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公開日:2024年10月29日
更新日:2024年10月29日

不動産M&Aとは?買い手・売り手のメリット・デメリット、税金を詳しく解説!

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不動産を保有する企業や投資家にとって、不動産M&Aは大きな節税効果を期待できる手法です。この記事では、不動産M&Aの基礎からそのスキーム、さらには売り手・買い手双方にとってのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

不動産M&Aを検討している経営者や投資家、さらに、効率的な資産売却を目指す企業オーナーに向けて、税制上の利点や手続きの注意点を踏まえた具体的なポイントを解説していきます。

不動産M&Aとは

不動産M&Aとは、企業が保有する不動産を取得することを目的に、対象企業自体をM&Aで買収する手法を指します。通常のM&Aでは企業の事業や経営権が主な目的となりますが、不動産M&Aでは、その企業が保有する不動産が中心的な目的です。不動産の直接売買ではなく企業を買収する形を取ることで、税制面などのメリットが享受できる点が特徴です。

一般的に、譲渡企業が所有する不動産を直接購入する際には不動産取得税や登録免許税などが課税されますが、不動産M&Aを行う場合、譲渡されるのは不動産ではなく株式のため、譲渡に伴う税負担が軽減されるのが大きな利点です。この手法は特に、不動産管理会社や廃業を検討する企業が所有する不動産を効率的に取得する際に活用されます。

不動産M&Aのスキーム

不動産M&Aには主に2つのスキームがあります。それぞれの特徴や流れについて詳しく見ていきましょう。

株式譲渡による不動産M&A

株式譲渡による不動産M&Aの仕組みを図解した画像です。詳細は下記でご確認ください。

株式譲渡による不動産M&Aは、対象企業の株式を買収企業が取得することで、その企業を完全子会社化し、不動産を間接的に所有する手法です。この場合、企業の全株式を取得するため、買い手は不動産のみならず、企業が所有する資産や負債もすべて引き継ぎます。

このスキームのメリットは、企業ごと買収することで、後から不動産を自社に移転させる際に発生するコストや税負担を軽減できる点です。一方で、企業が抱える簿外債務や訴訟リスクなども引き継ぐ可能性があるため、買収前のデューデリジェンスが重要です。買収後は、必要に応じて不動産を分割し、他の事業を整理・清算することも多いです。

会社分割による不動産M&A

会社分割を活用した不動産M&Aを解説した図解です。詳細は以下テキストでご確認ください。

もう一つの手法は、会社分割を利用するスキームです。この方法では、売り手企業が事業を分割し、不動産のみを新設会社に移転させたうえで、その新設会社を買収する形を取ります。会社分割を用いることで、買収企業は不動産に関わる資産と負債のみを取得でき、他の不要な資産やリスクを引き継がずに済むため、取引がシンプルになります。

また、このスキームは、組織再編税制の特例措置を適用することができ、節税効果を得られる可能性があるため、税制面での利点も大きいです。不動産M&Aを検討する際には、買収する不動産の性質や企業全体の状況に応じて、どちらのスキームが適切かを慎重に判断することが求められます。

不動産M&Aのメリット

不動産M&Aには、売り手と買い手の双方にとって大きなメリットが存在します。それぞれの立場で得られる利点を、具体的なポイントに分けて解説していきます。

不動産M&Aのメリットを売り手側・買い手側それぞれ表にまとめています。詳細は以下テキストでご確認ください。

売り手側のメリット

まずは、売り手側のメリットを3つ解説します。

大幅な節税効果

不動産M&Aの最大のメリットは、通常の不動産売却に比べて大幅な節税ができることです。通常の不動産売却では、売却益に対して法人税や所得税がかかるのに対し、不動産M&Aでは株式譲渡の形式を取るため、課税率が低く抑えられる傾向があります。これにより、最終的な手元に残る金額が多くなるため、資産の整理を進めたい企業にとっては非常に有利な選択肢です。

廃業コストの削減

廃業には、設備や在庫の処分、事務手続き、専門家への依頼費用など、さまざまなコストが発生します。しかし、不動産M&Aを活用することで、会社全体を譲渡するため、こうした廃業にかかるコストを削減することが可能です。特に、小規模な企業では、こうしたコストの削減が経済的なメリットとなります。

雇用維持の可能性

通常の廃業では従業員の解雇が避けられませんが、不動産M&Aを通じて買い手企業が継続して事業を運営する場合、従業員の雇用が維持される可能性があります。これは、企業の社会的責任を果たしつつ、廃業に伴う社会的な影響を軽減する手段としても重要です。

