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公開日:2024年10月31日
更新日:2024年10月31日

事業譲渡における税金を解説!具体的な計算例や節税方法を紹介

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引退や経営戦略の変更など、さまざまな動機で事業譲渡を考える経営者は多いです。
事業を譲渡するときには税金が発生しますが、法人と個人ではかかる税金が違います。事業譲渡に際して、税金はなるべく抑えたいと思う方も多いでしょう。

そこで今回は、事業譲渡を検討している方に向けて、事業譲渡の税金に関する基本的な知識や他のMAの方法との相違点を説明します。さらに、節税のコツや専門家の利用のメリットについてもお伝えします。

事業譲渡を検討している方はぜひ参考にしてください。

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目次

事業譲渡とは

事業譲渡とは、企業が保有する事業の一部または全部を、他の企業に対して対価を受け取りながら譲渡するM&A手法の一つです。株式譲渡や会社分割などの他のM&A手法とは異なり、事業譲渡では譲渡する事業や資産、負債を個別に選定できる点が特徴です。そのため、企業は事業の整理を行い、経営資源を集中させたい場合や、経営戦略の一環として不採算事業を切り離す際に利用されます。

事業譲渡は「全部譲渡」と「一部譲渡」の2種類に分かれます。全部譲渡では、譲渡する会社が所有する事業すべてを譲渡し、一部譲渡では特定の事業だけを選んで譲渡します。この柔軟性が事業譲渡の大きなメリットであり、譲受側も譲渡側も、必要な資産や事業のみを取引できるという利点があります。

さらに、事業譲渡は、譲渡された対価が会社そのものに支払われるため、経営権の変更を伴わない点が、株式譲渡との大きな違いです。譲渡企業は譲渡後も事業を続けることができ、譲渡益を再投資に充てたり、財務の健全化を図ったりすることが可能です。

一方、事業譲渡は手続きが煩雑である点がデメリットとなります。従業員や取引先との契約を一つ一つ個別に締結し直さなければならないため、時間と手間がかかります。また、株主総会での特別決議が必要な場合や、不動産や特許などの資産が含まれる場合は、登記変更の手続きも必要です。

事業譲渡が適しているケース

事業譲渡は、経営権を維持しながら事業の再編やリソースの集中を図りたい企業に向いています。また、譲受側にとっても、不要な負債やリスクを引き継がずに必要な事業のみを取得できるため、効率的に成長を図る手段となります。なお、資産や事業の選別が可能である柔軟な手法といえますが、手続きの煩雑さや税負担の問題があるため、計画的な準備が重要です。

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事業譲渡にかかる税金の種類

事業譲渡では、売り手と買い手の両方に税金が発生します。

売り手側

法人の場合

法人税等、消費税

個人の場合

所得税、住民税、消費税

買い手側

不動産取得税、登録免許税
(移転資産に不動産が含まれる場合)     

消費税は売り手側に納付義務がありますが、実際に税金を負担するのは買い手側となります。

売り手側の税金

売り手側にかかる税金について、売り手が法人の場合と個人の場合に分けて見てみましょう。なお、事業譲渡は基本的に通常は法人間で行われますが、個人事業主が事業を売却するケースもあります。

売り手が法人の場合

売り手が法人である場合は、法人税等(法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人税、特別法人事業税)及び消費税が課せられます。

法人税等

法人が事業を他の会社に譲渡した場合、発生した利益に対して、法人税等(法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人税、特別法人事業税)が課されます。法人税等の税率は、約34%です。

あくまでも譲渡益(譲渡金額から譲渡資産の簿価を差し引いた金額)に対して課税され、譲渡金額すべてに税金が課されるわけではないことを覚えておきましょう。

譲渡損失が発生したり、事業譲渡による損益を含めても会社全体が赤字の場合、基本的に法人税等はかかりません。

ただし、法人住民税の均等割については、所得に関係なく会社の規模によって納税額が決まるため、赤字でも課税されます。また、資本金が1億円を超える会社(令和741日以降、前事業年度に外形標準課税の対象であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金及び資本剰余金の合計額が10億円を超えるもの等を含む)の場合、法人事業税の資本割と付加価値割があり、これらも譲渡益に関係なく課税されるため、赤字でも納める必要があります。

