ビジネスを行っている人であれば「ステークホルダー」という言葉を聞いたことがあるでしょう。ビジネスやプロジェクトの成功において、ステークホルダーは欠かせない存在なので理解しておく必要がありますが、具体的にどのような人を指していて、どのような意味があるのかよくわかっていない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ステークホルダーの意味や重要性、具体例、関係構築の方法について説明します。この記事を読めばステークホルダーについて理解できますので、ぜひ最後までお読みください。
この記事の監修者目次
ステークホルダーとは、企業や組織、プロジェクトにおいて直接的あるいは間接的に影響を与える人々のことを指します。ステークホルダーは利害関係者と呼ばれることもあります。
ステークホルダーは、企業の成長やプロジェクトの成功に重要な影響を与えます。
ステークホルダーと似た言葉にストックホルダーやシェアホルダーがあります。ストックホルダーとシェアホルダーは企業の株式を所有している個人や団体を指します。単に株を保有している株主がストックホルダー、企業の経営に影響を与えるほどの大株主をシェアホルダーといいます。ストックホルダーとシェアホルダーは株式を保有しているため、企業が成長し株価が上がることを期待しています。
一方でステークホルダーは企業の活動によって影響を受けるすべての関係者を含みます。したがって、ステークホルダーによって興味や関心、期待値は違います。
例えば、環境保護団体は企業が環境に配慮した事業活動を行い、環境への負荷を最小限に抑えることを望んでいます。一方で、株主は企業が利益を最大化することを期待しており、そのためには時に環境に影響を及ぼすこともあるかもしれません。
このようにステークホルダー同士の利害が一致しない場合もあるため、ステークホルダーごとに分析する必要があります。
ステークホルダーが企業活動において重視されるようになった背景には、いくつかの要因が関わっています。現代のビジネス環境では、単に利益を追求するだけでなく、企業が社会的責任を果たし、持続可能な社会に貢献することが求められています。
以下でステークホルダーが重視される背景について詳しく解説します。
近年、企業は単なる利益追求にとどまらず、社会全体に対する責任を果たす必要があるというCSR(Corporate Social Responsibility)が強く求められています。CSRの理念では、企業は従業員や顧客、株主だけでなく、取引先や地域社会、環境に対しても責任を持つべきだとされています。
この考え方が広がる中で、ステークホルダーと企業が協力しながら社会課題を解決することがますます重要になっています。企業がステークホルダーに配慮した活動を行うことで、社会的な信頼やブランド価値が高まり、持続的な成長が可能になるのです。
SDGs(Sustainable Development Goals)は、国連が掲げた持続可能な開発目標であり、2030年までに達成すべき17の目標が設定されています。
企業がこのSDGsに取り組むためには、ステークホルダーとの協力が不可欠です。取引先や地域社会、地方自治体と連携し、環境保護や社会問題の解決に向けた取り組みを強化することが求められています。
近年の企業経営では、株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換が広がっています。従来、企業は株主の利益を最優先にしていましたが、2019年に米国の経済団体ビジネス・ラウンドテーブル(BRT)が「企業は株主だけでなく、すべてのステークホルダーに利益をもたらすべき」と宣言したことをきっかけに、企業の責任がより広範なステークホルダーにまで及ぶべきだという考え方が浸透しました。
この流れは世界経済フォーラム(WEF)の「ダボスマニフェスト2020」にも反映され、日本でも「新しい資本主義」として岸田首相がその考え方を支持しています。ステークホルダー資本主義は、株主以外の利害関係者との協力を通じて、企業がより持続可能で広範な価値を提供するべきだという考え方で、企業経営において重要な役割を担っています。
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企業の視点に立つと、様々なステークホルダーが存在します。企業活動に直接の影響を与える存在は「直接的ステークホルダー」です。一方、直接影響はないものの、間接的に影響を与える存在は「間接的ステークホルダー」です。
