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公開日:2024年9月26日
更新日:2024年9月26日

カーブアウトとは?メリットやデメリットだけでなく、実際の流れや事例も解説!

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ビジネス環境の変化が激しい現代において、企業は成長を持続するために戦略的な事業再編が求められています。カーブアウトとは、企業が特定の事業を切り離し、独立した会社として運営する手法であり、資本や経営の柔軟性を高めるために多くの企業で活用されています。

本記事では、カーブアウトの概念やスピンアウト、スピンオフとの違いや、メリット・デメリットを詳しく解説します。また、成功事例を通じて、カーブアウトが企業に与える影響や可能性についても具体的に解説していきます。

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カーブアウトとは

カーブアウトとは、企業が自社の一部事業を切り出し、新たに設立された会社として独立させる手法です。この手法は、企業が主力とは異なるが成長が見込まれる事業を独立させることで、その事業のポテンシャルを最大限に引き出すことを目的としています。近年では、親会社の資本だけでなく、外部からの資金を調達して成長を図るケースが増えています。

スピンオフとの違い

スピンオフもまた事業を分離する手法ですが、親会社が新会社の株式を保有し続ける点が特徴です。この資本関係の維持により、新会社は親会社のブランドやリソースを活用しながら独自の経営を行うことが可能です。スピンオフのメリットは、親会社の支援を受けつつ市場での地位を築ける点にあります。

スピンアウトとの違い

スピンアウトは、新会社が完全に独立し、親会社との資本関係が解消される手法です。スピンアウトでは、親会社の支援なしに事業を運営する必要があり、新会社は自ら資金を調達し、独立した経営を行うことが求められます。この手法は、特に親会社の中核事業とは異なる分野での成長を目指す場合に用いられます。

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カーブアウトが注目される理由

カーブアウトが注目される背景には、経営環境の変化と戦略的な事業再編の必要性があります。日本の上場企業は、以前はM&Aで事業拡大を図っていましたが、2020年以降の新型コロナウイルスによるデジタルシフトがより迅速で柔軟な経営を求めるようになりました。この変化に対応するため、企業は事業ポートフォリオを見直し、成長が見込める事業に集中するためにカーブアウトを活用しています。また、コーポレートガバナンスや市場改革の進展により、透明性の高い経営が求められ、経済産業省の「事業再編実務指針」に沿って企業の間でカーブアウトの検討が進んでいます。こうした背景から、カーブアウトは変化する環境に適応し、持続的成長を図るための重要な手法として注目されています。

カーブアウトのメリット

カーブアウトを活用することによる主なメリットを3つ解説します。

親会社の経営資源を活用することができる

カーブアウトにおいては、新たに設立された企業は親会社の経営資源を利用することができます。これは、スピンアウトとは異なり、親会社との資本関係が維持されるためです。親会社のブランド力や技術、知識、さらにはマーケティングや販売ネットワークなどを活用することで、新会社はスタートから有利なポジションを確保し、迅速な成長を遂げることが可能です。このように、親会社の経営資源を活用しつつ、新会社独自の意思決定や組織文化を構築することで、柔軟で効率的な経営が実現します。

親会社以外からも資金を調達できる

カーブアウトにより設立された新会社は、親会社からの資本に加え、外部からの資金調達も可能となります。これには、投資ファンドや個人投資家からの出資、銀行からの融資などが含まれます。特に将来性の高い事業であれば、外部からの資金調達が容易になり、その資金を事業拡大や新製品開発に充てることができます。また、外部の投資家やパートナーからのノウハウやネットワークを得ることで、経営の多様化や事業成長をさらに促進することができます。

親会社が主な事業に集中できる

カーブアウトは、親会社にとっても重要なメリットをもたらします。非コア事業をカーブアウトすることで、親会社は自身の主力事業に経営資源を集中することが可能となります。これにより、資源の分散による効率低下を防ぎ、戦略的に重要な事業の成長速度を加速させることができます。また、カーブアウトによって生まれる資金を主力事業の強化や拡大に投入することができ、全体的な企業価値の向上にも寄与します。このように、カーブアウトは親会社が選択と集中を実践し、経営の効率化と成長戦略の実現を支援する重要な手段です。

