流れについて詳しく解説します。
個人M&Aの第一歩は、どのようにしてM&Aの相手先を探すか、その方法を決めることです。探し方には、M&Aマッチングサイトの利用、M&A仲介会社への依頼、金融機関や商工会議所への相談など、さまざまな選択肢があります。自分のニーズやリソースに最も適した方法を選択することが重要です。各方法にはメリットとデメリットがあるため、慎重に検討する必要があります。
探し方を決定したら、具体的なM&Aの相手先を探し始めます。このステップでは、M&Aの目的を明確にしておくことが重要です。例えば、事業の拡大を目指すのか、既存のビジネスを強化するのか、といった目的に応じて、相手企業を選定する条件が変わります。目的に合った企業を選ぶことで、M&Aの成功率を高めることができます。
適切な相手先が見つかったら、次に行うのが交渉です。ここでは、事業内容や財務状況、将来の展望について詳細な情報交換を行い、お互いに納得のいく条件を探ります。交渉が進み、両者の間で基本的な合意が形成されたら、基本合意書を締結します。基本合意書は法的な拘束力を持ちませんが、今後の交渉や手続きをスムーズに進めるための重要なステップです。
基本合意書が締結された後は、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、買い手側が売り手側の企業の実態を詳細に調査するプロセスです。ここでは、財務状況、法務リスク、ビジネスモデルの健全性など、さまざまな観点から企業を評価します。個人でデューデリジェンスを行う場合は、専門家の助けを借りることが一般的です。費用や時間がかかるため、その範囲や内容を慎重に検討する必要があります。
デューデリジェンスで問題がないことが確認できたら、最終契約を締結します。この最終契約は、M&Aの手法によって異なる種類の契約書が用いられます。例えば、株式譲渡の場合は株式譲渡契約書、事業譲渡の場合は事業譲渡契約書を締結します。最終契約の締結をもって、実際の株式や資産の譲渡が行われ、クロージングとなります。
個人のM&Aには買収費用の他にも様々な費用がかかります。
具体的に個人のM&Aで会社を買収するまでにかかる諸費用は下記の通りです。
・買収費用
・仲介手数料
・専門家への相談料
・調査費用(デューデリジェンス)
・その他費用
費用の種類 | 概要・金額目安 |
買収費用 | ・株式譲渡であれば株式の対価、事業譲渡であれば譲り受ける事業資産の対価を支払う ・個人M&Aの場合、ほぼ「現金払い」になる |
仲介手数料 | ・成功報酬型が一般的で、買収金額の数%(通常は1〜5%程度)が目安 ・「最低報酬額」を設定している場合もあり、相場は1,500万円~2,500万円程度 ・国内最大のM&Aマッチングサイト「BATONZ(バトンズ)」では、売り手は無料、買い手は売買価格の2%(最低手数料25万円)で利用可能 |
専門家への相談料 | ・M&A仲介を使わない場合、弁護士、会計士、税理士、FAなどに相談しながらM&Aを進める方が安全 ・相談内容によって異なるが、数十万円~数百万円のコストがかかることがある |
調査費用(デューデリジェンス) | ・財務であれば会計士、税務であれば税理士など、それぞれの分野の専門家にデューデリジェンスを依頼し、会社の状況を確認してもらい、見落としのリスクが減る ・財務、法律、税務などの詳細な調査費用(デューデリジェンス費用)がかかる ・デューデリジェンスにて問題が見つかった場合は、譲渡価格の見直しや、その後の対処方法を売り手と調整・交渉 |
その他費用 | ・登記費用、契約書作成費用で数万円から数十万円がかかる ・買収資金を融資で調達する場合、銀行への手数料が発生することがある |
買い手が売り手に費用を支払うことで買収(M&A)は成立します。
買収費用は、株式譲渡であれば株式の対価、事業譲渡であれば譲り受ける事業資産の対価を支払います。会社分割では、対価として株式などが買い手から売り手に譲り渡されます。
個人M&Aの場合、対価はほぼ「現金支払い」になると考えて良いでしょう。
・M&A仲介会社:
成功報酬型が一般的で、買収金額の数%(通常は1〜5%程度)が目安です。
ただし、小規模M&Aの場合、仲介会社がビジネスとしての採算が取れないことを避けるため、「最低報酬額」を設定している場合もあり、大まかな相場は1,500万円〜2,500万円程度です。
小規模の個人M&Aの場合、買収金額よりも仲介手数料の最低報酬の方が大きくなってしまう場合もあります。他にも、着手金や中間報酬がかかる場合もあります。
・M&Aマッチングサイト:
サイトによって異なりますが、比較的低コストで利用可能です。一部無料で利用できる場合もあります。
例えば、国内最大のM&Aマッチングサイト「BATONZ(バトンズ)」では、売り手は無料、買い手は売買価格の2%(最低手数料25万円)で利用可能です。
