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公開日:2024年1月4日
更新日:2024年1月29日

M&Aの手数料はどのくらい?必要な費用や相場を解説!

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M&Aは一般のモノやサービスの売買と異なり企業の売買となるため取引金額が巨額になります。それに応じて手数料の金額も変動します。このコラムではM&Aの手数料の種類や内訳、相場について専門家が具体的に説明します。

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M&Aの手数料の種類

M&Aの手数料は手付金(着手金)、中間金、成功報酬の3つから構成されます。これらの手数料はM&Aのフェーズによって支払いのタイミングが決められています。

手数料はM&A仲介会社によって設定が異なります。手数料が売却額に対して相対金額になるケースと絶対金額になるケースや、着手金がゼロになる場合や成功報酬に含まれるといったケースがあります。

また、着手金・手付金と中間報酬は、M&A成立後に支払う成功報酬に含まれるケースと含まれないケースがあります。成功報酬には株価レーマン方式と移動総資産レーマン方式があります。以下の図に整理して理解するとよいでしょう。

 

M&Aの手数料の内訳の説明図

 

手付金(着手金)

手付金はM&A仲介会社、もしくはFA(Financial Advisor)と仲介契約や提携仲介契約、斡旋仲介契約、 FA契約を締結する時に支払う手数料です。M&A仲介会社によっては手付金を着手金とも呼びます。

M&A仲介会社によっては着手金がある場合とない場合があります。着手金ゼロをうたう会社もある一方で、着手金がある場合は、概ね約100万円から300万円の範囲内に設定されています。着手金がないM&A仲介会社は成功報酬でカバーしている場合があります。

M&Aは成約することが成果となるビジネスです。売り手や買い手の視点では「M&Aが成立していない段階で報酬は払えない」といった考えがあります。M&A仲介会社もこうした点を考慮して着手金をゼロに設定し、成功報酬として請求するケースが多くあります。

一方、着手金があることで「着手金に見合うサービスを提供する」といった考えのM&A仲介会社もあります。売り手や買い手も着手金の対価として、しっかりしたサービスを受ける意識を持つことができます。

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中間金

中間金は基本合意契約という、デューデリジェンス(買収対象企業のリスクやリターンを適正に把握するために事前におこなう調査のこと)の手前のプロセスで発生します。デューデリジェンスの前に、買い手企業から売り手企業に対する意向表明書が発行されます。買い手企業は意向表明書に基づき、売り手企業との独占交渉に進むケースが多いです。このタイミングで基本合意契約を締結し、報酬として中間金を支払います。中間金は成功報酬に対する相対金額もしくは絶対金額で設定されます。

成功報酬

M&Aが無事成立した際に、M&A仲介会社に対して支払うものが成功報酬です。一般的に成功報酬には株価レーマン方式と移動総資産レーマン方式の2つがあります。各々について以下に詳しく説明します。

株価レーマン方式

株価レーマン方式とはM&Aで一般的に適用される成功報酬の算出方式です。この方式はM&Aによって譲渡された株式の譲渡対価を成功報酬の基準とします。株式の譲渡額に対してのみが料率の対象となるので、後述の移動総資産レーマン方式と比べると成功報酬のコストを抑えることができます。株価レーマン方式は成功報酬の基準額=株式譲渡額となります。成功報酬のコストを安く考える場合には、株価レーマン方式を採用する方が良いでしょう。

移動総資産レーマン方式

移動総資産レーマン方式とは、株式の譲渡額に加え、有利子負債だけでなく買掛金や未払金などすべての負債の合計額を報酬基準額とする方式です。成功報酬の基準額=株式譲渡額+すべての負債となるため、支払う成功報酬の額は、株価レーマン方式と比べても高額になります。譲渡側の視点では成功報酬の金額が高くなるため、一般的に移動総資産レーマン方式を適用するメリットはありません。

M&Aの手数料の相場

M&Aの業界慣習として、手数料の料率は成功報酬の基準額によって設定されています。こうした算出基準は一般的に多くのM&A仲介業者で採用されています。

株価レーマン方式の場合

レーマン方式の手数料の料率は取引価格(株式譲渡額)で以下のようになっています。

成功報酬の基準額=株式譲渡額手数料率
5億円以下5%
5億円超〜10億円以下4%
10億円超〜50億円以下3%
50億円超〜100億円以下2%
100億円超1%

移動総資産レーマン方式の場合

移動総資産レーマン方式の手数料の料率は株価レーマン方式と同じですが、対象となる取引価格(株式譲渡額)には全ての負債が合計されます。

成功報酬の基準額=株式譲渡額+全ての負債手数料率
5億円以下5%
5億円超〜10億円以下4%
10億円超〜50億円以下3%
50億円超〜100億円以下2%
100億円超1%