消費税

事業譲渡の対象の中に消費税が課税される資産が含まれている場合、消費税が発生します。

消費税は資産の譲渡対価に対してかかる税金なので、譲渡益がマイナスでも課税されます。

ただし、実際に消費税を負担するのは買い手側となります。買い手が譲渡対価の支払い時に消費税分を上乗せして売り手側に渡し、売り手側が納付するというシステムです。

譲渡する場合において、消費税が課税となる資産と非課税となる資産の具体例は、下記の表のとおりです。

消費税課税される資産

消費税非課税となる資産

土地以外の有形固定資産
ソフトウェア
商標
特許権
意匠権
棚卸資産
営業権(のれん)

土地
有価証券
債権(売掛金、貸付金等)

売り手が個人の場合

売り手が個人である場合は、所得税、復興特別所得税、住民税及び消費税が課せられます。

所得税・住民税

個人事業主が事業を売却すると、譲渡益(譲渡金額から譲渡資産の簿価などを差し引いた金額)に対して所得税や住民税が課せられます。

一口で所得税・住民税といっても、個人の場合、譲渡資産の種類によって所得の区分が異なるため、税の計算方法が変わってきます。

以下のそれぞれの資産について、税金の計算方法を見てみましょう。

・土地建物
・棚卸資産
・減価償却資産
・営業権
・その他

【土地建物】

土地建物を譲渡して得た所得は、分離課税の譲渡所得となります。

なお、土地や建物を譲渡したときの譲渡所得は、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の二つに分け、税金の計算も別々に実施します。

分離課税の譲渡所得の税金

長期譲渡所得

譲渡した年の11日時点で所有期間が5年を超えるものを譲渡して得た所得

計算式:長期譲渡所得金額×15.315%+住民税5%

短期譲渡所得

譲渡した年の11日時点で所有期間が5年以下のものを譲渡して得た所得

計算式:短期譲渡所得金額×30.63%+住民税9%

【棚卸資産】

棚卸資産(商品、製品、半製品、仕掛品、原材料など)を譲渡した場合の所得は、事業所得(総合課税)として税金を計算します。

【減価償却資産】

使用可能期間が1年未満の減価償却資産、取得価額が10万円未満の少額減価償却資産、一括償却資産の損金算入の適用を受けた減価償却資産(業務の性質上基本的に重要なものを除く)を譲渡した場合の所得は、事業所得又は雑所得(総合課税)となります。 

【営業権】

営業権を譲渡した場合の所得は、総合課税の譲渡所得となります。

【その他】

その他の資産を譲渡した場合の所得も、総合課税の譲渡所得となります。

なお、総合課税の譲渡所得は収入金額から、取得費、譲渡費用及び50万円の特別控除額を差し引いて計算します。また、短期譲渡所得は全額が総合課税の対象になりますが、長期譲渡所得は所得額の2分の1が総合課税の対象になります。

消費税

法人の場合と同様、事業譲渡の対象の中に消費税の課税対象となる資産が含まれている場合、消費税が発生します。

買い手側の税金

事業譲渡の買い手側には、取引により取得した資産によって不動産取得税、登録免許税がかされます。また、取得資産によって消費税を負担します。     

不動産取得税・登録免許税

事業譲渡の取引で譲り受ける資産の中に不動産が含まれる場合、不動産取得税がかかります。また、その不動産の登記を自分に移さなければなりません。そのときにかかる税金が登録免許税です。

税率については下記表にまとめています。

不動産不動産取得税登録免許税
家屋(住宅以外)固定資産税評価額×4%固定資産税評価額×2%
土地・家屋(住宅)固定資産税評価額×3%固定資産税評価額×2%

消費税

消費税については「売り手側の税金」で解説したとおり、事業譲渡で譲渡される資産のうち課税対象となる資産に対して10%の税率をかけて算出されます。事業譲渡時に買い手が売り手に支払い、売り手が納付します。なお、負債には消費税がかかりません。消費税の具体的な計算方法については、後ほど解説していきます。

