株式譲渡を行う際、適切な議事録の作成は法律遵守やトラブル回避の観点から極めて重要です。本記事では、株主総会議事録や取締役会議事録の基本的な役割から、記載すべき項目、具体的な記載例、さらには作成時の注意点までを詳しく解説します。今後、株式譲渡を検討する経営者や担当者の方に向けて、法的リスクを回避しつつ、円滑な手続きのために必要となる内容をまとめていますので、是非参考にしてください。
株式譲渡の基本的な概要については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらも合わせてご覧ください。
→株式譲渡とは?方法・手続き・税金・中小企業特有の注意点を解説
目次
株式譲渡を進める際には、適切な議事録の作成が欠かせません。会社法では、株式の自由な売買を基本としつつ、非公開会社においては譲渡制限を設けることが一般的です。この制限により、株主総会の決議や取締役会の承認を経て初めて譲渡が可能になります。議事録はこうした手続きが適正に行われた証拠として、後日の確認や法的手続きで重要な役割を果たします。
議事録を正確に作成し保管することは、会社のコンプライアンス体制の強化やトラブル回避に直結します。議事録は、正当な株式譲渡を証明するだけでなく、後日発生する可能性のある法的紛争を未然に防ぐ役割を担っています。例えば、譲渡の有効性や承認手続きの適法性が問われた場合において、議事録を残していることでトラブルを回避することができます。
株主総会議事録は、株主総会での決議内容を記録したもので、非公開会社の多くが対象となります。特に取締役会が設置されていない場合、株主総会で株式譲渡の承認を得る必要があります。なお、会社法によって、株主総会議事録の作成は義務化されており、開催日時や場所、決議内容が詳細に記録されます。議事録の作成方法は書面または電磁的記録のどちらでも可能で、会社の事情に応じて選択できます。議事録の保管については、本店で10年間、支店がある場合は5年間写しを保管することが法で定められています。
取締役会設置会社では、株式譲渡を行うためには取締役会の承認決議が必要となります。この場合、取締役会議事録を作成します。議事録には、議事の進行状況や決議内容が記録され、法的証拠としての役割を果たします。議事録の作成時には、書面の場合は押印、電磁的記録の場合は電子署名が必要です。作成後の議事録は、本店にて10年間保管する義務があります。
会社売却や事業承継など、M&Aに関するお悩みは、ぜひM&A Leadへご相談ください。
当社は「完全成功報酬制」を採用しており、譲渡が成立し譲渡対価が入金されるまでは一切料金をいただきません。お気軽にご相談いただけます。
また、知識・支援実績豊富なアドバイザーが多数在籍しており、ご相談からクロージングまで、売主様に徹底的に寄り添いサポートいたします。
さらに、当社のアドバイザーだけでなく、当社が運営するM&Aアドバイザー紹介プラットフォームにご登録いただいているM&Aアドバイザー様のネットワークも活用可能なので、どのような業界・業種の案件にもご対応可能です。
当社はこの強みをフルに活用して、M&Aをお考えのオーナー様に徹底的に寄り添い、売却成功までサポートいたします。
無料相談は随時お受けしておりますので、お電話・Webよりお気軽にお問い合わせください。
株式譲渡の承認手続きの流れの中では、適法性や正当性を証明するために、株主総会や取締役会での議事内容を正確に記録した議事録が求められます。議事録は、登記申請や契約締結時に証拠として使用されるほか、裁判や株主からの請求に対応するためにも必要です。ここでは、株式譲渡の承認において議事録が求められる場面について詳しく解説します。
株式譲渡契約書を締結する際には、譲渡制限株式の承認が取られていることを証明するための議事録が必要です。株式譲渡契約書には、譲渡に至るまでの条件や株式の詳細、代金の支払い方法などが記載されます。この契約書には、譲渡制限が解除され、取締役会や株主総会で承認が得られたことを示す議事録の添付が求められます。議事録の不備や未作成がある場合、契約自体の有効性が疑われることにもなりかねません。したがって、契約締結時には、正確かつ適切に作成された議事録が必須となります。
株式譲渡が完了した後、株主名簿や登記事項に変更が生じる場合は、法務局に変更登記を申請しなければなりません。この登記手続きには、株主総会または取締役会の議事録が添付資料として求められます。議事録には、譲渡に関する承認内容や決議事項が記録されているため、法務局はこれを基に変更内容の妥当性を判断します。申請は株式譲渡が完了してから2週間以内に行う必要があり、議事録の記載ミスや内容の不一致があると補正が必要となります。適切な議事録の作成は、スムーズな登記手続きを進める上でも重要です。
株式譲渡が承認されなかった場合や価格の妥当性に関して争いが生じた場合には、裁判所での対応が求められることがあります。このような場合、議事録は承認プロセスや決議内容を証明する重要な証拠書類となります。議事録が存在しない場合や不正確な記録がある場合には、作成者や会社側が不利な立場に立たされる可能性があります。また、裁判所に提出する株式買取価格決定申立書には、議事録が必ず添付されるため、正確で信頼性の高い議事録を作成することが求められます。
