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公開日:2024年12月5日
更新日:2024年12月5日

株式譲渡の流れとは?手続きの手順、必要書類、注意点を解説!

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株式譲渡は中小企業のM&Aにおいて一般的に用いられるメジャーな手法です。株式譲渡の手続きでは、上場会社と非上場会社での譲渡方法の違いがあるほか、様々なプロセスを経る必要があります。今回の記事では株式譲渡の流れおよび注意点をまとめましたので、解説していきます。

株式譲渡の基本的な概要については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらも合わせてご覧ください。
株式譲渡とは?方法・手続き・税金・中小企業特有の注意点を解説

目次

株式譲渡とは

株式譲渡とは、企業の株主が保有する発行済み株式を他の個人または法人に譲渡することで、経営権を移転し企業の所有を引き継ぐことを指します。譲渡先が株主として新たに加わり、対象となる企業自体は存続します。企業名や所有する資産、債権・債務、契約関係、許認可、従業員の雇用などは引き続き維持されるのが一般的です。

特に非上場企業や中小企業の事業承継においては、株式譲渡がよく選ばれる手段です。他のM&Aスキーム(合併や事業譲渡など)に比べて、手続きが比較的簡単で、株主名簿の書き換えと譲渡契約の締結を中心に完結する点が大きな特徴です。

事業譲渡については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらも合わせてご覧ください。
事業譲渡とは?M&Aや株式譲渡との違い・メリット・流れ・注意点を解説

M&Aにおける株式譲渡の流れをまとめた図解です。具体的には売主は株式を譲渡し、買主は売主へ株式の対価を支払います。買主へ経営権を移転し企業の所有を引き継ぎます。

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株式譲渡の方法種類と特徴

株式譲渡は、企業の株式を他者に移転することで経営権を引き継ぐ方法ですが、譲渡の対象が上場株式か非上場株式かによって手続きや取引の形式が異なります。株式譲渡の方法と特徴についてそれぞれ詳しく解説します。

上場会社の場合

上場企業の株式は、公開された取引市場を通じて自由に売買が行えるため、取引手続きが簡便です。主な方法は以下の通りです。

市場買付

株式市場で買い手が直接株式を購入する方法です。証券取引所を通じて取引が行われ、市場価格に基づいて売買が成立します。手続きが迅速で、透明性が高く、柔軟な取引を行うことができます。

しかし、証券取引所外で株式を買い付け、買付後の株式の保有割合が全体の発行株式数の5%を上回る場合(5%ルール)や、証券取引所の内外を問わず買付によって保有する株式の割合が3分の1を超える場合(1/3ルール)に当てはまる場合は公開買い付けを実施することが義務付けられています。

TOB(株式公開買付)

買い手が市場外で不特定多数の株主から株式を購入する方法です。買い付け条件(期間、株数、価格など)を事前に公開し、目標株数の買い取りを目指します。一般的に市場価格より高いプレミアム価格が設定されるため、迅速に株式を集めやすいが、コスト負担が大きくなる場合があります。

TOBについては以下の記事で詳しく解説しているので、こちらも合わせてご覧ください。
TOB(株式公開買付)とは?意味・MBOとの違い・事例を解説

非上場会社の場合

非上場企業の株式は、自由に売買できない場合が多く、特に譲渡制限が設けられていることが一般的です。公開市場で株式の取引が行えないため、相対取引で株式の譲渡を行います。

相対取引

売り手(株主)と買い手が直接交渉を行い、価格や条件を調整して取引を進める方法です。特に中小企業では、この方法が一般的に用いられます。柔軟に条件設定が可能で、個別交渉が行えますが、交渉に時間がかかることがあります。

株式譲渡の流れと手続き

M&Aにおける株式譲渡の流れをまとめた図解です。具体的には株式の譲渡制限の有無の確認、株式の譲渡承認の申請、取締役会または株主総会での承認、決定内容通知、株式譲渡契約の締結、株主名簿の名義書換と証明書交付、代金の決済と最終確認の流れとなります。

株式譲渡は、経営権の移転や事業承継を目的とした重要な手続きです。中小企業では特に頻繁に用いられ、以下のような流れで進められます。本記事では、各ステップを詳細に解説します。