ステークホルダーの種類 | |
直接的ステークホルダー | 間接的ステークホルダー |
株主・投資家 | 地域社会 |
従業員 | 行政機関 |
取引先 | マスメディア |
金融機関 |
企業の直接的ステークホルダーとしては以下があげられます。
・株主・投資家
・従業員
・取引先
・金融機関
株主は株式の購入や株主総会への参加を通して、企業との関わりを持ちます。株主は株価や配当額が上がることが自身の利益に繋がります。したがって、企業の成長性や公正な経営を行っているかに関心を持っています。株主は企業に対して利益拡大とコンプライアンスを両立させた経営を行うことを求めます。
従業員は労働を行い、対価として賃金を得るという形で企業との関わりを持ちます。直接的に企業の活動に影響を与えるため、組織の成功に欠かせないステークホルダーです。従業員のモチベーションを高め、適切な労働環境を提供することは、企業が発展するために不可欠です。
取引先は企業との取引を通じて、売上の確保や仕入れの調達など事業活動に直接関わります。取引先は商品の仕入れ先やサービスの販売先など、複数存在することが多いでしょう。取引先は将来に渡って取引が継続できるようなガバナンスや成長性の有無に関心があります。
企業は金融機関から事業に必要な資金を調達できます。金融機関は融資した資金に発生する利息を受け取ります。企業が安定した経営を行い、資金返済が滞りなく行われることを金融機関は期待しています。
企業の間接的ステークホルダーとしては以下があげられます。
・地域社会
・行政機関
・マスメディア
企業の事業活動を通して環境や雇用、交通、公共サービスなどに影響を受けます。
環境保護や文化的なプログラムを通して、地域との良好な関係を構築することが、企業には求められます。
CSRという概念も広がってきているため、地域社会に対する企業の責任には注目が集まるようになっています。
企業は事業活動を行うにあたり、法令や経済政策の影響を受けます。
例えば、認可が必要な事業を始める場合は、行政機関に対して届出や申請を行う形で企業と関わりを持ちます。他にも、規制緩和によって企業のサービスや商品、売上に影響する場合があります。また、企業が法令に違反する行為をしていたり、社会的責任を果たしていないような場合は、行政機関によって是正措置をとられることもあります。
マスメディアは企業の活動やサービスを広く世間に伝える役割を担います。ポジティブな報道は企業の信頼性や評判を高めます。一方で、ネガティブな報道は経営上のリスクを高めることになります。
ステークホルダーが企業活動において重要な理由は、多岐にわたります。それぞれの観点からステークホルダーの重要性を理解することで、企業は持続可能な成長や競争力を高めることが可能です。以下、各ポイントに分けて説明します。
ステークホルダーとの密接な連携は、リスク管理の面でも非常に効果的です。
例えば、顧客や地域社会、取引先などからのフィードバックにより、潜在的なリスクを早期に発見し、問題が大きくなる前に対策を講じることが可能です。また、従業員やパートナー企業からの情報提供を通じて、内部のリスクも把握しやすくなります。
ステークホルダーと良好な関係を築くことで、危機的状況においても迅速に対応できる体制を整えることができ、結果的に企業のリスクを最小限に抑えることができます。
ステークホルダーとの連携は、企業の持続的な成長に欠かせません。
顧客や消費者のニーズに応じた商品やサービスを提供することで、企業は売上を維持・拡大することができます。また、従業員のエンゲージメントを高めることで、生産性が向上し、企業全体のパフォーマンスも向上します。さらに、株主や投資家、地域社会などのステークホルダーとの信頼関係を築くことは、資金調達や長期的な投資の支援を得るために重要です。
これらの要素が揃うことで、企業は安定した成長を続けることができます。
ステークホルダーと良好な関係を築くことで成長する具体例を実際の企業を用いながら3つ紹介します。
【例①:従業員との関係性】
Googleは従業員の自由度が高く、創造的な環境を提供することで知られています。その結果、従業員の満足度が高まり、会社に対して高いロイヤリティを持つため、イノベーションが促進され、企業全体の生産性が向上しています。
【例②:顧客との関係性】
アップルは顧客との継続的な関係構築に成功している例です。同社は顧客の意見を製品開発に積極的に取り入れることで、顧客の期待を超える製品を提供し続けています。この結果、顧客満足度が高まり、リピーターや推薦者が増え、新製品の際にも強力な初期販売が見込めるようになっています。