議事録は、株主が会社の透明性を確保するために重要な権利として閲覧を請求することができます。特に、株主からの請求があった際には、株主総会の議事録を必ず開示する必要があります。閲覧請求を拒否した場合、会社の代表者に過料が課される可能性があります。これは取締役会の議事録にも当てはまることであり、裁判所の許可があれば閲覧や謄写を求められる場合があります。このような場合に備え、正確な議事録を作成し、株主総会議事録であれば10年、取締役会議事録であれば5年間は必ず保管しておかなければなりません。
株主総会議事録は、株式譲渡を含む会社の重要な意思決定を記録するための文書であり、会社法に基づいて作成が義務付けられています。議事録に不備があると、承認事項の効力が疑われたり、法的手続きがスムーズに進まなかったりする可能性があります。議事録には定められた項目を正確に記載し、会社運営の透明性を担保することが求められますので、議事録を作成する際には注意が必要です。今回は、株主総会議事録に記載すべき具体的な項目及びその記載例を解説していきます。
議事録には、株主総会が実施された日時と開催場所を明記する必要があります。この情報は、会議が適切に開催されたことを証明する基礎的なデータとなります。日時は具体的に記載し、場所についても詳細に記述します。例えば、ビル名や会議室の名前、さらには住所まで含めることで、正確性を担保します。
【記載例】
開催日時:令和〇年〇月〇日(〇曜日)午後〇時〇分から午後〇時〇分
開催場所:東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地〇号(当社本社第〇会議室)
出席した株主の数や、その議決権の状況を記載します。これは、議決の正当性を裏付けるための重要な情報です。発行済株式総数や議決権を行使できる株主数、出席株主数、そして出席者が持つ議決権の合計数などを明確に記述します。不備があると、総会での決議が無効とされるリスクが生じます。
【記載例】
株主総数:〇〇名
発行済株式総数:〇〇〇株
議決権を行使できる株主数:〇〇〇名
議決権を行使できる株主の議決権総数:〇〇〇個
出席株主数(委任状含む):〇〇〇名
出席株主の議決権総数:〇〇〇個
株主総会に出席した役員の氏名だけでなく役職も記録する必要があります。この情報は、会議が適法に運営されたかを証明する上で重要です。すべての出席者をもれなく記載し、必要に応じて役職も明記します。
【記載例】
出席役員:取締役〇〇〇、監査役〇〇〇
議長および議事録作成者の名前も記載します。通常、議長は代表取締役が務めることが多く、議事録作成者はその議長が兼務する場合もあります。議事録作成者は、議長の任命を受けて記録を担当する役員が適任です。
【記載例】
議長:代表取締役〇〇〇
議事録作成者:取締役〇〇〇(議長と兼ねる場合は「および」を使用して記載)
株主総会で議論された内容やその決議結果を記録します。議事録には総会の開始から閉会に至るまでの流れを簡潔かつ明確に記述することが求められます。議事の経過については概要を記載し、すべての発言を記録する必要はありません。ただし、株式譲渡承認請求については詳細に記載し、その審議結果を明確に示します。
【記載例】
議長は、株主譲渡承認請求書が提出されている旨を説明し、承認の是非について慎重に審議を行った。その結果、出席株主の満場一致により株式譲渡を承認可決した。
取締役会議事録においても、株主総会議事録同様、会社の重要な意思決定が行われたプロセスを明確に記録する法定文書にあたり、会社法に基づいて作成され、将来の法的トラブルを未然に防ぐための重要な証拠書類となります。
株式譲渡を承認する場合、この議事録は取引の適法性を証明するため、また登記申請時の添付書類として使用されます。正確で網羅的な記録が求められるため、記載すべき項目について、正確に理解し必要な情報を明記する必要がありますので、各項目について詳しく解説していきます。
取締役会の議事録には、開催日時と場所を正確に記載する必要があります。日時は年、月、日、曜日、さらには開始時刻から終了時刻までを分単位で明記します。開催場所についても具体的に記載し、会議室の名称や住所まで含めることが推奨されます。
【記載例】
開催日時:令和〇年〇月〇日(〇曜日)午後〇時〇分から午後〇時〇分
開催場所:東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地〇号(本社第〇会議室)
取締役会に出席した取締役および監査役の氏名と役職を記載します。これにより、会議が適法に成立したことを証明します。出席者の記載漏れがあると議事録の信頼性に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
【記載例】
出席者:取締役 〇〇〇、△△△、□□□
監査役:〇〇〇、△△△