BATONZの詳細はこちら:https://batonz.jp/
M&A仲介を使わない場合、弁護士、会計士、税理士、FAなどに相談しながらM&Aを進める方が安全です。上記の専門家に相談する場合、相談内容によって異なりますが、数十万円から多くて数百万円のコストがかかることもあります。
個人M&Aでは、まず買い手側と秘密保持契約(NDA)を結んで、まず自分で買い手側が公開する資料を確認します。
※秘密保持契約に関しては必須ではなく、売り手が希望した場合。
財務諸表から、売上や利益、資産などを細かく確認します。この段階で、買収対象企業のリスクをある程度洗い出せれば良いですが、自分で精査するには専門的な知識が必要です。
そこで実施するのがデューデリジェンスです。財務、法律、税務などの詳細な調査費用(デューデリジェンス費用)がかかります。財務であれば会計士、税務であれば税理士など、それぞれの分野の専門家にデューデリジェンスを依頼し、会社の状況を確認してもらい、自分では見落としがちなリスクを見つけてもらいます。
万一、デューデリジェンスにて問題が見つかった場合は、譲渡価格の見直しやその後の対処方法を売り手企業と調整・交渉します。
上記の他にも登記費用、契約書作成費用で数万円から数十万円がかかります。また、買収資金を融資で調達する場合、銀行への手数料が発生することがあります。
個人がM&Aで得た売却益には、所得税が課せられます。具体的には、譲渡所得として課税対象となり、所得税の計算には総合課税と分離課税の2つの方法が存在します。例えば、譲渡した資産が不動産である場合、その譲渡益は分離課税が適用されます。不動産を5年以上保有していた場合、その譲渡益は長期譲渡所得として扱われ、税率は約20%(所得税15%、住民税5%)です。それ以外の資産の売却益は総合課税の対象となり、他の所得と合算され、所得額に応じた税率が適用されます。
また、個人がM&Aを行う際には、消費税の負担も生じることがあります。事業譲渡の対価を受け取る際に発生する消費税は、実際に納税するのは売り手側ですが、買い手が実質的な負担を担うケースが一般的です。そのため、M&Aの交渉時には、消費税を含めた総予算を考慮することが重要です。
さらに、個人がM&Aで事業を譲渡する場合、譲渡する資産の種類によって所得の区分が異なり、それに応じて課される税金も異なります。例えば、土地や建物の譲渡による所得は譲渡所得として扱われ、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に区分されます。棚卸資産を譲渡した場合の所得は事業所得として扱われます。減価償却資産の譲渡所得は、事業所得または雑所得となります。営業権の譲渡による所得は総合課税の譲渡所得として課税されます。
個人でM&Aを検討する際は、買収にかけられる予算は小さくなりがちです。
そのため、個人向けに適している事業タイプと、そうではない事業タイプが存在します。
まず、個人情報を扱わない事業がおすすめです。なぜなら、個人情報を適切に管理するには高度なセキュリティ対策と法的な知識が必要であり、これらがM&A初心者にとってはトラブルを招く原因になりかねないためです。
(例)
・農業
・卸売業
・一部サービス業(飲食店、清掃業やリサイクル業など、非会員制のサービス業)
個人情報の流出でトラブルに発展するケースは決して珍しくありません。事業にとっても大きな損失につながってしまうので注意しましょう。
次に考慮すべきなのは、労働集約型ではない事業です。
つまり従業員の数が少なくて労働力中心ではない事業のことです。
労働集約型ではない事業は管理コストが低く、初めてのM&Aでも比較的スムーズに進めることができます。
(例)
・オンラインサービス:動画コンテンツ販売やWebサイト運営、アフィリエイトなど
・無人運営型ビジネス:コワーキングスペース運営や無人店舗販売など
始めから従業員の数が多くランニングコストが高いビジネスをすると、経営が傾いた時に大きな負債を被る可能性があります。このようなリスクもあるので、初心者の方は労働集約型ではない事業がおすすめです。
個人でM&Aをするには、上記のような「個人情報を扱わない事業」や「労働集約型ではない事業」がおすすめと記載しておりますが、実際に譲渡希望額100〜500万円(個人M&Aで多い金額帯)で、よく売りに出されている事業には以下のようなものがあります。
個人のM&Aを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
以下のポイントをしっかりと確認した上で検討を始めましょう。