分離課税と総合課税の違い

総合課税は異なる種類の所得を合計して算出される一方で、分離課税は他の所得と合計せず、個別に算出されるものです。

法人税等は、法人が事業によって得た利益をひとまとめにして課税されますが、個人にかかる所得税については、所得の種類によって「総合課税」と「分離課税」に分けられます。

総合課税と分離課税について、まずは概要を解説します。

総合課税と分離課税について

総合課税は、納税者が1年間に得たすべての所得を合算して税金を計算する制度です。不動産所得や配当所得、給与所得など、所得税の対象となる所得をすべて合算し、各種控除を差し引いた後に税額を計算します。

例えば、給与所得や事業所得、不動産所得などが総合課税の対象となり、これらの合算所得に基づいて課税が行われます。

この制度の特徴は、所得の種類を問わず合計して税金が計算されるため、所得が増えると税率が高くなる累進課税方式を採用している点です。

分離課税は、特定の所得を他の所得と合算せずに、個別で税額を計算する制度です。この方式は、総合課税と異なり、特定の所得については独自の税率が適用されます。分離課税にはさらに「申告分離課税」と「源泉分離課税」の2種類があります。

申告分離課税

申告分離課税は、所得を得た人が自ら特定の所得に関して計算し、確定申告を行う方式です。例えば、株式譲渡による所得や不動産売却益などが申告分離課税の対象となります。

この方式では、所得を他の所得と合算せずに個別に税率を適用し、納税します。税率は、通常の所得税よりも異なるため、所得の種類や状況に応じて有利な選択肢となる場合もあります。

源泉分離課税

源泉分離課税は、所得を支払う側が事前に所得税を控除し、納税者に対して支払いを行う方式です。この場合、納税者は所得税が天引きされた状態で所得を受け取るため、確定申告は不要となります。具体例としては、預貯金の利子所得や投資信託の分配金が該当し、支払われる時点で税額が確定します。

対象となる所得が違う

分離課税の対象となる所得

配当所得

・上場株式等にかかる配当による所得

退職所得

・退職によって勤務先から支給される退職手当
・確定給付企業年金法や確定拠出年金法による一時払いの老齢給付金

山林所得

・所有している山林の譲渡による所得

譲渡所得

・土地・建物・株式などの譲渡による所得

雑所得

・先物取引による所得

分離課税の対象となる収入には、山林所得、土地や建物、株式の譲渡による譲渡所得、退職所得や配当所得などがあります。これらの収入は、他の収入とは合算せず、一定の税率で税金がかかります。

たとえば、上場株式等の配当所得や株式の売却益は、20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税率で課税されます。

総合課税の対象となる所得

不動産所得

・土地や建物などの貸付けによる所得

事業所得

・事業(農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業など)による所得     

給与所得

・勤務先から支給される給与や賞与

譲渡所得

・ゴルフ会員権や金地金、機械などの資産の譲渡による所得
土地・建物・株式などの譲渡による所得は「申告分離課税」

一時所得

・懸賞や福引きの賞金品
・競馬や競輪の払戻金
・生命保険の一時金
「源泉分離課税」とされるものを除く

雑所得

・国民年金や厚生年金などの所得
・作家以外の人が受け取る原稿料や印税

総合課税の対象となる収入には、給与所得や事業所得、不動産所得、ゴルフの会員権等の譲渡による譲渡所得などがあります。

これらの収入は、一定の方法ですべて合計して、累進税率で税金がかかります。累進税率とは、収入が多いほど高い税率になるというものです。

たとえば、課税所得が700万円の場合は、23%の税率で所得税が課税されます。

税金の計算方法が違う

総合課税の場合は、年間の対象となる全ての所得合計額から所得控除を差し引いて、税率を算出します。

分離課税と総合課税とでは、所得税の計算方法に違いがあり、それぞれ別々に税金を計算します。

例えば、500万円の退職金を得たとします。退職金は分離課税の対象ですので、他の所得と合計して税金を計算することはありません。

つまり、総合課税である給与所得が500万円あった場合、合計した1,000万円に対し税金を計算せずに、給与所得500万円とは分離して退職金500万円に対して税金を計算します。