買い手側のメリット

続いて、売り手側のメリットを2つ解説します。

不動産を割安に取得できる

不動産M&Aを通じて取得する不動産は、通常の市場取引よりも割安になるケースがあります。これは、売り手側が節税効果を見込んで価格交渉に柔軟に応じるためです。特に、自社ビルや事業用不動産など、通常の市場には出回らないような不動産を取得するチャンスも広がります。

市場に出回らない物件を取得できる

不動産M&Aでは、通常の売買市場には出ないような物件が対象となることが多くあります。これにより、魅力的な投資機会や事業拡大に必要な物件を、他の競合を避けつつ取得できるというメリットが得られます。

不動産M&Aのデメリット

一方で、不動産M&Aには、売り手と買い手それぞれにとってデメリットも存在します。事前にこれらのデメリットを把握し、リスク管理を徹底することが成功の鍵となります。

不動産M&Aのデメリットを売り手側・買い手側それぞれ表にまとめています。詳細は以下テキストでご確認ください

売り手側のデメリット

まず、売り手側の主なデメリットを3つ解説します。

買い手を見つけるのが難しい

不動産M&Aのデメリットの一つは、適切な買い手を見つけるのが難しいことです。通常の不動産取引とは異なり、企業全体の譲渡が必要となるため、守秘性の高いプロジェクトに対応できる信頼できる買い手を見つけるまでに時間がかかる場合があります。

手続きに時間と手間がかかる

不動産M&Aは、交渉開始からデューデリジェンス、基本合意、成約に至るまで、多くのステップを踏む必要があり、通常の不動産売却と比べると手続きが複雑です。最低でも半年から1年程度の時間がかかることが多く、スケジュールの余裕を持つことが求められます。

専門家への依頼コストが高額になる

M&Aのプロセスでは、専門家による仲介やデューデリジェンスが不可欠です。こうした専門サービスの依頼には高額なコストがかかる場合があり、特に中小企業にとっては負担となる可能性があります。最終的な売却額とのバランスを見ながら、適切なコスト管理が必要です。

買い手側のデメリット

続いて、買い手側の主なデメリットを2つ解説します。

売り手企業のリスクを引き継ぐ可能性がある

不動産M&Aでは、単に不動産だけでなく、売り手企業の事業全体を引き継ぐため、その企業の抱える簿外債務や将来的なリスクも継承する可能性があります。例えば、未払いの税金や隠れた債務が発覚した場合、買い手側に大きな負担が発生することがあります。

手続きが複雑で時間がかかる

M&Aプロセス全体には時間がかかり、特にデューデリジェンスなどの詳細な調査には多くの手間が必要です。買い手側としても、これに伴う専門家の費用や長期的な時間の確保が求められるため、事前に十分な準備が必要です。

不動産M&Aに関する税金

不動産M&Aでは、売買に関わる税制が通常の不動産売却とは異なり、節税効果が期待できるため、企業にとって有利なスキームとなることが多いです。しかし、適用される税金の種類や範囲は複雑で、売り手・買い手双方にとって注意が必要です。ここでは、不動産M&Aに関する税金の概要について解説します。

不動産の売買にかかる税金

まずは、不動産の売買にかかる税金です。

売り手側の課税に関しては、通常の不動産売却において、売却益に対し法人税や地方法人税、法人住民税、法人事業税が課されます。これらの税率は、合計でおよそ30%〜34%に達します(会社の規模や所在地によって変動)。土地の取引には消費税はかかりませんが、建物には消費税が課されるため、建物を含む取引ではさらに負担が増えることになります。

続いて、買い手側の課税に関しては、不動産取得税が課されます。税額は不動産の購入価格ではなく、固定資産評価基準に基づく評価額に対して3%〜4%の税率を掛けて計算されます。また、買い手は所有権移転登記を行う必要があり、登録免許税として通常2%が課されます。さらに、司法書士に登記を依頼する場合、その手数料も必要です。また、不動産売買契約には印紙が必要であり、印紙税も発生します。通常、印紙税は売り手と買い手で折半されることが一般的です。

会社清算にかかる税金

企業を廃業して会社を解散する場合、資産を処分して換金し、残った財産を株主に分配する清算手続きを行います。この際、資産の売却で得た利益には法人税などがかかります。通常、税率の合計は30%〜34%です。土地や有価証券など非課税対象を除いた取引には消費税も課されます。

