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公開日:2023年12月27日
更新日:2024年3月25日

M&Aの流れ・フローとは M&Aの流れを専門家の立場から徹底解説

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M&AとはMergers and Acquisitionsの略で、企業の合併買収を意味します。複数の会社が合併で1つになったり、ある会社が他の会社を買収したりすることです。広義の意味では、合併買収のみだけでなく、提携や第三者割り当て増資によるマイノリティ出資まで含める場合もあります。

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M&Aの流れと全体像


M&Aの流れは、検討フェーズと交渉フェーズの2つのフェーズに大別されます。各々のフェーズには下記の工程が含まれます。この記事では主に売り手(譲渡側)の視点から解説します。

1. 検討フェーズ
・M&A仲介・FAの選定
・案件化〜マッチング〜意向表明(オファー)
2. 交渉フェーズ
・基本合意
・デューデリジェンス
・契約交渉
・プレクロージングフェーズ

検討フェーズ


M&Aの検討フェーズではM&Aの目的を明確にし、進め方や達成したいことを整理し戦略を立案します。中小企業にはオーナー企業も多く、事業承継や後継者の課題を抱えています。M&Aによって達成したいことを明確にして、「オーナーとして達成したいこと」と「経営者として達成したいこと」をそれぞれ分けて考える必要があります。

M&A仲介・FAの選定

M&A仲介とは売り手と買い手の間で条件交渉やM&A案件を進める役割を担います。一方、FA(フィナンシャルアドバイザリー)とは売り手ないしは買い手のいずれかの立場で
アドバイザリー業務の役割を担います。アドバイザリー業務とはクライアントである売り手もしくは買い手の経営者や企業から依頼を受け、M&Aを検討し実行するためのサポートの役割を担うことです。

M&A仲介が売り手と買い手の両者の間に立つのに対し、FAは売り手か買い手のいずれかの側に立ちます。M&A仲介とFAの選択に明確な基準はありませんが、M&Aの譲渡価格が数億円~数十億円の場合や中小企業のM&Aの場合はM&A仲介会社が当事者間に立ってディールの取り仕切りを行うことが多く、上場企業などの大型のM&A案件ではFAが関わる傾向が高くなります。

中小企業庁が提供するM&A登録支援機関制度の登録機関データベースには、2024年現在、約2,800件のM&A支援機関が登録されています。各々のM&A支援機関はそれぞれ強みや得意とする領域がありますので、選定の際には以下のサイトを参考にすると良いでしょう。

参考:中小企業庁 M&A登録支援機関制度 登録機関データベース
https://ma-shienkikan.go.jp/search

参考:M&Aプロ
https://malead.co.jp/pro

仲介会社やFAの選定時に考慮することは業界に対する深い知見や担当者の実績です。自社と同様な会社のM&Aの成約の実績がある企業や担当者を選定できると良いでしょう。

M&Aでは交渉が暗礁に乗り上げることもあります。こうした時、問題を突破できるアイデアの有無は大切なポイントです。両社の条件面が折り合わない際の解決方法は、法務(契約書)、財務(価格)、税務(スキーム等)、ビジネス等、多数の切り口があります。解決のためのカードを多数持つ担当者を選択できると良いでしょう。

案件化~マッチング〜意向表明(オファー)

案件化のフェーズでは、なぜM&Aを行うのか、戦略や方向性を明確化します。その上で、自社の特徴や強み、概要をまとめていきます。こうした情報はM&A仲介やFAがIM(Information Memorandam)にまとめます。この際、自社の魅力だけでなくネガティブな側面やリスクについても誠実に開示することが大切です。ネガティブな側面を伏せてM&Aを進めた場合は、信頼関係を毀損し案件が破談するなど大きな問題になりかねません。

続くマッチングのフェーズでは、買い手となる譲り受け側企業の候補先リストを作成します。この候補先リストはロングリストと呼ばれます。ロングリスト作成の際に考慮すべき点は自社を中心として商流の川上と川下といった垂直方向と、自社と同業にあたる水平方向の領域の企業を考えることです。

ロングリストの作成後、候補先の企業に対して売却提案を行い、マッチングを進めていきます。マッチングの際にはM&A仲介会社が保有するネットワークを活用するのも良いでしょう。売り手側は、買い手側がM&Aによってどのような成長戦略を考えているのか、確認することでマッチングを円滑に進められる可能性があります。

候補先の中から自社に興味をもつ企業が現れたらトップ面談です。マッチングの実現後、買い手側は売り手側に対してM&Aの意向表明を行います。

交渉フェーズ


M&A 交渉フェーズは基本合意、デューデリジェンス、契約交渉、プレクロージングフェーズの工程に分かれます。以下に説明します。

基本合意

マッチングの成立後、売り手側は買い手側の買収意向表明書の提示を受けます。この書類には、M&A金額や取引の諸条件、買収後の方針、基本合意から最終でM&Aの成立までのスケジュールやプロセス、想定事項やスキームなどが記載されています。
この買収意向表明書に基づき、双方の意向を基本合意書に落とし込んでいきます。この基本合意書はノンバインディング(法的拘束力を持たない)ものとされる場合が多いですが、独占交渉権を付与する場合は当該条項については、法的拘束力を持たせることが多いので注意が必要です。
買収意向表明書の提示は、買い手側の複数の会社から、同時期に複数社から受領しておくことがポイントです。売り手側は買収の意向を受ける時間軸を揃えておく必要があります。タイミングがずれると、買い手側を待たせてしまうためです。