株式の譲渡制限の有無の確認

株式を譲渡する際、最初に確認するべき事項は、対象企業の株式に譲渡制限があるかどうかです。譲渡制限がある場合、株式の自由な譲渡はできません。

制限の有無は企業の定款や登記事項証明書で確認することができます。制限がある場合、定款には「株式の譲渡には会社の承認が必要」といった条項が記載されていることがあります。

譲渡制限がある株式を会社の承認なしに譲渡すると、法的に無効となるため、必ず事前確認を行う必要があります。

株式の譲渡承認の申請

譲渡制限がある場合、譲渡人(売り手)または譲受人(買い手)が会社に承認を求めます。

株式の種類、株数、譲受人の情報を明記した「譲渡承認請求書」を会社に提出します。請求を受けた場合、会社は取締役会または株主総会を開き、承認の可否を決定します。

取締役会または株主総会での承認

譲渡承認の申請を受けた会社は、譲渡承認の可否について、取締役会設置会社の場合は取締役会で、取締役会非設置会社の場合は株主総会で決議します。

決定内容通知

決議された承認または不承認の結果は、譲渡承認請求者に通知されます。承認請求から2週間以内に通知する必要があり、通知が行われない場合は自動的に承認されたとみなされます。不承認の場合は株式を会社または指定買取人が買い取る方法が取られます。

株式譲渡契約の締結

承認が得られた後、譲渡人と譲受人が契約条件を最終合意し、「株式譲渡契約書」を締結します。契約書の主な記載事項は、譲渡の合意内容・株式の譲渡価格・支払い方法および期限・契約解除条件・表明保証や損害賠償の規定などです。

株主名簿の名義書換と証明書交付

株式譲渡は、名義書換を完了して初めて効力が発生します。株主名簿の変更は、譲渡人と譲受人が共同で名義書換請求を行います。株券発行会社では、株券を提示することで譲受人が単独で請求することも可能となります。

株主名簿に記載がない場合、名義書換は株主としての権利を行使できないため、重要な手続きとなります。譲受人は書換後の株主名簿の交付を受け、株主になったことを確認する必要があります。

代金の決済と最終確認

最後に、契約で取り決めた金額の決済を行います。株式譲渡契約締結後、通常は一括で決済が行われます。ただし、特定条件が満たされることを前提とした分割決済の場合もあります。

また、株主名簿記載事項証明書や株式譲渡契約書など、必要な書類がすべて揃っていることを確認します。

株式譲渡に必要な書類一覧

株式譲渡を行う際、手続きに必要な書類を正確に揃えることは非常に重要です。不備があると手続きが遅延する可能性があるため、各書類の役割や作成方法を理解しておきましょう。

ここでは、株式譲渡に必要な書類を取締役会非設置会社・設置会社に分け、それぞれの概要と注意点を解説します。

取締役会を設置していない会社の場合

取締役会を設置していない会社の場合の必要な書類は下記の通りです。

株式譲渡における取締役会を設置していない会社の場合の必要な書類をまとめた図解です。具体的には株式譲渡承認請求書・株主総会招集に関する取締役の決定書・臨時株主総会招集通知・臨時株主総会議事録・株式譲渡承認通知書・株式譲渡契約書・株式名義書換請求書・株主名簿・株主名簿記載事項証明書交付請求書・株主名簿記載事項証明書となります。

株式譲渡承認請求書

譲渡制限株式の譲受人は、発行会社に対して株式の譲渡を承認するよう請求する必要があります。この請求を行わないと、第三者に株式譲渡が正式に認められないために必ず必要です。記載内容に不備があると再提出を求められ、手続きが遅れる原因になります。

株主総会招集に関する取締役の決定書

取締役が株式譲渡に関する重要な意思決定を行った場合、その内容を株主に通知するために使用される書類です。

臨時株主総会招集通知

譲渡制限株式の場合、株主総会の承認が必要です。譲渡承認請求を受けた会社は、速やかに株主総会を招集する通知を送付しなければなりません。招集の通知を怠ると、法的に承認されたものとみなされることがあります。