総合課税は、対象となる所得をすべて合計し、所得控除を差し引いた額に税率をかけ計算します。

例えば、給与所得と不動産所得はいずれも総合課税です。

もし給与所得が600万円、不動産所得が400万円ある場合、合計所得は1,000万円となり、この金額から所得控除などを差し引いて税金を計算します。

総合課税のメリット・デメリット

総合課税の大きなメリットは、損益通算が広く認められている点です。損益通算とは、特定の所得で発生した損失を他の所得と相殺できる仕組みです。これにより、事業所得や不動産所得で赤字が出た場合、その損失を給与所得などの他の所得から控除することで、課税対象となる所得を減らし、税負担を軽減することが可能です。

具体的には、事業所得や不動産所得、譲渡所得などで損失が発生した場合に、その損失を給与所得などから差し引くことで所得全体を減少させ、結果的に税額を抑えることが可能です。

一方でデメリットとしては、総合課税には累進課税が適用されるため、高額所得者ほど税率が高くなります。所得税の税率は段階的に上昇し、最大で45%の税率が適用されます。また、住民税も合わせると最大で55%にも達する可能性があります。

この累進課税により、所得が高いほど税負担が重くなる点がデメリットとなります。さらに、総合課税では確定申告が必要な場合が多く、その手間や労力がかかる点も無視できないデメリットと言えるでしょう。

分離課税のメリット・デメリット

分離課税の最大のメリットは、所得に関わらず一定の税率が適用されるため、所得が多くても税率が上がらない点です。これにより、所得が増えても税負担が軽減されることが期待できます。特に、累進課税が適用される総合課税に比べて、分離課税では高額所得者にとって税金を抑えることができる仕組みとなっており、これが大きな利点です。

また、源泉分離課税であれば、課税関係は支払いの時点で終了するため、確定申告が不要となるケースも多く、手続きが簡便である点もメリットです。

ただし、分離課税のデメリットとして、損益通算が認められる所得が限られている点が挙げられます。例えば、譲渡所得で損失が発生した場合、その損失を給与所得から差し引くことはできません。他の所得と損益通算を行って税負担を減らすことができないため、税金対策としての柔軟性に欠けるという点があります。

また、分離課税では対象となる所得ごとに税率が定められており、総合課税と異なり柔軟な対応ができない点もデメリットです。

事業譲渡にかかる税金の具体的な計算例

既に解説してきた通り、事業譲渡が行われることで消費税を始めとした様々な税金が発生します。以下に一覧表を作成しましたので、改めて確認しておきましょう。

税金項目概要
消費税課税対象となる資産額の10%が消費税として、譲渡した企業に貸される。
法人税等譲渡した事業において、譲渡したことにより得た対価が、資産と負債の差額より多い場合、利益に対して約34%が譲渡した企業に貸される
所得税・住民税下記の計算式にて算出
①長期譲渡所得税
長期譲渡所得金額×15.315%+住民税5%

②短期譲渡所得税
短期譲渡所得金額×30.63%+住民税9%

不動産取得税・取得した土地または家屋(住宅)の固定資産評価額×3%
・取得した家屋(住宅以外)の固定資産評価額×4%
登録免許税取得した不動産の評価額×2%

消費税の算出例

消費税の計算をみていきましょう。

■前提

・譲渡対価は2,000百万円とする


・事業譲渡実施にあたり発生する諸手数料は考慮しない

譲渡対象金額(百万円)
資産合計1,500
棚卸資産500
建物500
土地500
負債合計300
未払い金300
純資産1,200

その場合は以下のような計算を行います。

■のれん

譲渡対価 – 資産合計 – 負債合計 = 2,000 – 1,500 – ( -300 ) = 800

■消費税

(棚卸資産 + 建物 + のれん) × 10% = (500 + 500 + 800) × 10% = 180

法人税等の算出例

法人が事業譲渡を行う場合、譲渡益に対して法人税がかかります。法人税は、企業が得た利益に対して課される税金で、その税率は29%から42%の範囲内で、所得の規模や地域により異なります。

