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公開日:2024年5月1日
更新日:2024年5月1日

ROEとは?計算式·目安·ROAとの違い·上げるための方法を解説

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企業の経営効率を測る指標に「ROE」というものがあります。ROEは自己資本比率のことで、企業の収益力を見る指標として投資家も重視しています。

この記事を読んでいる方の中には、ROEという用語を聞いたことがあっても、具体的には何を指しているのか、どのように算出するのかなどはわからないという方もいるのではないでしょうか。

そこで、この記事ではROEの意味、ROEの計算方法、ROEの目安、ROEを高める方法について解説します。また、ROEと間違えられやすいROAとの違いについても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

この記事の監修者

ROEとは?

ROEReturn On Equity)は、企業が自己資本をどれだけ効果的に利用して利益を生み出しているかを示す指標です。日本語では「自己資本利益率」と呼ばれます。この指標は、管理会計上だけでなく、特に投資家にとって、投資した資本に対する利益の効率を評価する上で重要なものとされています。

ROEは、自己資本に対して企業がどれだけのリターンを生み出しているかを示すため、株主の視点から見ればその企業への投資の魅力を判断する際の基準となります。したがって、ROEが高い企業は、自己資本を効率的に活用していると評価されることが多いです。

ROEは企業が株主の資本をどの程度効率的に活用しているかを示す重要な財務指標であり、経営の効率性を投資家に示すために広く用いられています。

ROEが重要視される理由

ROEが重要視されるようになった理由は、株主や投資家に対して企業がより透明性を持った経営を行うことが求められるようになったからです。従来、日本企業においては売上高を最重要視する傾向がありましたが、株主の利益を重視する視点からは、単に売上を上げるだけではなく、どれだけ効率的に利益を出しているかが重要になります。

ROEが高い企業は、株主の出資した資本に対して高いリターンを生み出していることを示しており、これが企業の効率的な経営を示す指標となるため、投資の判断基準として広く利用されています。特にアクティビストファンドなど、経営改革を推進する投資家の影響力が増す中で、ROEの向上は企業にとって避けて通れない課題となっています。

こうした背景から、上場企業は株主に対して財務の健全性や収益性を示すためにROEの改善に注力し、経営の透明性を高めることが求められているのです。

ROEからわかること

企業の成長速度

ROEを分析することで、企業の成長速度を測ることができます。

ROEが高ければ、企業の収益性が良く成長しているといえます。ROEが高くなるということは、当期純利益が増えており、業績が向上している証拠です。

高いROEは、企業が利益を生み出し、その利益を投資に回すことでさらなる成長を促す力があることを意味します。したがって、ROEが持続的に高い、または向上している場合、企業の成長速度が速いことを示しています。逆に、ROEが低い、または低下している場合、企業の成長が停滞している可能性があり、利益の成長が資本の増加に追いついていないことを意味します。

ROEを通じて、企業がどれだけ効率的に資本を利用して成長を遂げているかを把握することができるのです。

売上当期純利益率

ROEから売上高当期純利益率の把握も可能です。

ROEの向上には、当期純利益の増加だけではなく、自己資本に対する負債の比率が変動することも影響します。このため、売上高当期純利益率も一緒に検討することが重要です。

売上高当期純利益率は、売上高がどれだけ利益として残っているかを表す指標です。「当期純利益÷売上高」で計算します。この比率が高いほど、企業は収益を効率よく生み出していると評価できます。

企業の経営効率はROEだけでなく他の財務指標などを合わせて評価することが望ましいです。

企業の株価の推移

ROEの分析により企業の株価の動向も予測することが可能です。

ROEは企業が株主から預かった資本をどれだけ効率良く利用して利益を上げているかを示します。

ROEが高い場合、株主にとっては高配当やキャピタルゲインの期待が大きくなります。逆に、ROEが低い場合は経営の効率が疑われ、投資家から避けられる傾向にあり、株価は低迷することが考えられます。

このことから、ROEは株価の方向性を見極めるための重要な指標の一つといえるでしょう。

ROEとROAの違い

ROEと類似した財務指標に「ROAReturn On Assets、総資産利益率)」があります。

ROAは企業が保有する全資産からどれだけの利益を生み出しているかを示す指標で、計算式は「純利益÷総資産」です。ROAの特徴は、その分母に自己資本だけでなく他人資本も含む点にあります。ROAは企業が自己資本と共に借入金などの他人資本をどれだけ効率的に利用しているかも評価するものです。