臨時株主総会議事録

株式譲渡に関する株主総会の結果を記録する議事録は、譲渡承認に関する重要な意思決定の証拠となります。株主総会の記録がないと、将来的に法的なトラブルに発展する可能性があるため、正確な作成が求められます。

株式譲渡承認通知書

株主総会で譲渡が承認または不承認となった場合、結果を譲受人に通知する必要があります。通知期限は2週間以内と定められており、期間を過ぎると自動的に承認されたとみなされます。

株式譲渡契約書

譲渡が承認された後に必要なのが、株式譲渡契約書です。契約内容を双方が確認し、正式に締結することで譲渡が法的に有効となります。株式譲渡契約書は、会社の経営や所有権に関わる重要な書類であるため、慎重に作成する必要があります。

株式名義書換請求書

株式の譲渡が成立した場合、株主名簿の名義を変更するために必要な書類です。名義書換の手続きが完了しないと、譲受人は第三者に対して株式の権利を主張することができません。

株主名簿

株主の情報を記録する書類で、氏名、住所、保有株式数などが記載されています。名簿の書換が完了することで、譲受人は正式な株主として認められると同時に自らが株主であることを確認するために使用します。

株主名簿記載事項証明書交付請求書

株主が自らの権利を確認する際に使用する書類です。請求に基づき、会社は株主名簿の記載事項を証明する書類を交付しなければなりません。

株主名簿記載事項証明書

株主名簿記載事項証明書は、株主の権利を証明する重要な書類です。株主名簿には、株主の氏名、住所、保有する株式数、取得した日付などが記録されており、株主が会社に対して請求することで交付されます。

株主名簿は、株主への通知や催告を行う際に使用され、会社が株主に文書を送る場合、株主名簿に記載された住所に送付することになり、その住所に送付した時点で法的に到達したとみなされます。

取締役会設置会社の場合

取締役会を設置している会社の場合の必要な書類は以下の通りです。取締役会設置会社の場合に必要な取締役会議事録について以下で詳しく解説します。その他の書類については、上記の取締役会を設置していない会社と同様です。

株式譲渡における取締役会を設置会社の場合の必要な書類をまとめた図解です。具体的には株式譲渡承認請求書・取締役会議事録・株式譲渡承認通知書・株式譲渡契約書・株式名義書換請求書・株主名簿・株主名簿記載事項証明書となります。

取締役会議事録

取締役会の結果を記録する議事録は、譲渡承認に関する重要な意思決定の証拠となります。取締役会の記録がないと、将来的に法的なトラブルに発展する可能性があるため、正確な作成が求められます。

株式譲渡契約書に記載する重要事項

株式譲渡契約書は、株式譲渡に関する具体的な条件や手続きを明確にする重要な書類です。適切な記載がなされていない場合、契約の効力に影響を及ぼすだけでなく、後のトラブルの原因となり得ます。

以下で株式譲渡契約書に記載する重要事項を解説します。

譲渡条件と代金の支払い方法

契約書には、株式譲渡に関する売主と買主が取引の主要条件についての基本合意内容を記載します。具体的には、譲渡対象となる株式の種類や株式数、譲渡価格、そして譲渡の目的を明記します。

さらに、譲渡代金の支払いに関する条件も、契約書に記載する必須事項です。具体的には、支払い期限、振込方法、振込先口座情報などを明確にする必要があり、株券発行会社の場合は、代金支払いと引き換えに株券を交付する旨も記載し、取引条件を詳細に記載することが重要です。

株主名簿の名義変更手続き

株式譲渡後には、株主名簿の名義を変更する必要があります。名義変更手続きは、株主名簿を管理する株式会社が譲受人を正式な株主として処理するために行われます。契約書には、名義書換請求の義務と方法、必要書類、書換の実施時期などを記載し、手続きを確実に進められるよう取り決めておくことが重要です。

表明保証と契約解除条件

表明保証は、契約当事者の信頼性を確認し、取引におけるリスクを軽減するための重要な事項です。売主が譲渡する株式について、譲渡株式が売主の合法的所有物であることや株式に第三者の権利が設定されていないこと、対象会社の財務状況や法令遵守状況が適切であることなどの内容を表明・保証します。