一方、買い手側は、買収意向表明書の提示の際、魅力的なM&Aのイメージを提示することが必要です。

デューデリジェンス

基本合意書の締結後、デューデリジェンスのプロセスに進みます。デューデリジェンスとは買い手側による、売り手に対する買収、監査調査でM&Aでは極めて重要なプロセスです。デューデリジェンスの目的は売り手側企業が有するビジネス上の機会とリスクを正しく把握することです。対象領域は業種によって異なりますが、法務、財務、労務、税務、ビジネス、環境、技術面等、多方面にわたります。専門的知識が要求される法務、財務、労務面等については弁護士や公認会計士などの専門家に依頼します。

デューデリジェンス(DD)は買い手側から質問リストが送付されます。この質問票には概ねExcelシートで約400〜500項目にわたる大量の質問が記載されています。デューデリジェンス(DD)において、売り手側は誠実に質問票に回答し、等身大で自社のリスクを開示する姿勢が大切です。デューデリジェンスで開示した情報は「真実かつ正確である」旨が表明保証条項にも記載されます。表明保証条項とは、売り手側が買い手側に提示する財務や法務等に関する一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証する書類です。デューデリジェンスの段階で、売り手側が適切な開示をしなかったことが原因で、リスクが明らかにならず、M&A成立後に露見した場合は、契約違反として損害請求の訴訟に発展するケースがあるため、注意が必要です。

デューデリジェンスでは、売り手側企業の社員との雇用契約や外部との業務委託契約、オフィス・店舗などの賃貸契約、取引先との売買契約も確認対象になります。こうした契約は買い手側に引き継がれるため、違反事項の有無、契約の相手先に対する許可や承諾、通知の必要性(CoC条項)について確認が必要です。許可や承諾、通知が必要な場合は、適切なタイミングと適切な伝え方で手当をする必要があります。M&Aの専門家と必ず相談しましょう。

財務面では決算書と帳簿上との齟齬、売掛金の回収状況、口座における小口現金の残高確認など、実態と乖離や齟齬がないか確認されます。

契約交渉

デューデリジェンスの完了後、契約交渉のプロセスに移行します。契約交渉のフェーズで重要な点は契約書の内容を一言一句理解し、条項や条文が意図するところや発生し得るリスクをしっかりと把握することです。契約交渉では、双方の意図が契約書に正しく反映されるように売り手側と買い手側の弁護士を中心として何回もラリーが行われます。

契約書にはクロージングを実行するための前提条件(クロージング・コンディション)が記載されます。この前提条件が確実かつ現実的に履行され、満たされた上で決済が行われます。先述のデューデリジェンスのプロセスで説明した表明保証条項の記載事項に虚偽や違反がないことを保証する必要があります。売り手側が悪意なく違反した場合でも、買い手側は損害賠償を要求する可能性があるので注意が必要です。一方、売り手側は補償のリスクを最小化したいため、補償期間や補償金額の上限を予め定める場合があります。(一般的には、譲渡価格を上限とする、譲渡価格の1/2、30%を上限とするなどとディールサイズに応じて規定することが多いです。)

プレクロージングフェーズ

プレクロージングフェーズとは決済前にクロージング条件を満たすため作業を行うプロセスです。例えば、M&Aの成立に際しては入居しているオフィスや賃貸している店舗に承諾を得ることが該当します。また、株式や会社を譲渡する場合、譲渡する旨の承諾を取る契約を締結することも必要です。プレクロージングフェーズはクロージングの決済に影響するため、チェックリストを作成し抜け漏れが無いように1つひとつ確実に潰していくことが必要です。

M&Aの成功要因


M&Aの成功要因に売り手側と買い手側の相性があります。M&Aは数字のみで判断されるのではなく、経営者の人柄や誠実性や相性が成功要因になるケースは多くあります。またM&Aが成立後の事業の成長性も成功要因の1つです。

売り手と買い手が協調できるベクトルを共有できることも大切な成功要因です。そのためには売り手と買い手の経営者同士が打ち合わせや接触回数を増やし、信頼関係を構築していくことが大切です。

M&Aでのよくある失敗ポイント

先述の様にM&Aには、そもそも売り手と買い手の間に対立ベクトルが存在します。高く売却したい買い手と安く購入したい買い手の思惑は重なりません。交渉が上手く進んでいたとしても売り手と買い手の関係が険悪になり、破談になるケースがあります。対立ベクトルの構造でありながら、売り手と買い手がM&Aの成立を実現するため同じ方向を向いて進めることが必要です。対立ベクトルと協調ベクトルの両立がM&Aの成功には必要です。

まとめ

M&Aにおいて、売り手側の経営者は会社を育て、成長させてきた様に自社に対して人一倍強い思いがあります。特に中小企業では経営者にとって会社は人生の一部とも言える存在です。そうした会社を売却する気持ちに伴走してM&Aを成功させてくれる仲介会社やFAを見つけることが大切になります。

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