M&Aにおけるソーシングは、M&Aプロセスの初期段階であり、買収や譲渡を希望する企業にとって重要なステップです。本記事では、ソーシングの具体的な手順と、その重要性について詳しく解説していきますので、M&Aにおける成功を左右するこのプロセスを理解し、より効果的な取引を実現するためのポイントを押さえましょう。
目次
M&Aにおけるソーシングは、自社の希望条件に合う譲渡先または買収先の企業を探し、最初の交渉まで進めるプロセスを指します。これは、M&Aの成功を左右する重要な段階であり、プロセス全体の基盤となる部分です。M&Aプロセスは大きく「ソーシング」「オリジネーション」「エグゼキューション」の3段階に分けられ、それぞれが異なる役割を果たします。ここでは、それぞれの段階を詳細に解説します。
ソーシングは、M&Aプロセスの最初のステップであり、買収や売却を希望する企業を見つけ出す作業を指します。ソーシングは、M&Aが成功するか否かを大きく左右するステップであり、この段階で適切な相手を見つけられなければプロジェクト全体が停滞してしまう可能性があります。
具体的な流れは以下の通り、売り手や買い手の希望条件を明確化し、それに基づいて候補企業を絞り込んでいくステップです。
ターゲット企業の選定:売り手企業や買い手企業の条件やニーズをヒアリングし、M&Aアドバイザーが適切なターゲット企業を選定します。ここでは複数の候補が選ばれることが多く、事業規模や財務状況などを基に評価が行われます。
ターゲット企業との交渉:次に、選定された企業との初期的な交渉が始まります。ここでは、売り手と買い手の間にM&A仲介業者が入り、条件交渉を円滑に進める役割を果たします。交渉がうまく進むと、次のオリジネーションの段階に移行します。
オリジネーションは、M&Aプロセスの次の段階であり、ソーシングで見つけたターゲット企業との交渉から、基本合意書を締結するまでの以下のプロセスを指します。なお、オリジネーションにおいて、売り手と買い手のマッチングが最も重要な要素です。双方の条件がうまく一致しなければ、M&Aが成立しないため、この段階での調整が成功の鍵となります。
案件の発掘と調査:売り手と買い手のニーズに基づいて、M&Aアドバイザーが案件を発掘し、調査を行います。具体的には、ターゲット企業の財務状況や事業モデルを精査し、M&Aが効果的であるかについて判断します。
交渉とマッチング:売り手と買い手の条件が合致するかどうかを確認しながら、双方の意見を調整し、M&A戦略を立案します。この段階では、売り手が求める条件と買い手が受け入れる条件のバランスを取りながら交渉を進め、最終的に基本合意書を取り交わします。
エグゼキューションは、M&Aプロセスの最終段階であり、具体的な契約手続きやクロージングを含む以下の一連の実行プロセスを指します。この段階では、法務や財務に関する専門的な知識が求められます。なお、エグゼキューションは、専門家のサポートが不可欠な段階であり、弁護士や会計士が契約内容の精査や法的手続きを担当します。
デューデリジェンス:買い手企業が売り手企業の財務状況や法的リスクを詳細に確認するプロセスです。この段階で問題が発覚した場合、条件の再交渉や契約の見直しが行われることもあります。
最終契約書の締結:デューデリジェンスを経て、双方が合意に達した場合、最終的な契約書が締結されます。この契約書には、買収価格や譲渡条件、今後の統合計画などが明記されます。
クロージング:契約が締結されると、M&Aプロセスが完了し、正式に取引が成立します。このクロージングにより、買い手企業が正式に売り手企業を取得し、M&Aの全プロセスが完了します。
M&Aプロセスの中でも、ソーシング(売り手・買い手の選定)は成功を左右する非常に重要なステップです。この段階での判断が、今後の交渉や獲得できるシナジー効果に大きく関わってきます。
例えば、売り手が従業員の雇用を守りたいと考えている一方で、買い手が事業の再編成を求めている場合、最終的に合意に至らない可能性があります。逆に、双方のニーズが合致していれば、交渉がスムーズに進み、取引後の統合も成功しやすくなります。
このように、M&Aの成功には、適切な企業とのマッチングが必要不可欠であることから、M&Aの初期段階で行われるソーシングが、後の交渉やPMIの成否に直結するとも考えられるでしょう。
上述の通り、M&AのソーシングはM&Aの初期段階に始まりますが、この段階ではM&Aを実施するかどうかの判断が下されることで、具体的な計画が進み始めます。そのため、このタイミングで、M&A仲介会社や専門家に相談していくとよいでしょう。仲介会社に依頼する際は、企業の目的や条件を明確に伝えることで、適切な提案やアドバイスを得ることが可能です。
ソーシングの過程では、まず「秘密保持契約」を締結します。この契約は、企業情報を保護し、外部への漏洩を防ぐためのものです。次に、「アドバイザリー契約」を結び、正式に仲介業務を依頼します。これにより、M&Aの手続きが本格的に始まり、仲介会社が自社に最適な買収候補を選定し、企業価値を評価します。選定が進むと、候補企業への提案書が作成され、交渉段階に進みます。