カーブアウトのデメリット

次に、カーブアウトによるデメリットや課題について、4つのポイントを解説していきます。

意思決定までの流れが複雑になる

カーブアウトにより新会社が設立されると、親会社と新会社の両方で意思決定が行われるため、意思決定の流れが複雑化する可能性があります。特に外部の投資家や株主が関与している場合、新会社の経営に介入されることが増え、迅速な意思決定が難しくなることがあります。これにより、ビジネスチャンスを逃すリスクが高まり、事業の成長速度に影響を与える可能性があります。そのため、カーブアウト後のガバナンス体制を明確にし、効率的な意思決定を促進することが重要です。

人手が不足する可能性がある

カーブアウトを実施する際には、新会社に必要な人材を親会社から転籍させることが一般的です。しかし、親会社から新会社への人材の移動によって、親会社のリソースが不足するリスクがあります。特にバックオフィスの機能を担う人材が不足すると、業務の効率性が低下する可能性があります。また、新会社の運営に必要な専門的な人材を新たに採用しなければならない場合もあるため、適切な人材戦略を立てることが求められます。

従業員のモチベーションが低下し、離職する可能性がある

カーブアウトによって従業員が親会社から新会社へ転籍する場合、キャリアプランの変更や新たな環境への適応が求められます。これにより、従業員のモチベーションが低下し、将来に対する不安が増大することがあります。その結果、従業員の離職率が上昇し、新会社の人材が不足するリスクが高まります。従業員のモチベーションを維持し、離職を防ぐためには、十分なコミュニケーションとキャリア支援の提供が重要です。

事業許認可を再度申請する必要がある

カーブアウトによって新会社が設立される際、事業の継続に必要な許認可を新たに取得しなければならない場合があります。特に事業譲渡を伴うカーブアウトでは、許認可の再申請が必要になるケースが多く、これには多大な時間とコストがかかります。許認可の取得が遅れると、事業の開始が遅延するリスクもあるため、事前に必要な許認可の確認と申請準備を進めておくことが不可欠です。

カーブアウトの手法

カーブアウトは、企業が特定の事業を分離して独立させる方法であり、主に「会社分割」と「事業譲渡」の二つの手法があります。それぞれの方法には、特徴やメリット・デメリットがあります。

会社分割

会社分割は、企業が運営する特定の事業を新たに設立した会社に権利義務ごと移転する方法です。この手法には、「新設分割」と「吸収分割」の二種類があります。新設分割では新しい会社を設立し、その会社に事業の権利義務を移転します。一方、吸収分割は既存の会社に権利義務を移転する方法です。会社分割の大きな利点は、包括承継であるため、契約や許認可などが一括で移転され、手続きが比較的スムーズに行われることです。さらに、従業員も自動的に移籍するため、雇用契約を新たに結び直す必要がありません。しかし、簿外債務も引き継ぐリスクがあるため、注意が必要です。また、統合された新会社のシステムや人事制度において、現場での負荷が生じる可能性があります。

事業譲渡

事業譲渡は、企業が特定の事業を他の会社に個別に譲渡する方法です。会社分割とは異なり、権利義務を包括的に移転するわけではないため、各契約や資産、負債を個別に譲渡することが特徴です。この方法のメリットは、不要な資産や簿外債務を引き継ぐリスクがないことです。移転する項目を選択できるため、必要な資産だけを引き継ぐことができます。一方で、個別の契約や許認可の移転には、債権者や従業員の同意が必要となるため、手続きが煩雑で時間がかかります。また、税制上の優遇措置がないため、コスト面での負担が増える可能性があります。従業員の移籍に際しても、再雇用契約を結ぶ必要があり、転籍を拒否する従業員が退職するリスクも考慮する必要があります。

