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公開日:2024年1月4日
更新日:2024年3月25日

M&Aの資格について 資格保有者のM&A案件への関わり方を専門家の立場から徹底解説

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M&Aを成功に導くためには専門的な知識が必要です。M&Aの資格保有者は専門的知識を有する裏付けとなります。このコラムではM&Aに関わる資格や資格保有者の役割について、専門家の立場から詳しく解説します。

M&A 資格とは?


M&Aのプロセスには様々な専門家が関わります。M&Aに関わる資格について、以下に説明します。

M&Aに関わる資格の定義

M&Aはスタートからゴールまで、プロセス全体を通して、あるいは一部のプロセスで複数の専門家が関わります。複数の専門家とはM&A仲介を行うM&A仲介会社やFA(Financial Adviser:ファイナンシャル・アドバイザー)といったM&Aに精通した専門家と、弁護士や公認会計士、税理士や社会保険労務士、司法書士など国家資格を有する士業の専門家です。

M&Aを仲介したり、プロジェクト全体を総括する担当者には、必ずしもM&Aの資格が必要とされるわけではありません。また、M&Aは有資格者が遂行すべきといった法的な義務や公的な要求はありません。

しかし、実際にM&Aを行う場合は、企業譲渡に関わる極めて高度な専門的知識や煩雑な手続きの遂行能力、高いコミュケーション能力やリスクのマネージメント能力が必要です。加えて法務、財務、税務、労務などの領域に対する網羅的かつ横断的な知見が必要です。

M&Aのスタートからゴールまでの時間軸で、全体を取り仕切る役割を果たす専門家がM&Aアドバイザーです。一方、デューデリジェンスや契約などのプロセスにおいて関わるのが弁護士や公認会計士、税理士や社会保険労務士など、国家資格を持つ士業の専門家です。

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M&A 資格のメリット

M&Aに関わる資格のメリットは、M&Aについて体系的に学び知識を有する証明になることです。例えば、M&Aアドバイザーは、M&Aを遂行するスキルのみならず、M&Aに関わる法務、財務、税務、労務の領域に対しても広く網羅的な知識を有していることが強みです。

こうしたM&Aの有資格者に対して仲介などの業務を依頼することは、M&Aを成功に導くための要素になるでしょう。M&Aを依頼する場合にもこうした有資格者に依頼することは、依頼者の安心感につながるのではないでしょうか。

M&A 資格の種類


M&Aに関わる資格には以下の様な資格があります。いずれも民間の資格であり、国家資格や公的資格ではありませんが、こうした資格は弁護士や税理士などの士業の専門家がM&Aに関わるために保有している場合もあります。

1.JMAA認定M&Aアドバイザー(以下M&Aアドバイザー)

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(略称:JMAA)が定める一定要件を

満たし、協会の正会員としての入会を認められたM&Aアドバイザーであることを証明する資格

JMAA認定M&Aアドバイザー(CMA)資格取得までの流れ/日本M&Aアドバイザー協会 (jma-a.org)

2.M&Aスペシャリスト資格

M&Aの実務に特化した資格。一般社団法人日本経営管理協会(JIMA)の認定資格

M&Aスペシャリスト – 日本経営管理協会 (JIMA)

3.M&Aエキスパート認定資格

M&Aの入門知識に関する資格。一般社団法人金融財政事情研究会認定の資格

事業承継・M & A | 一般社団法人金融財政事情研究会 (kinzai.jp)

4.事業承継士

事業承継の知識を習得できる資格。一般社団法人事業承継協会の認定資格

弁護士

弁護士の役割は大きく2つあります。以下に説明します。

1つ目は法務に関わるデューデリジェンス(買収対象企業のリスクやリターンを適正に把握するために事前におこなう調査)です。デューデリジェンスとは、売り手の会社が契約している契約書上に、買い手の会社が引き継ぐ時にリスクがないか、本来締結すべき契約書が締結されているか、法令違反がないかなど、法務的な観点からリスクを明らかにします。

2つ目はM&Aの契約書の作成です。M&Aでは売り手側、買い手側のそれぞれの弁護士が、株式譲渡契約書、もしくは事業譲渡契約書の草案(ドラフト)を何度ももやりとりしながら、双方が納得しながら練り上げていきます。売り手側・買い手側のいずれかの弁護士が、契約書の草案を相手方の弁護士に提示をした上で、お互い相手側の意向を聞きながら文言の修正や削除、追加などを契約書に反映させていきます。両者が納得する契約書を作りあげるのが、リーガルアドバイザーと言われる弁護士のミッションです。