M&Aソーシングは、企業が適切な買収対象を選定し、交渉を進めていくプロセスです。この流れを効率的に進めることで、M&Aの成功確率が高まります。具体的な手順を詳しく解説していきます。
M&Aソーシングの第一歩は、M&Aを実施する目的を明確にすることです。企業によってM&Aの目的は異なり、後継者不在の解消、事業の成長、新たな市場への進出、従業員の雇用維持などが主な理由となります。この段階では、どのような条件であれば成功といえるかを明確に定義することが重要です。
たとえば、買収の目的が事業規模の拡大であれば、ターゲット企業にはその事業領域の成長性が求められます。一方、従業員の雇用維持が最重要課題であれば、価格面での譲歩が可能なケースもあるため、条件設定に優先順位をつける必要があります。
次に行うのが、候補となる企業の情報収集です。業界での傾向や市場の動き、競合他社の状況を分析し、自社の条件に合った企業を見つけ出します。このプロセスでは、M&Aアドバイザーや業界専門家の助けを借りることで、適切な企業を効率よく探すことが可能です。
具体的には、財務状況やビジネスモデル、成長性などの要素を考慮しながら、どの企業が自社の目的に最適であるかを評価していきます。この情報収集は、後に続くリスト作成や交渉をスムーズに進めるための基礎となります。
候補企業を選定する過程で、まずは「ロングリスト」を作成します。これは、条件に合致する企業を幅広くピックアップしたリストで、数十社から百社程度が選ばれることが一般的です。この段階では、広範囲に候補を洗い出し、企業の基本情報や財務状況を把握します。
次に、ロングリストから絞り込んだ「ショートリスト」を作成します。ここでは、候補企業の数をさらに5~10社程度に絞り込み、詳細な分析を行います。ショートリストに記載される企業は、M&Aの目的や条件により厳密に合致する企業であり、最終的にアプローチする対象となります。
作成されたショートリストをもとにして、最終的な候補企業の選定を行います。この段階では、リストに残った企業の成長性やシナジー効果、財務状況をさらに詳しく調査し、M&Aによるメリットが最大化できるかどうかを判断します。多くの企業を残すと交渉に時間がかかるため、5社以内に絞り込むことが推奨されます。
最後に、候補企業との具体的な交渉に移ります。M&Aの交渉は機密保持が重要であるため、最初は「ノンネームシート」と呼ばれる匿名資料を使って企業にアプローチします。候補企業がM&Aに前向きな姿勢を見せた場合、秘密保持契約を締結し、より詳細な情報を共有した上で具体的な交渉を進めます。
交渉では、価格や条件だけでなく、M&A後の経営方針や従業員の待遇なども話し合いの対象となるため、双方の合意が得られるまで慎重に進めていくことが求められます。
M&Aを成功させるためには、適切なソーシングが非常に重要です。ここでは、M&Aソーシングを行う際に押さえておくべきポイントについて、具体的に解説します。
ソーシングにおいて、既存の人脈は非常に大きな武器になります。もし、信頼できる人物との繋がりがある場合、その人に企業を紹介してもらうのが有効です。信頼できるネットワークを活用することで、無駄な手間や時間を省き、スムーズにアプローチを進めることが可能です。
ただし、繋がりがある場合でも、その人物がどの程度信頼できるかをしっかりと見極める必要があります。信頼性が低い相手の場合、情報が不正確だったり、秘密が漏れてしまったりするリスクもあります。そのため、紹介を依頼するかどうかは慎重に判断し、必要に応じて他のアプローチを検討することが大切です。
繋がりがない場合は、infoメールや電話を活用して企業に直接アプローチすることが有効です。積極的に連絡を取り、可能な限り多くの選択肢を模索します。この際、自社が上場企業であったり、信頼性の高い企業である場合は、その点を強くアピールすることが重要です。企業に対して、信頼できるパートナーとしての印象を与えることで、交渉が円滑に進む可能性が高まります。
また、初回のアプローチで「買収したい」と直接言うのは避けたほうが良いでしょう。最初は「提携の相談をしたい」という表現を使うことで、企業との対話の糸口を掴むことができます。特に、資本提携の可能性についても言及すると、より具体的な話に発展する可能性が高まります。ただし、資本提携に興味がない企業も存在するため、アポ率が減る可能性もあります。そのため、初回のアプローチの段階では、資本提携の可能性も慎重に検討し、状況に応じた柔軟な対応が必要です。
M&Aソーシングを進める際には、自社がM&Aを通じて何を達成したいのかを明確にすることが非常に重要です。売り手側でも買い手側でも、それぞれが異なる目的を持っています。後継者問題の解決や事業拡大、人材の確保といった具体的な目標が定まっていないと、適切な相手企業を見つけることは困難です。さらに、目的が曖昧だと、仲介会社もどの企業をターゲットにすべきかを判断できません。したがって、最初の段階で目的を明確に設定し、それに基づいて戦略を立てることが必要です。