【例③:地域社会との関係性】
パタゴニアは環境保護を企業使命の中核に置いており、地域社会や環境団体と密接に協力しています。同社は持続可能な材料の使用や公正な労働慣行を推進することで、地域社会からの支持を受け、ブランドイメージを向上させています。これにより、環境意識の高い消費者からの信頼と支持を得て、売上と市場シェアを伸ばしています。
これらの例からわかるように、ステークホルダーとの効果的に関係を構築することで、企業は長期的な成長が実現可能なのです。
企業がステークホルダーに対して誠実で透明な姿勢を示すことは、信頼性の向上に直結します。顧客や従業員、株主の期待に応えることで、企業は信頼を築き、ブランド価値を高めることができます。また、企業の社会的責任(CSR)や持続可能性(SDGs)への取り組みが評価されることで、企業の評判が向上し、競争力を高めることが可能です。信頼性が高い企業は、取引先や消費者からの支持を得やすく、長期的な市場での優位性を確保することができます。
企業がステークホルダーに対して誠実で透明な姿勢を示すことは、信頼性の向上に直結します。顧客や従業員、株主の期待に応えることで、企業は信頼を築き、ブランド価値を高めることができます。また、企業の社会的責任(CSR)や持続可能性(SDGs)への取り組みが評価されることで、企業の評判が向上し、競争力を高めることが可能です。信頼性が高い企業は、取引先や消費者からの支持を得やすく、長期的な市場での優位性を確保することができます。
ステークホルダーとの連携を強化することで、企業は市場での競争力を高めることができます。顧客や従業員、取引先からのフィードバックを元に、製品やサービスの改善を図ることで、他社との差別化が進みます。また、株主や投資家からの支援を受けて、研究開発や新規事業への投資が可能になり、イノベーションを促進します。これにより、企業は競争力を高め、持続的な成長を実現することができます。
企業や組織、プロジェクトにおける利害関係者を管理することをステークホルダーマネジメントといいます。
ステークホルダーマネジメントでは最初にステークホルダーの分析を行います。どのようなステークホルダーが存在し、それぞれがどのような関心、影響力を持っているか分析します。ステークホルダーの分析を行うことで、ステークホルダーマネジメントを行う上での戦略を立てることができます。
次に、マネジメント計画を策定します。例えば、情報収集や共有、定期報告、意見交換の場の提供などを行います。
その後、ステークホルダーとの関係構築とコミュニケーションを促進します。ステークホルダーの意見やフィードバックを積極的に収集し、プロジェクトに巻き込みましょう。
ステークホルダーマネジメントでは、ステークホルダーとのコミュニケーションの継続が大切です。
ステークホルダーと良好な関係を構築するためのポイントをご紹介します。
特定のステークホルダーを優遇することは避けましょう。特定のステークホルダーへの優遇は、別のステークホルダーの不信感を招きます。各ステークホルダーには平等に接しましょう。仮に全てのステークホルダーを平等に扱うのが難しい場合でも、あるステークホルダーがないがしろにされていると感じることがないような工夫を施すことが重要です。
自社もステークホルダーのひ1つだと認識しましょう。自社は他のステークホルダーに対してどのような関係性となっているか理解することが大切です。また、主体的に他のステークホルダーとの関係性を構築していきましょう。
ステークホルダーエンゲージメントとは、ステークホルダーの期待や意見を把握し、意思決定に反映することで、ステークホルダーと信頼関係を構築することをいいます。ステークホルダーの信頼関係が強まれば、企業の持続可能な成長に繋がるため、信頼関係は積極的に構築するようにしましょう。
ステークホルダーエンゲージメントを高めるための具体的な方法を解説します。
まず、各ステークホルダーとコミュニケーションを実施し、立場や関心事を整理し理解します。その後、ステークホルダーがプロジェクトに参加できる仕組みを構築し、継続的な改善を行います。
企業が単に株主の利益追求だけでなく、各ステークホルダーの利益を考慮しながら経営を行うことをステークホルダー資本主義といいます。今までは株主資本主義の中で、企業は株主の利益最大化を主な目的として経営されてきました。企業の社会的責任やサステナブルな社会の注目が高まっているため、ステークホルダー資本主義へ意識を変えることが必要です。