公認会計士

公認会計士の役割は大きく2つあります。

1つ目は財務デューデリジェンスです。財務デューデリジェンスでは買収対象企業の財務的リスクを分析します。一般的には一定期間における業績、財政状態並びにキャッシュフローの分析、簿外債務や偶発債務の有無の確認など財務や会計に対する調査を行います。

2つ目はバリエーションです。バリエーションとは買収対象企業の企業価値評価です。事業計画や収益力の分析を行い、M&Aの対象となる企業の適正な売却金額、あるいは妥当な買収金額を計算して、企業価値評価を算定します。具体的には収益性や現金と借入金の状況、純資産の実態などを分析して実態を明らかにして、企業評価に織り込ませることを行います。

税理士

M&Aにおいて、税理士は税務デューデリジェンスを行います。法人税の申告書などを確認して税務に関わる調査やリスクの分析を行います。直近に行われた税務署による税務調査の状況を調査したり、税務の観点からリスクを確認します。

社会保険労務士

社会保険労務士は労務デューデリジェンスを担当します。売り手企業における従業員に対する未払い残業はないか、労務管理は適法か、社会保険の支払いは適切か、労働基準法に対する違反有無などの法令遵守の状況やリスクを確認します。また社内の労働規則に反する点はないか、36協定が適切に結ばれているかの確認や就業規則・給与規定・賞与規定などがあることの確認や、それらが実態と乖離していないかを確認します。昨今では法令上義務付けられた障害者の雇用状況についても、労務デューデリジェンスの対象となる可能性があります。

司法書士

司法書士の役割は主に2つです。

1つ目は会社分割を行う際の分割の計画書の作成や債権者の保護手続きです。分割した会社を売却する、あるいは分割された会社を買収する時に、先頭に立って分割の指揮を取ります。分割計画を作成し、関係者に対して官報公告や通知を通して分割する旨を公告します。

2つ目は、買収した会社の登記手続きです。代表者や本店の変更や住所の移転、会社名や屋号の変更に対して、法務局に対する登記手続きを行います。

その他のM&A関連資格

その他のM&A関連資格として、中小企業診断士や土壌汚染調査技術管理者があげられます。

中小企業診断士は法務や財務、税務や労務といった専門分野を担当するのではなく、M&Aアドバイザーと同様に横断的な知識で士業の専門家と関わりながらM&Aを推進していきます。

土壌汚染調査技術管理者は土壌汚染や環境汚染といった環境デューデリジェンスを担当します。例えば、企業買収後に工場の土地から有害物質が検出された場合、多大なリスクに拡大する可能性があるので、環境面からのリスクの確認が必要となるケースがあります。

M&A資格の取得方法

M&Aに関わる資格の多くは、認定資格を提供している団体で学び検定試験に合格することで取得できます。

M&A資格の必要性

M&A業界は今後も成長が期待される業界です。M&A資格を保有することで、より専門的なアドバイスを行うことができます。M&A資格が信頼の証となり、M&Aの市場が拡大するトレンドに乗ることで、より専門的なM&Aのアドバイザリーサービスを提供し、キャリア形成を行うことができるのではないでしょうか。

M&A資格の活用方法


M&A資格があると、M&A仲介会社に就職する場合と独立して起業する場合に有効となるでしょう。M&Aの領域には弁護士や会計士など、様々な専門分野があります。自己の強みを打ち出してこうした士業に関わる事務所で働いたり、起業できる可能性も高まるかもしれません。

キャリアアップ

M&Aは国内企業のみならず、海外企業とも行われる場合があります。海外企業と関わるM&Aに有効な国際資格があります。国際弁護士やUSCPAといった米国公認会計士、 国際税理士などの海外の資格は、外資系企業や海外で活躍するチャンスにつながるかもしれません。

転職

M&Aの資格を得ることで、法務や財務、税務や労務など様々な領域の知識を網羅的に学ぶことができます。またM&Aの業界で働くことは経営や事業運営などにも接点があるため、視座の高い経験や、多くの豊かな人脈を得ることができると言えるでしょう。こうした経験値や知見は転職の際にも有利になるのではないでしょうか。

起業

少子高齢化や人口減少による経営者の後継の課題が発生しています。特に中小企業におけるM&Aのマーケットは拡大しているため、ビジネスチャンスを掴み、自己の持っている資格を生かして、M&A業界の中で起業するといったことも増えるのではないでしょうか。

まとめ

M&Aに関わる資格については、複数の軸から整理して理解すると良いでしょう。資格はM&Aを進めていく上で大変有益です。また、企業経営や事業運営に関わる網羅的な知識を得ることができるため、M&Aに関わる職務のみならず、キャリア形成にも有効ではないでしょうか。

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