さらにトラブルを未然に防ぐため、売主と買主が取引の前後で遵守すべき義務や行動についても、契約書で定めます。取引後の競業避止義務や雇用条件の維持義務など、具体的な行動規範を示すことで、信頼関係を確立します。

また、契約違反があった場合や手続き上の不備が発覚した際の契約解除条件と処理方法も詳細に記載し、法的対応を円滑にする準備が必要です。

株式譲渡時に注意すべきポイント

M&Aにおける株式譲渡時に注意すべきポイントをまとめた図解です。具体的には、譲渡制限株式の規定を確認する、株券発行会社の場合は株券の交付が必要、譲渡益が発生する場合は課税対象となる、株主が分散している場合譲渡に手間がかかる、名義株がある場合は名簿の書き換えが必要になる、専門家へ相談するとなります。

株式譲渡は、会社の所有権の移転に関わる重要な取引です。そのため、適切な手続きを経ることが求められますが、不注意や知識不足が原因でトラブルに発展するケースも少なくありません。

ここでは、株式譲渡時に注意すべきポイントを以下で解説します。

譲渡制限株式の規定を確認する

株式を譲渡する際、最初に確認するべき事項は、対象企業の株式に譲渡制限があるかどうかです。譲渡制限がある場合、株式の自由な譲渡はできないため、対応方法が異なります。さらに、譲渡制限がある会社のうち、株券発行会社・不発行会社によっても譲渡の方法が異なるので注意が必要となります。

株券発行会社の場合は株券の交付が必要

株券の発行有無は、株式譲渡の手続きにおいて重要なポイントです。株券発行会社では、譲渡の際に株券の交付が必要となります。株券を受け取ることで、株主としての権利を第三者に対して主張することが可能です。一方で、株券不発行会社の場合は、株主名簿の名義書き換えを行うことで権利を確保できます。

特に株券発行会社では、株券の未発行や紛失が手続きの妨げとなる場合があります。そのため、契約締結前に株券の有無を「登記事項証明書」や「定款」で確認することが不可欠です。

譲渡益が発生する場合は課税対象となる

株式譲渡によって利益が発生する場合、所得税や住民税が課されます。税金は譲渡益に基づいて計算され、税率は合計20.315%となります。また、無償で譲渡を行った場合や時価とかけ離れた価格での取引が行われた場合には、贈与税が課される可能性があります。

税務上の問題を未然に防ぐためにも、株式譲渡前に税理士や専門家と相談し、課税対象となる取引内容や節税方法を確認することが重要です。

株主が分散している場合譲渡に手間がかかる

株主が分散している場合、全株主と連絡を取り合い、同意を得る必要があります。特に、所在不明の株主がいると、譲渡手続きが遅れる原因となります。また、株式譲渡制限がある場合、対象会社の承認が必要となるため、事前に定款や関連文書を確認し、必要な手続きを進めることが求められます。

名義株がある場合は名簿の書き換えが必要になる

株式譲渡を行う際には、株主名簿の名義を適切に変更する必要があります。手続きが不十分だと、譲受人が株主としての権利を行使できなくなるリスクがあります。株券発行会社では、株券を提示することで単独で名義書き換えが可能ですが、株券不発行会社では売主との共同手続きが必要です。

特に名義株(実際の出資者と名簿上の株主が異なる株式)がある場合、問題が複雑化しやすいため、手続き前に専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。

専門家へ相談する

株式譲渡の手続きは、法的および税務的な知識が必要不可欠です。契約書の作成や税務処理にミスがあると、後に重大な問題が発生するリスクがあります。トラブルを防ぐためには、弁護士や税理士、M&Aコンサルタントなどの専門家を活用し、正確かつ効率的に手続きを進めるようにしましょう。

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まとめ

株式譲渡は、M&Aの手法の中でも比較的短期間で進められる方法として、中小企業を中心に広く利用されています。事業譲渡や会社分割に比べて手続きが簡単とされる一方で、譲渡制限の確認や税務対応、書類の作成など、注意すべき点も多々あります。

特に非上場企業の株式譲渡では、株式譲渡制限の承認手続きや譲渡益に関する税金の申告など、正確かつ慎重な対応が求められます。手続きに不備があると、後々のトラブルにつながる可能性があるため、事前準備と専門家への相談が不可欠となります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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