カーブアウトの手順

カーブアウトを実施するためには、戦略的な計画と適切な手順が必要です。ここでは、カーブアウトを進める際の主要なステップについて解説します。

方針を決定する

まず、カーブアウトの基本方針を明確にします。これは、分離の目的や範囲を決め、最適なスキームを選択するために重要です。カーブアウトのスキームには、主に「会社分割」と「事業譲渡」の2つがあります。会社分割は、親会社の一部を新たに設立した会社に移転する方法で、包括的に権利を承継できるのが特徴です。一方、事業譲渡は、特定の資産や負債を個別に移転する方法です。どちらのスキームを選択するかは、会社の戦略や事業の特性、税務上の影響などを考慮して決定します。

承継の対象とする範囲を決定する

方針が決まったら、具体的にどの資産や負債、契約を新会社に承継するかを決めます。承継対象には、以下の要素が含まれます:

取引先や顧客との契約: 契約関係の継続性を確保するための手続きが必要です。

従業員の雇用関係: 従業員が新会社に転籍するのか、出向するのかを決め、処遇を明確にします。

資産と負債: 固定資産や流動資産、負債をどのように振り分けるかを決定します。

知的財産権: 商標や特許の扱いを決め、必要な手続きを行います。

許認可の承継: 必要な許認可を新たに取得するか、既存のものを承継するかを検討します。

これらを適切に管理することで、スムーズな事業移行が可能となります。

会計管理情報を調整する

承継対象が決定したら、親会社と新会社の会計情報を整理し、カーブアウト財務諸表を作成します。カーブアウト財務諸表は、新会社が独立して事業を運営するための財務基盤を示すものであり、特に以下の点に注意が必要です:

損益計算書(PL): カーブアウト事業に直接関連する収支を明確にし、共通費用の配賦を適切に行います。

貸借対照表(BS): 資産と負債を新会社と親会社に分け、それぞれの実態を反映させます。

この財務諸

表は、新会社の事業計画や価値評価において重要な役割を果たします。

適時開示を行う

カーブアウトが上場企業で実施される場合、適時開示が求められます。適時開示とは、企業の重要な情報を投資家に提供するための手続きで、通常、契約締結時に公表します。適時開示には、以下の要素が含まれます:

情報開示の資料: 財務状況や事業の背景、戦略を詳しく説明する資料を用意します。

プレスリリース: 企業の公式発表として、カーブアウトの詳細を公開します。

適時開示を適切に行うことで、投資家や市場に対する透明性を確保し、信頼を築くことができます。

カーブアウトを進めるうえで注意すべきポイント

カーブアウトを成功させるためには、計画的かつ戦略的な実施が求められます。ここでは、カーブアウトを進める際に注意すべき重要なポイントを解説します。

業務に支障が出ないようにする

カーブアウトを進める際には、通常業務に支障を及ぼさないように注意が必要です。カーブアウトの成功は重要ですが、通常の業務が滞ると顧客の信頼を損なう可能性があります。そのため、日常業務と並行して手続きが行えるよう、計画を立てることが肝要です。業務の繁忙期を避け、従業員の負担を最小限に抑えながら進めることで、組織全体のスムーズな運営を確保し、カーブアウトの成功を支援します。

知的財産権や許認可等に関する取り扱いを確認しておく

カーブアウトを実施する際、事業に必要な許認可や知的財産権の取り扱いを事前に確認することが不可欠です。許認可の承継は手法によって異なり、会社分割の場合は包括承継されるため自動的に引き継がれることが多いですが、事業譲渡の場合は新たに許認可を取得する必要があります。また、知的財産権に関しても、事業譲渡の場合はライセンス契約によって新会社に権利を付与する形をとることが一般的です。これらの手続きには時間とコストがかかることがあるため、カーブアウトの初期段階でこれらの重要資産について専門家に相談し、適切な対応策を講じることが大切です。