<計算例>

譲渡価額:3億円

取得費:1,500万円

譲渡費用としてM&A仲介手数料:3,000万円

この場合、譲渡益は以下のように計算されます。

譲渡益 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用

譲渡益 =3億円 – 1,500万円 – 3,000万円 = 2億5,500万円

法人税率を30%と仮定した場合、法人税は以下のように算出されます。

法人税 = 譲渡益 × 法人税率

法人税 = 2億5,500万円 × 30% = 7,650万円

つまり、法人税支払い後の手取り額は、

手取り額 = 2億5,500万円 – 7,650万円 = 1億7,850万円となります。

所得税・住民税の算出例

続いて、所得税・住民税の算出例を長期譲渡所得税と短期譲渡所得税に分けて解説します。

長期譲渡所得税の算出例

長期譲渡所得税は、保有期間が5年以上の資産を譲渡した場合に適用されます。長期譲渡所得に対する所得税の税率は15%、住民税の税率は5%です。加えて、復興特別所得税(2.1%)もかかります。

<計算例>

譲渡価額:1億4,500万円

取得費:1億円

譲渡費用:500万円

この場合、課税譲渡所得は以下のように計算されます。

課税譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用

課税譲渡所得 = 1億4,500万円 – 1億円 – 500万円 = 4,000万円

長期譲渡所得税は、所得税、復興特別所得税、住民税の合計として以下のように計算されます。

所得税:4,000万円 × 15% = 600万円

復興特別所得税:600万円 × 2.1% = 12万6,000円

住民税:4,000万円 × 5% = 200万円

つまり、合計税額は812万6,000円となります。

<参照:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁 (nta.go.jp)>

短期譲渡所得税の算出例

短期譲渡所得は、保有期間が5年未満の資産を譲渡した場合に課される税金で、税率は所得税30%、住民税9%です。こちらも復興特別所得税(2.1%)が適用されます。

<計算例>

課税短期譲渡所得:800万円

この場合、税額は以下のように計算されます。

所得税:800万円 × 30% = 240万円

復興特別所得税:240万円 × 2.1% = 50,400円

住民税:800万円 × 9% = 72万円

つまり、合計税額は312万5,400円となります。

<参照:No.3211 短期譲渡所得の税額の計算|国税庁 (nta.go.jp)>

事業譲渡と株式譲渡での税金の違い

事業譲渡では、譲渡企業が会社の一部または全部の事業を譲渡し、譲受企業から対価を受け取る手法である一方、株式譲渡は、譲渡企業の株主が保有している株式を譲受企業もしくは個人に譲渡し対価を受ける取る手法です。

事業譲渡に似たMAスキームの1つに株式譲渡があります。

株式譲渡は、譲渡企業の株主が保有している株式を譲受企業もしくは個人に譲渡することで会社の経営権を移転させることをいいます。

株式譲渡のメリットは、事業譲渡よりも手続きが簡単なことです。株式の売買だけで、会社の経営権が移ります。

一方、株式譲渡のデメリットは、柔軟性が低いことです。株式を売却すると、会社が持っているものや事業を全部渡すことになります。事業譲渡のように、渡す事業と残す事業を選ぶことはできません。

事業譲渡と株式譲渡では、かかる税金の面で違いがあります。

仮に自分が筆頭株主である法人の経営者として売却を行う場合、事業譲渡では約34%の法人税等がかかります。一方、株式譲渡の場合は、20.315%の所得税+住民税+復興特別所得税で済みます。また、株式譲渡の場合、株主が受け取る退職金の額を調整することによって節税対策が可能というメリットもあります。

このように、税金については事業譲渡よりも株式譲渡の方が有利なケースがあります。

ただし、事業譲渡と株式譲渡のどちらを選ぶべきかは、税金面だけではなく、総合的な観点から判断する必要がありますので、専門家に相談するのが良いでしょう。

税制面での会社分割を選択するメリット

事業譲渡では、譲渡側が会社の一部または全部の事業を譲渡し、譲受側から対価を受け取る手法である一方、会社分割は、会社を事業ごとに分割し承継会社から基本的に株式で対価を受け取る手法です。

会社分割も事業譲渡に似たM&Aスキームの1つです。

会社分割は、会社を事業ごとに分割して引き継ぐ手法です。売り手は現金ではなく基本的に株式で対価を受け取ります。会社分割は会社法上の組織再編に該当します。

会社分割のメリットは、事業を包括的に引き継げること、債権者や労働者から個別に同意を得る必要がないこと、業種によっては許認可を引き継げること、一定の要件を満たす場合には不動産取得税が非課税となることなどです。