1案件あたりの最低報酬が定められている場合も多い

最低報酬額は大切な確認ポイントです。成功報酬に対して最低報酬額を定めているM&A仲介会社もありますので、選定の際には確認した方が良いでしょう。最低報酬額を定めているM&A仲介会社に依頼する場合、取引価格(譲渡額)によっては最低報酬額が高くなり、手数料割れを起こしてしまうケースがありますので注意してください。

地域や業界による手数料の違い

通常、都市圏と地方圏など地域的な相違による手数料の違いはありません。業界によって手数料が異なることはありませんが、事業形態によっては、株価レーマン方式なのか、移動総資産レーマン方式なのか、どちらを適用する方が適切なのか判断が必要な業界があります。例えば収益不動産の事業です。いわゆる大家として賃貸不動産を営む事業は保有不動産を担保にして借り入れを行い、事業運営をしています。株式よりも借り入れしている負債額が大きいことが多いため、移動総資産レーマン方式によって算出する傾向が高くなります。

M&Aの手数料を安く抑える方法

一般的にM&Aの手数料を安く抑えるためには、株価レーマン方式を適用しているM&A仲介会社を選ぶと良いでしょう。最も大切なポイントは自社の売却金額が手数料負けをしない様にすることです。先述の様にM&A仲介会社によっては独自の最低報酬額を設定しています。この最低報酬額が業界慣習の相場である5%よりも高く設定されているケースがあります。こうしたケースでは売却額によって、手数料割れや手数料負けになってしまう可能性があります。M&A仲介会社を選択する際は、最低報酬額の有無について確認するとよいでしょう。

結局手数料はどのぐらいになるの?

M&Aの手数料がいくらになるのか具体例をあげて計算してみましょう。前提となるのが先述の株価レーマン方式の基準額と手数料率の相関表です。成功報酬を算出する際には、基準額が手数料率のどの範囲に含まれるのか確認する必要があります。

*株価レーマン方式の場合

成功報酬の基準額=株式譲渡額手数料率
5億円以下5%
5億円超〜10億円以下4%
10億円超〜50億円以下3%
50億円超〜100億円以下2%
100億円超1%

*仮に譲渡金額が30億円の場合、適用される料率の内訳は下記の様になります。

成功報酬の基準額=株式譲渡額手数料率譲渡金額の内訳
5億円以下5%5億円
5億円超〜10億円以下4%5億円
10億円超〜50億円以下3%20億円
譲渡金額の合計30億円

具体例1: 譲渡金額が5,000万円の場合

*M&A仲介会社の最低報酬の設定がある前提です。

譲渡金額5,000万円の場合
成功報酬2,000万円
算出方法5億円以下の部分 5,000万円x5%=250万円
最低報酬2,000万円
結論2,000万円>250万円のため、成功報酬は2,000万円

具体例2: 譲渡金額が8億円の場合

譲渡金額8億円の場合
成功報酬3,700万円
算出方法5億円以下の部分     5億円x5%=2,500万円
5億円〜10億円の部分  3億円x4%=1,200万円
2,500万円+1,200万円=3,700万円
最低報酬2,000万円
結論3,700万円>2,000万円のため、成功報酬は3,700万円

具体例3: 譲渡金額が30億円の場合

譲渡金額30億円の場合
成功報酬1億500万円
算出方法5億円以下の部分     5億円x5%=2,500万円
5億円〜10億円の部分  5億円x4%=2,000万円
10億円〜50億円の部分  20億円x3%=6,000万円
2,500万円+2,000万円+6,000万円=1億500万円
最低報酬2,000万円
結論1億500万円>2,000万円のため、成功報酬は1億500万円

手数料以外に発生する費用について

M&A仲介会社に支払う手数料には含まれない費用があります。それは弁護士や公認会計士、税理士などの専門家に依頼するデューデリジェンスに関する費用、弁護士に依頼する最終契約書のチェック、譲渡契約書の作成や確認などに関わる費用、出張に伴う交通費や宿泊費です。こうしたコストは別途見積もっておきましょう。M&A仲介会社はM&A成功やプロセス全体の統括に対する対価を求めますが、上記のような士業に対する費用や実費は含まれていないので、抜け漏れがないように確認しておきましょう。

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