企業のステークホルダーに対する取り組みについて、具体的な事例を紹介します。
https://www.kaonavi.jp/dictionary/stakeholder/
SOMPOホールディングス株式会社は各ステークホルダー別に取り組みの全体像と主な取り組み例を公開しています。特にNPO・NGOとの協働による取り組みには力を入れています。交通事故死亡者数東南アジア第一位のインドネシアにおいて、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと共に交通安全啓発活動を行いました。社会的投資収益率の分析を通して、定量的な効果も確認できています。
SOMPOホールディングス株式会社の取り組みは、成功事例といえるでしょう。
大手商社の伊藤忠商事は企業理念の「三方よし」の考え方に基づいて「マルチステークホルダー方針」を定め、様々な活動を行っています。例えば、従業員に対しては賞与の引き上げ、キャリア形成支援、社内イントラネットを通じた情報提供、エンゲージメントサーベイの実施などを通して、従業員のエンゲージメント向上を図っています。
大手金融の三菱UFJフィナンシャル・グループは経営活動を遂行するにあたっての指針「MUFG Way」と「行動規範」をベースとした様々な活動を実施し、サステナビリティレポー トを公開しています。
ステークホルダーへの取組の一例として、顧客から寄せられた意見の内、214件のサービス改善を1年間で行いました。
M&Aの際のステークホルダー対応の注意点について、各ステークホルダー毎に解説します。
株主の人数や株式の持ち株比率を確認することが重要です。株主の構成は会社ごとに異なります。親族、役員、従業員、取引先などが株主となっている可能性があります。各株主の保有数と持ち株比率を調査し、M&Aにおける影響度を整理しましょう。M&Aが成功した後は、株主と信頼関係を築くことが大切です。
M&Aの事実が明らかになると、従業員の中には不安を感じる人がいるでしょう。従業員は社風や風土、組織、担当業務にどのような影響が及ぶか関心があります。不安が大きく払拭できない場合、「退職を検討する」という行動を取る可能性も考えられます。M&Aを進める際には、従業員に対して情報が漏れないようにすることが重要です。意図せずに「会社が倒産するのではないか」という噂が社内外に広まる場合があります。噂により、従業員の退職が相次ぐと、取引先からの信用を失う事態にも陥ります。したがって、M&Aの事実を従業員に伝える順序、タイミング、伝え方については慎重に検討することが求められます。更に、M&Aが成立した後に、従業員を集めた説明の場を設けることが理想的です。譲受企業(買い手)側も同席し、M&Aの背景や経営体制、従業員の今後の待遇などについて丁寧に説明し、不安を解消することが大切でしょう。
M&Aは企業と取引関係にある金融機関にとって、非常に重要です。M&Aを行う際、取引のある金融機関へはM&Aの妥当性を示すための説明が必要でしょう。なぜ、そのM&Aが必要なのか、どのようなメリットがあるのかを明確に伝えることが重要です。新しい経営者に対して金融機関が不信感を抱く場合、融資が難しくなる可能性もあります。M&Aの最終契約書には譲渡側(売り手側)の保証債務解除が含まれていることが多いです。取引のある金融機関にはM&Aについての情報開示後、なるべく早く説明を行いましょう。
M&Aを行う際、取引先には契約条件やサービス提供の変化についての説明が必要です。今までの関係性からどのような変化が発生するか、説明を行いましょう。
取引先の中には、代表者変更や株主変更の事実は通知義務があると契約で定められている場合があったり、通知期間や方法が限定されていることもあるため、事前に契約内容を確認し、適切に報告しましょう。
いずれにせよ、取引先に不安を感じさせない配慮が必要です。
この記事の監修者
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いかがでしたでしょうか。
今回の記事ではステークホルダーの意味や重要性、具体例、関係構築の方法について説明してきました。
企業の成長やプロジェクトの成功のためには、ステークホルダーの理解、関係性の構築が重要です。M&Aも一つのプロジェクトと言えるでしょう。
本記事で説明してきた点に留意して、ステークホルダーとの関係構築を行い、M&Aを成功に導きましょう。
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