ROEが株主からの資本の効率的な使用を、ROAが企業の全資産の使用効率を示すという点が両者の違いです。ROEは主に株主の視点からの効率性を、ROAは企業経営の全体的な資産管理効率を反映するのです。

投資判断を行う際には、それぞれの指標を互いに補完しながら見ることが必要です。

ROEの計算方法

ROEを計算するための式は以下の通りです。

具体例として、企業が当期純利益として5億円を稼ぎ出し、自己資本が50億円であった場合、ROEは以下のように計算されます。

この結果から、投資された自己資本に対して企業が10%のリターンを生み出したことがわかります。

ROEは投資家にとって企業が資本をどれだけ効率的に利用して利益を生み出しているかを測る重要な指標となります。したがって、この指標の高さは、企業が自己資本を活用して高い利益を上げている証拠ともいえます。

ROEの目安·理想値は?

ROE10%以上であれば投資価値のある企業とみなされます。

中小企業庁の「令和4年調査の概況(令和3年度決算実績)」によると、中小企業の平均ROE8.29%と報告されています。

業界

ROEの平均値

全体

8.29%

建設業

11.59%

製造業

10.70%

情報通信業

13.70%

運輸業·郵送業

6.78%

卸売業

10.49%

小売業

8.52%

学術研究、専門·技術サービス業

9.80%

宿泊業、飲食サービス業

10.00%

生活関連サービス業、娯楽業

3.53%

サービス業(他に分類されないもの)

11.75%


業界によってROEの理想値は大きく異なります。例えば、製造業などでは、大規模な投資が必要とされるため、ROEは自然と低くなる可能性があります。一方、技術力やブランド力が競争優位を生む業界では、比較的低い投資で高い収益が期待できるため、ROEが高くなる傾向があります。

投資家やアナリストは、企業のROEを業界平均や競合他社と比較することによって、その企業の財務効率や成長性を評価します。したがって、自社のROEを業界平均以上に保つことは、投資魅力を高めるために重要です。また、ROEが持続的に高い水準を維持している企業は、内部留保を効果的に活用しているとも考えられ、その結果として安定した成長を遂げる可能性が高まります。

ROEは単なる財務指標以上の意味を持ち、企業が将来にわたって持続可能な成長を遂げるための重要な鍵となるのです。そのため、企業はROEを向上させるために、効率的な資本使用や利益最大化の戦略を常に模索する必要があります。

ROEを上げるための5つの方法

ROEを高める方法としては以下の5つがあげられます。

·売上高当期利益率を高める

·総資産回転率を向上させる

·財務レバレッジを高める

·自己資本を減少させる

·M&Aを実施する

以下でそれぞれ解説します。

売上高当期利益率を高める

ROEを向上させるためには、当期純利益を増加させることが効果的です。当期純利益を増やすためには、売上の増加とコストの削減、この二つのアプローチを組み合わせることが重要です。

売上を増やす方法としては、市場のニーズに応じた新商品の開発やサービスの拡充、販売チャネルの拡大、マーケティング活動の強化などがあります。これらの取り組みは、顧客基盤の拡大や売上の増大に直結します。

一方でコスト削減には、運営の効率化がカギとなります。具体的には、無駄な経費の削減、プロセスの最適化、リソースの再配分などを実施します。これにより、必要最低限のコストで最大限の効果を得ることが可能となります。しかし、コスト削減を進める際には、品質の低下や従業員の士気が落ちないよう注意が必要です。また、設備のメンテナンス費用や未使用資産の削減も有効な手段といえます。

経営の観点から見ると、売上を増やしつつコストを抑えることにより、ROEを効率的に向上させることができます。これにより、企業の財務健全性と成長の持続可能性が高まります。

総資産回転率を向上させる

ROEを高めるためには総資産回転率の向上が重要です。総資産回転率は使用している資産に対してどれだけ売上を生み出しているかを示す指標で、効率的な資産管理が反映されます。具体的には、売上を維持しつつ不要な資産を削減することが求められます。

総資産回転率を改善するためには、不採算部門の見直しや遊休資産の処分など、資産圧縮に注力することが効果的です。例えば、売上高100に対して総資産が100だった場合、総資産回転率は1となりますが、これを80に減少させれば、回転率は1.25に向上します。重要なのは、事業と無関係な資産を削除し、事業に必要な資産のみで効率を高めることです。