従業員に対して真摯に説明を行う

カーブアウトは、従業員の働く環境や将来に大きな影響を与えるため、従業員への丁寧な説明が必要です。従業員が転籍する際の役職や待遇、キャリアプランについて明確に説明し、不安を取り除く努力をすることが重要です。特に、新会社への転籍が従業員にとって望ましくないと判断された場合、離職のリスクが高まります。従業員のモチベーションを維持するためには、カーブアウトの目的やメリットを理解してもらい、可能な限り従業員の希望を尊重する姿勢を示すことが求められます。これにより、従業員の不安を解消し、離職を防ぐことができます。

他の手法も検討する

カーブアウトを実施する際には、他の選択肢も検討し、最適な手法を選ぶことが重要です。カーブアウトは、事業分割や事業譲渡といった手法の一部であり、それぞれにメリットとデメリットがあります。例えば、会社分割は包括的に権利を承継できるため手続きがシンプルですが、不要な資産や債務も引き継ぐリスクがあります。一方、事業譲渡は必要な資産だけを移転することができるため、リスク管理に優れていますが、手続きが煩雑になりがちです。こうした点を考慮し、自社の状況や目標に最も適した手法を選択するために、事前に専門家と十分に協議を行うことが推奨されます。

カーブアウトの事例

カーブアウトは企業が特定の事業を分離し、新たな会社として独立させる手法です。これにより、企業は効率的な事業運営と資源の最適化を図ることができます。以下に、日本におけるカーブアウトの具体的な成功事例を3つ紹介します。

ソニー株式会社

ソニーは、ウォークマンやPlayStationで知られる日本の大手総合電気メーカーで、かつてVAIOブランドのPCを展開していました。しかし、急速に変化するグローバルなPC市場と、ソニー全体の事業戦略の再考が必要となり、モバイル事業への集中を決定しました。そこで2014年、PC事業を日本産業パートナーズに譲渡し、新設された会社VAIO株式会社として独立しました。このカーブアウトに際し、ソニーは新会社に5%出資し、円滑な移行を支援する形を取りました。その結果、VAIOは経営資源を効果的に活用し、2年後には黒字化を実現しました。

オリンパス

オリンパスは日本の光学機器メーカーで、医療機器やカメラ製品において高い評価を受けています。特にカメラ製品に関しては、ミラーレス一眼を中心に技術力を誇っていましたが、事業の選択と集中を進めるために映像事業を切り離しました。2020年、映像事業は日本産業パートナーズが設立した新会社に承継され、オリンパスは医療機器に集中する体制を構築しました。このカーブアウトにより、映像事業はオリンパスの持つ光学技術を活用しつつ、新たな成長機会を得ることができ、持続的な黒字化を目指しています。

NECのBIGLOBE事業

NECは日本を代表するITサービス企業であり、BIGLOBEブランドを通じてインターネットサービスを提供していました。しかし、インターネット市場の急速な拡大に対応するため、事業を分社化し、外部からの出資を受け入れることでさらなる成長を狙いました。アライアンスパートナーの専門的ノウハウを活用し、新会社はネット金融やEC事業を強化しました。分社化されたBIGLOBEは、現在KDDIグループの一員として、より魅力的なサービスの提供に注力しています。このカーブアウトは、NECが主力事業にリソースを集中し、BIGLOBEが独自に成長を続ける道を拓く一助となりました。

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まとめ

本記事では、カーブアウトの概要やスピンアウト、スピンオフとの違い、メリット・デメリット、実施手順、注意点について解説しました。

カーブアウトは企業の事業再編における重要な手法で、親会社の資源を活用し、外部資金を導入して新会社の成長を促進します。一方で、知的財産権や許認可の取り扱い、従業員対応、手法選択など、慎重な準備が必要です。これにより企業は「選択と集中」を実現し、コア事業に注力できます。

カーブアウトを検討する際は、この記事を参考に自社の状況に適した手法を選び、専門家の支援を受けながら慎重に進めていくようにしましょう。

この記事の監修者

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