不動産取得税が非課税となる条件                                        

・分割対価が株式交付(分割型の場合は按分型の分割)
・分割事業に係る主要な資産・負債の移転
・分割事業に係る従業員の概ね8割以上の引継見込み
・分割承継法人における分割事業の継続見込み     

会社分割を選択した場合のデメリット

税制面での会社分割によるメリットを解説しましたが、税制面以外の点でデメリットも存在します。

会社分割では、切り離した事業を包括的に譲渡する形になるため、表面化していない負債、いわゆる簿外債務を引き継ぐ可能性があります。これには、未払い給与や退職給付引当金、回収困難な売掛金などが該当します。事業譲渡のように、負債を除外する選択肢がないため、予想外の多額な支出が発生するリスクがあります。徹底したデューデリジェンスが必要となる点が、会社分割のデメリットです。

また、会社分割には法人税や所得税がかかり、さらに新設分割の場合は設立登記時に登録免許税が課税されます。適格要件を満たせば税負担を軽減することができますが、この要件には厳しい条件があります。たとえば、親子会社間での関連事業であることなど、条件を満たすために多大な時間と労力がかかる場合があります。

その他、株式を対価とする点のリスクや非上場株式の流動性のリスクなどもありますので、事前に必ず確認しておくようにしましょう。

事業譲渡における売り手側の節税方法

節税方法として、役員退職慰労金の活用、役員報酬の活用、事業投資による経費との相殺、特例欠損金の活用が挙げられます。

法人が事業譲渡を行う場合、譲渡側は法人税等を負担しなければいけません。

法人税等は、その年度の決算時の利益に対して課される仕組みになっています。譲渡側は、この法人税等の仕組みを利用して節税対策を実施することができます。

具体的には、以下の4つの方法があります。

・役員退職慰労金を活用する
・役員報酬を活用する
・事業投資による経費と相殺する
・特例欠損金を活用する

役員退職慰労金を活用する

事業譲渡の際には、役員の退任が発生する可能性があります。 役員の退任があれば、その役員には役員退職慰労金を渡すことで節税につながります。

役員退職慰労金とは、会社に尽力してくれた役員に対して、役員が退任するときに会社から支給する慰労金のことです。

事業譲渡の年度に役員退職慰労金を支給すれば、事業譲渡で得た利益を減らすことができるので、節税ができるのです。

しかし役員退職慰労金をあまりにも高い金額に設定してしまうと、不相当に高額な額であると判断されてそもそも損金算入ができなくなるリスクがあるので、専門家への相談を行った上で判断するのが賢明です。

経費を増やし売却時期の利益を減らす

役員報酬を増額する

役員報酬の損金計上は、事業を売却した後も別の事業を行うなど、継続して法人を経営する場合に有効な節税方法です。

役員報酬の支払い方法によっては経費として認められ、損金として計上できるため、譲渡益の一部を役員報酬に回すことで、税金を節約できる場合があります。

ただし、下記の支払い方法以外では損金として認められないので注意しましょう。

【損金として計上できる役員報酬の支払い方法】

・定期同額給与
・事前確定届出給与
・業績連動給与

事業投資を行う

事業譲渡の年度に、様々な経費を計上することで、利益を減らして税金を節約できる方法があります。

見方によっては、これまで手を出せなかった分野に対して、積極的に経費をかけるチャンスとして捉えることができます。例えば、広告宣伝費や設備投資費、賞与の支給など、会社や従業員にとって必要なものに経費を使うこと等が考えられます。

ただし当然、節税のためといって無意味に経費を使うと、将来につながる投資ではなく無駄使いとなってしまいます。事業にとって必要なものに経費を使うことが大切です。

期限切れ欠損金を活用する(会社を清算する場合)