M&Aソーシングの成功には、適切な外部パートナーの選定が不可欠です。特に、仲介会社を利用する場合は、自社の業種や規模に特化した仲介会社を選ぶことがポイントです。M&Aに精通し、業界や地域に強いパートナーを選ぶことで、より効果的な情報収集や交渉が期待できます。また、過去の実績や成功事例も確認し、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。
M&Aプロセスを進めるにあたり、特に注意が必要なのは情報漏洩です。M&Aに関する情報が外部に漏れてしまうと、企業価値が下がったり、取引先や従業員に悪影響を及ぼす可能性があります。仲介会社やアドバイザーとの間で必ず秘密保持契約を締結し、情報管理を徹底することが不可欠です。また、社内でも情報共有には慎重を期し、関与するメンバーを最小限に抑えることが望ましいです。
M&Aソーシングには大きく分けて「プル型」と「プッシュ型」の2つの種類があります。それぞれの方法には異なる特徴があり、目的や状況に応じて適切な手法を選ぶことが重要です。以下、各ソーシング方法のメリットや注意点を詳しく解説します。
プル型ソーシングとは、M&A仲介会社や専門のアドバイザーに依頼し、適切な候補企業を紹介してもらいながらM&Aを進める方法です。専門家のサポートを得ることで、売り手と買い手のマッチングが効率よく行われ、スムーズに交渉を進められますが、注意すべきポイントもいくつかあります。そこで、メリットと押さえておきたいポイントを解説していきます。
メリットの1つ目は、専門家のサポートを受けられる点です。M&Aの経験が少ない企業でも、仲介会社がサポートすることで、取引の進行がスムーズになります。その結果、専門家のサポートを受けることができ、専門知識を持ったアドバイザーのサポートが受けられるため、法務や税務、デューデリジェンスなどの複雑なプロセスも安心して進めることができます。
2つ目のメリットは、多くの候補企業から選べる点です。仲介会社は、広範なネットワークを持っており、多くの売り手・買い手候補を持っています。これにより、自社の希望条件に合った企業を見つけやすく、交渉の選択肢が広がります。
プル型ソーシングの注意すべきポイントの1つ目は、自社の希望や目的を明確に伝える必要があることです。どんなに優秀な仲介会社でも、企業の希望や目的が不明確では、取引が思うように進まないことがあります。事前にしっかりと目的や条件をまとめ、仲介会社と共有することが重要です。
2つ目のポイントは、費用が発生することです。専門家を利用するため、仲介会社への手数料やアドバイザーのフィーが発生します。予算に余裕を持っておく必要があります。
プッシュ型ソーシングは、仲介会社を通さず、自社で直接M&Aの対象企業を探し、交渉を進める方法です。自社のネットワークや営業力を活用し、自発的にアプローチしていくため、仲介手数料が不要であり、スピード感を持って進められる点が特徴です。プッシュ型ソーシングについても、プル型ソーシングとは異なるメリット、押さえておくべきポイントがありますので、詳しく解説していきます
プッシュ型ソーシングのメリットとして、費用を抑えられる点が挙げられます。仲介会社に依頼しないため、手数料などの費用を削減できます。特に、仲介費用が高額になることが多いため、自ら動ける企業にとってはコストメリットが大きいです。
2つ目のメリットは、迅速な交渉が可能となることです。企業間で直接やり取りを行うため、仲介者を介する必要がなく、スピード感のある交渉が可能です。これにより、迅速に合意に至る場合もあります。
続いて、プッシュ型ソーシングの注意すべきポイントとしては、候補企業の選択肢が限られる点です。自社のネットワークや情報源だけでは、仲介会社が持つ広範なリストに比べて、候補企業の数が限られることが多いです。そのため、理想の企業に出会う可能性が低くなるリスクがあります。
また、専門知識が不足していると問題が生じることも考えられます。M&Aには、法務、税務、スキーム選定、契約書作成など、専門的な知識が求められる場面が多々あります。自社にその知識が不足している場合、進行がスムーズにいかず、リスクが高まる可能性があります。
本記事では、M&Aにおけるソーシングの概要や具体的な流れ、成功させるために押さえておくべきポイントなどについて解説してきました。
M&Aにおけるソーシングは、取引成功の鍵を握る重要なプロセスです。適切な企業の選定や交渉が行われることで、M&A後のスムーズな統合やシナジー効果を最大限に引き出すことができます。特に、中小企業や事業拡大を目指す企業にとって、ソーシングは成功への第一歩です。
この記事が、M&Aを検討している経営者の方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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