また、在庫管理の最適化も総資産回転率の向上に寄与します。在庫水準を適正化し、不要な在庫を保持しないことで、固定されがちな資本の流動性を高めることができます。さらに、使用していない機械や不動産の売却も効果的です。これらの措置により、必要最低限の資産で最大限の成果を出すことが可能になり、結果としてROEの向上に繋がります。

財務レバレッジを高める

ROEを向上させるための戦略の一つに、財務レバレッジを高める方法があります。この戦略は、企業が借入などの他人資本を利用して自己資本に比べてどれだけ多くの資産を保有しているかを示します。具体的には、「総資産÷自己資本」の式で計算され、この値が高いほど自己資本に対して多くの他人資本を使用していることを意味します。

たとえば、自己資本が100で他人資本が200の場合、財務レバレッジは3となります。この数値が高いほど、企業は他人資本を用いて事業を拡大していると解釈でき、ROEの数値を理論上向上させることが可能です。

しかし、この方法にはリスクも伴います。借入を増やすことで、負債依存度が高まり、金融危機が発生した場合に企業の財務状態が悪化する可能性があります。そのため、財務レバレッジを高める際には、そのリスクを慎重に評価し、計画的に資金を調達し投資することが求められます。

財務レバレッジを高めることはROEを効果的に向上させる手段ですが、経営の持続可能性を考慮したバランスの取れたアプローチが必要とされます。

自己資本を減少させる

ROEの向上のために自己資本を意図的に減少させる手法について解説します。ROEは、「当期純利益÷自己資本」で算出されるため、自己資本の数値を小さくすることで、ROEの割合が自動的に向上します。

自己資本の減少を促す方法として、最も一般的なのは配当の増加です。通常、配当は未分配利益から支払われるため、これを増やすことで自己資本が減少します。これにより、自己資本が減り、結果的にROEが改善されることになります。

また、自社株の買い戻しも自己資本を減少させる有効な手段です。自社株を市場から買い取ることで、自己資本の一部が減少し、それがROEの向上に寄与します。

これらの手法は財務レバレッジには直接影響しませんが、株主からの評価を高める効果も期待できるため、投資家の目を引く企業経営につながります。ただし、これらの方法を適用する際は、会社の財政状態や持続可能性を慎重に考慮する必要があります。

M&Aを実施する

ROE向上のためにM&A(企業の合併・買収)を実施することは、自社の純利益を効果的に増加させる手段です。高収益の企業を買収することによって、短期間で自社の利益を大幅に増やし、結果的にROEを向上させることが可能です。

ただし、M&Aの実行にはいくつかのリスクも伴います。例えば、買収対象の企業との文化の違いや経済状況のミスマッチが原因で、統合後のシナジー効果が期待ほど発揮されない可能性があります。また、買収に伴う初期費用が大きく、これが短期的に財務負担を増加させるリスクも考慮する必要があります。

M&Aを戦略的に利用する際は、買収する企業の選定、経済状態の詳細な分析、統合プロセスの計画など、周到な準備と慎重な実行が求められます。

ROEの注意点

ROEは企業の収益性を測る重要な指標である一方、その数値だけで企業の全体像を判断することにはリスクが伴います。特に、ROEが高い場合、それが単に高い負債によるものかもしれません。たとえば、借入れによって自己資本が相対的に少なくなり、少ない自己資本から高い利益を上げているように見える場合、ROEは数値上向上します。しかし、これは企業が高リスクを負っている可能性を示していることもあり、安定した経営とは言えない場合があります。

例えば、自己資本が50億円、負債が50億円の企業が5億円の純利益を上げた場合、ROE10%と計算されます。一方で、自己資本が75億円で負債が25億円の企業が同じ5億円の純利益を上げた場合、ROE6.67%となります。前者の方がROEは高いものの、高い負債を背負っているため、実際にはリスクが高いと評価されるかもしれません。

このため、ROEを評価する際には、他の財務指標と併せて考慮することが重要です。例えば、ROA(総資産利益率)や負債比率といった指標を参照し、企業の財務構造全体を理解することが求められます。ROEが高いことは表面的には魅力的ですが、その背後にある経営リスクを適切に評価するためには、より広い視点からの分析が必要になります。このアプローチによって、よりバランスの取れた投資判断が可能になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回の記事ではROEの意味、ROAとの違い、ROEの計算方法、ROEの目安、ROEを高める方法について解説してきました。

ROEM&Aの検討プロセスにおいても重要な指標となります。M&Aを検討している方はぜひROEについて頭に入れておきましょう。

今回の記事で解説した内容がお役に立てば幸いです。

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