さらに、残余財産を株主に分配する段階で、株主には所得税が発生します。所得税の税率は、その年の総所得額に応じて変動し、高額所得者ほど税率は高くなります。例えば、課税所得が900万円以上の場合、所得税率は33%に達します。これにより、最終的に株主の手取り額が大幅に減少することがあります。

株式譲渡による不動産M&Aの税金

不動産M&Aの主要な手法である株式譲渡に関する課税について、売り手側にかかる税金は、株主の譲渡所得に対する申告分離課税の20%のみです。株式譲渡では消費税や印紙税は不要です。株主の譲渡所得は、株式譲渡対価から株式取得時の手数料などの必要経費を差し引いた金額で算出されます。

株式譲渡スキームでは、通常の不動産売却と比較して、税負担が大幅に軽減されるため、最終的な手取り額が増えることが多く、これが不動産M&Aを活用する大きな理由となります。

続いて、買い手側の課税についてですが、M&Aを行う時点では、買い手側に特に課税は発生しません。しかし、不動産を将来売却する場合、売却益に対して法人税が課されるため、これを考慮してM&Aを進める必要があります。また、M&A後に子会社を清算する場合、100%の親子関係がある企業間での譲渡は課税されません。

新設分割による不動産M&Aの税金

新設分割を用いる不動産M&Aでは、資産や負債の譲渡損益に対する法人税や、不動産取得税が発生する可能性があります。しかし、組織再編税制に基づく適格要件を満たす場合、これらの税金が非課税となることがあります。なお、適格要件を満たすための条件は以下の通りです。

・分割事業の主要な資産が新設会社に移転すること
・分割事業が新設会社で継続して行われること
・分割事業に従事していた従業員の80%以上が新設会社に引き継がれること

これらの条件が満たされない場合、不動産取得税や法人税などの負担が発生します。

税制上のリスクと注意点

不動産M&Aを進める上で、いくつかの税制上のリスクや注意点があります。特に、株式譲渡が「短期所有土地の譲渡」と見なされる場合、通常の譲渡所得税率の倍近い税率が適用されることがあります。所有資産の70%以上が短期間で取得された土地の場合、株式譲渡ではなく土地譲渡と見なされ、より高い税負担が発生します。

また、「租税回避行為防止規定」に基づき、不動産M&Aのスキームが税逃れと見なされる場合、税務調査で否認されるリスクがあります。したがって、税制上のメリットを享受するには、慎重にスキームを検討し、専門家の助言を得ることが重要です。

不動産M&Aの事例

不動産M&Aは、企業同士が戦略的に成長を目指すための手法として広く活用されています。ここでは、不動産業界における具体的なM&A事例を紹介し、各事例の背景やポイントについて詳しく解説します。

株式会社AVANTIAによるドリームホームグループの買収

株式会社AVANTIAは、2021年4月に京都で戸建住宅事業を展開するドリームホームグループを子会社化しました。この買収の背景には、AVANTIAが主に東海エリアで戸建事業を展開しており、関西エリアへの事業拡大を目指していた点があります。ドリームホームグループは、京都府内での戸建住宅供給においてNo.1の実績を持ち、これによりAVANTIAは関西エリアでのプレゼンスを高めることに成功しました。

なお、この事例は、地域に強みを持つ企業を取り込むことで、地理的な拡大を図るM&Aの成功事例と考えられます。買収後のシナジー効果により、AVANTIAはさらなる成長を見込んでいます。

ハウスコム株式会社による宅都の買収

ハウスコム株式会社は、2021年3月に大阪市を中心に不動産賃貸仲介事業を展開する宅都を会社分割により買収しました。このM&Aの目的は、関西エリアでの店舗数を増やすことにあり、宅都の買収により、ハウスコムは関西エリアでの事業展開を強化しました。また、宅都を傘下に入れることで、社員数の増加や人材育成の強化も進めています。さらに、ハウスコムは2019年にもエスケイビル建材を買収しており、M&Aを通じて事業拡大を積極的に進めている企業です。

人材確保やエリア拡大を目的としたM&Aにより、地域戦略を強化しつつ、組織の拡充にも成功しています。

まとめ

本記事では、具体的なスキームや税制面での利点、リスク管理について詳しく解説しました。

不動産M&Aは、売り手・買い手の双方にとって大きなメリットを提供する一方で、リスクや注意すべき点も多く存在します。不動産を効率的に取得・売却したい企業や投資家にとって、不動産M&Aは有力な手法となりますので、正しい理解と専門家の助言を活用し、最適な判断をすることが成功の鍵となるでしょう。

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