解散した法人に残余財産がないと見込まれるときは、期限切れ欠損金を損金の額に算入することができます。     

実質債務超過でありながら繰越欠損金がないような会社は、事業譲渡によって利益及び税金が発生し、資金繰りに苦慮することがあります。     

このような状況では、会社を解散した次の日以降に事業譲渡をすることで、期限切れ欠損金を事業譲渡による利益と相殺することができ、事業再生において活用されます。

事業譲渡における買い手側の節税対策

事業譲渡における買い手側の節税対策として、中小企業等経営強化法による特例措置を受けるという方法があります。

中小企業等経営強化法とは、中小企業の生産性向上を図るために税制面・金融面における様々な支援を規定した法律です。

中小企業等経営強化法の適用を受けるためには、経営力向上計画を作成し認定を受けなければなりません。事業譲渡によって経営力向上を図る場合、その事業譲渡で土地・建物を取得することを内容に盛り込む必要があります。

認定を受けた場合、不動産取得税の軽減として、不動産の価格の1/6相当額を課税標準から控除するという特例措置が適用されます。

個人・法人の税金を支払うタイミング

事業譲渡で発生する税金を支払うタイミングについて、個人事業主が所得税を支払う場合と法人が法人税等を支払う場合とで分けて見てみましょう。

個人の税金の支払いの場合

事業を譲渡した個人は、その年(11日~1231日)に得た収入を、次の年の216日から315日まで(消費税は翌年331日まで)の間に申告・納付します。     

その年の始め(1月や2月など)に自分の事業を売却した場合、納税するまでに1年以上も期間が空くことになります。 そのため、事業譲渡で受け取ったお金はすぐに使わないで、現金や現金化しやすい資産として持っておくのが良いでしょう。

また、所得税と住民税は納税のタイミングが異なります。所得税は315日までに確定申告を行い、そのタイミングで納税となりますが、住民税の納税は6月以降となります。数ヶ月期間が空くため、住民税の納税ができるだけの資金は残しておきましょう。

法人の税金の支払いの場合

事業を譲渡した企業は、その事業年度の最終日の翌日から2ヵ月の間に、譲渡に伴う税金を申告・納付する義務があります。

例えば年度末が331日の企業は、531日までに税金の申告・納付を済ませなければなりません。

しかし、災害など納税者の責めに帰さないやむを得ない理由によりできないと認められる場合は、申請により、申告・納付の期限をやむを得ない事由がやんだ日から2ヵ月以内とすることができます。

事業譲渡における専門家を活用するメリット

事業譲渡を実施するうえで専門家が必要とされる理由は、専門家に質問するのが悩むより早いこと、専門家の協力で適正価格で売却できることが挙げられます。

事業譲渡はプロセスや税金面で複雑な点が多い取引です。ここまで読んで、専門家に依頼した方がスムーズだと感じた方も多いでしょう。

最後に、事業譲渡で専門家が必要な理由についてお話します。

専門家に質問するのが悩むより早い

事業譲渡を行うにあたって、不明な点や判断に迷う点がたくさん出てきます。

社内で解決しようとすると、時間がかかるだけでなく、思わぬミスが発生する可能性があります。 さらに、一般的な企業の場合、事業譲渡の経験がない人が大半であるケースがほとんどなので、事業譲渡を自力で計画段階から進めていくのはとても困難です。

正確かつスムーズに手続きを行うためには、やはり経験豊かな専門家に相談するのがいいといえます。

専門家の協力で適正価格で売却できる

事業譲渡を実施するときに取引相手の方がM&Aのリテラシーが高く、専門家のアドバイスなしに自力で交渉を進めていると、適正価格よりも高く買わされてしまったり、適正価格よりも低い価格で買収オファーをもらう可能性があります。

専門家のサポートがあれば、寄り添って適正価格を設定してくれたり、交渉相手から不当に低い価格を提示されても丸め込まれないように支援をしてくれます。
円滑に事業譲渡を行うためにも、経験のある専門家のアドバイスやサポートを受けて進めていくのが良いでしょう。

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まとめ

今回は、事業譲渡の際にかかる税金について、株式譲渡や会社分割との比較も交えて、詳しく解説しました。
また、節税の方法や専門家を活用するメリットについてもご紹介しました。
事業譲渡を検討する際に今回の記事の内容が参考になれば幸いです。

この記事の監修者

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