議長の役職および氏名を明記します。通常、議長は代表取締役が務めますが、会社の規定や慣例に基づいて異なる場合もあります。議長を置かなかった場合、この項目の記載は不要です。
【記載例】
議長:代表取締役 〇〇〇
取締役会で審議された議案の概要、議論の経過、およびその決議結果を簡潔かつ明確に記載します。特に株式譲渡に関する議案では、譲渡請求書の内容や承認結果を正確に記録することが求められます。ここでは全ての議論を詳細に記録する必要はなく、要点を押さえた記述で十分です。
【記載例】
議長は、株主〇〇〇より提出された株式譲渡承認請求書について説明し、審議を行った。慎重な討議の結果、出席者全員の賛成により本件を承認可決した。
株式譲渡における議事録の重要性や記載すべき内容などについて解説してきましたが、最後に株式譲渡の議事録を作成する際に押さえておくべき重要なポイントや注意事項について詳しく解説します。
議事録に記載する内容は正確性が最も重要となります。議事録に記載する日時、場所、出席者、議事の経過および決議内容は、すべて事実に基づき、正確に記載する必要があります。特に日付や時間を誤ると、虚偽記載と見なされる恐れがあり、議事録全体の信頼性が損なわれます。
加えて、議事録の内容が実際の議事と一致していない場合、法的トラブルの原因となる可能性があります。訴訟が発生した際、議事録が事実と見なされることが多いため、齟齬がないよう慎重に確認しましょう。
また、議事録の作成は会社法および定款に従って行う必要があります。議事録作成者や署名者について、定款で特別な規定がある場合は必ず確認し、それに従って作成しましょう。
株主総会や取締役会の議事録は、法務局などが提供している雛形を活用することで効率的に作成できます。これにより、基本構造や項目が漏れるリスクを軽減し、時間を短縮できます。ただし、雛形をそのまま使用するのではなく、自社の事情や個別の審議内容に応じて適切に修正を加える必要があります。特に、出席者の情報や議案の内容などを正確に反映させることが重要です。
会社法では議事録への署名・押印は必須ではありませんが、定款で署名・押印が義務付けられている場合は、押印・署名を怠ると議事録が無効となる可能性があります。議事録作成者や議長の署名・押印を漏れなく行いましょう。なお、署名や押印は法的要件を満たすだけでなく、文書の信頼性を高める役割も果たします。特にトラブルの予防の観点からも、署名・押印を行うことが推奨されます。
株式譲渡の議事録は、株主総会や取締役会終了後、速やかに作成する必要があります。特に、登記申請には変更発生日から2週間以内に議事録を添付する必要があるため、作成遅延がないよう注意が必要です。
議事録の保管期間については、下記の通り法定の保管期間を守ることが義務付けられています。適切な保管が行われない場合、法令違反となるため、注意が必要です。
株主総会議事録:本店で10年間、支店では写しを5年間保管
取締役会議事録:本店で10年間保管
議事録作成が初めての場合や複雑な内容を含む場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することを検討しましょう。専門家の助言を得ることで、正確性や法的適合性を担保できます。特に、内容に関して不備や解釈の違いが生じる可能性がある場合には、専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えられます。
会社売却や事業承継など、M&Aに関するお悩みは、ぜひM&A Leadへご相談ください。
当社は「完全成功報酬制」を採用しており、譲渡が成立し譲渡対価が入金されるまでは一切料金をいただきません。お気軽にご相談いただけます。
また、知識・支援実績豊富なアドバイザーが多数在籍しており、ご相談からクロージングまで、売主様に徹底的に寄り添いサポートいたします。
さらに、当社のアドバイザーだけでなく、当社が運営するM&Aアドバイザー紹介プラットフォームにご登録いただいているM&Aアドバイザー様のネットワークも活用可能なので、どのような業界・業種の案件にもご対応可能です。
当社はこの強みをフルに活用して、M&Aをお考えのオーナー様に徹底的に寄り添い、売却成功までサポートいたします。
無料相談は随時お受けしておりますので、お電話・Webよりお気軽にお問い合わせください。
本記事では、株主総会議事録や取締役会議事録の作成方法、記載内容、保管期間、さらに注意すべきポイントについて詳しく解説しました。
株式譲渡を円滑に進めたい経営者や管理者にとって、正確な議事録の作成は欠かせない段階となります。法的トラブルを未然に防ぎ、スムーズな業務運営を実現していくにあたり、本記事が参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
M&A・事業承継のご相談はお任せください。 経験豊富なM&Aアドバイザーが、無料でお話をお伺いし、M&Aに捉われず、ご相談いただきました会社・事業オーナー様に最適なご提案させていただきます。 まずはお気軽にお問い合わせください。
RELATED
POPULAR