個人のM&Aの成功には、慎重なリサーチとデューデリジェンスが欠かせません。この段階で漏れがあると、財務状況や法的な問題、情報の不足など後々トラブルを引き起こす可能性があります。万一、外部からはわかりづらい情報を事前に知っておくことができないと、予期せぬトラブルに巻き込まれて事業がうまくいかないことも考えられます。
そのため、リサーチとデューデリジェンスをしっかりと行って、事前に起こりそうなトラブルを回避しましょう。
個人がM&Aを成功させるには、経験豊富な専門家のアドバイスを受けることも重要です。M&Aは法的な側面や財務など、専門性が高く複雑なプロセスを伴うためです。
専門家のアドバイスを貰わず、全て自分たちだけで実行しようとしてしまうと、法律に抵触してしまったり、事前に確認しておくべき事業リスクに気づくことができず、後々にトラブルに巻き込まれてしまうことも考えられます。
そのため、弁護士や会計士、M&Aアドバイザーなど、各分野の専門家が適切なアドバイスを提供することがおすすめです。
M&Aを進めている途中で、困難な問題や解決するのが難しいトラブルが発生することは意外とよくあることです。事前に明確なビジョンと計画を決めておくと、困難な問題が発生したときの判断基準になるので意思決定がしやすくなります。
具体的な計画の立て方の一例として「100日プラン」という方法があります。これは、M&Aのクロージングが終わったあとの、100日間で発生する課題に対する行動を事前の計画に落とし込むという方法です。
目的や戦略を事前に決めておくことで、困難な問題に直面したときに自分たちが何をすべきなのか素早い判断ができます。
続いて、売り手側のポイントについて解説します。
個人M&Aを進める際に特に重要なのは、従業員への説明とその後のフォローです。M&Aによって経営者が交代することは、従業員にとって大きな変化をもたらします。従業員は不安を感じることが多く、場合によっては退職を考える人も出てくるでしょう。このような事態を避けるためには、M&Aの目的や今後の事業方針について丁寧に説明し、従業員の不安を払拭することが重要です。
特に、雇用条件の維持や改善について具体的に説明し、信頼関係を築くことが不可欠です。また、従業員のモチベーションを維持するために、従来の経営者と新たな経営者が協力して、従業員のサポート体制を整えることが求められます。
個人M&Aを行う際には、税務対策が非常に重要です。M&Aに伴う事業譲渡は譲渡所得として所得税が課されるため、適切な税務処理を行わなければならないからです。特に、無償または著しく低い金額で事業を譲受けた場合、贈与税が課されるリスクがあります。事前に税務の専門家に相談し、最適な税務対策を立てることが求められます。
また、所得税や法人税の予定納税に関連する手続きや申請も必要になるため、税務リスクを最小限に抑えるために、これらの手続きを怠らないように注意が必要です。
成功事例だけでなく、失敗事例のインプットも重要です。
ここでは、個人のM&Aの失敗の代表的なケースを紹介していきます。
個人で事業を取得する際にデューデリジェンスが不十分だったために、負債や法的な問題が見過ごされた状態でM&Aが行われたケースです。
事業によっては、帳簿に記帳されていない潜在的なリスクが存在する場合もあります。結果として取引後に予期せぬ問題が起き、思いもしない多額の損失が出てしまいます。
個人が専門家のアドバイスを受けずに取引を進めてしまったケースです。事業運営をしていく際は、労働法や各種税法など、最低限の法律の知識が必要になります。
無知なまま事業を運営すると、結果として財務上の問題や契約上のトラブルが発生し、最悪の場合、事業の継続自体が難しい状況に陥るリスクもあります。
店舗ビジネスなど、従業員のパフォーマンスが売上・利益に直結する事業を買収した場合、従業員のモチベーションマネジメントが非常に大切になります。
買収後にマネジメントに失敗し、主要スタッフの多くが会社をやめてしまうことで、買収前よりも売上・利益が減少してしまうこともあります。
従業員を抱えるビジネスを買収する場合は、マネジメントに失敗しないよう、前の会社のカルチャーや従業員のモチベーションを十分理解することが大切です。
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M&A Leadが選ばれる3つの特徴をご紹介します。
M&A Leadが選ばれる3つの特徴
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今回の記事では、M&Aが個人でもできるかをご紹介しました。
個人のM&Aの成功には、慎重な調査、専門家のサポート、そして事前の計画が欠かせません。
今回の記事にまとめられた要点をしっかりと押さえ、個人でM&Aを行う際の参考にしてください。
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