M&A Lead > コラム > M&A > アライアンスとは?意味・種類・用語・企業の例をわかりやすく解説
公開日:2024年6月3日
更新日:2024年6月18日

アライアンスとは?意味・種類・用語・企業の例をわかりやすく解説

アライアンスとは?意味・種類・用語・企業の例をわかりやすく解説の見出し画像

どの企業も独自の強みや弱みを持っています。新たなビジネスチャンスを掴み、事業を発展させる上では自社の強みを活かし、弱みをカバーできる施策が必要不可欠です。「アライアンス」は自社だけでは実現できないビジネスチャンスを掴むための有効な手段のひとつです。

今回の記事では、アライアンスの意味やM&Aとの違い、メリット・デメリット、締結の流れや具体例について解説します。

この記事の監修者

アライアンスとは?

アライアンスは、「連携」や「同盟」と訳される英単語で、複数の企業や組織が共通の目標や利益を追求するために協力することを指します。ビジネスにおけるアライアンスは、様々な提携形態、例えば資本提携や業務提携、技術提携などを意味します。

アライアンスは主に、参加各社の競争力を強化し、新しい市場や産業への進出を容易にするために結ばれます。特に、各企業が持つ強みを組み合わせることで、一層の価値創出を目指すために結ぶのが一般的です。

「アライアンス」が用いられるビジネス用語


アライアンスという言葉が用いられるビジネス用語で、

①アライアンス契約
②アライアンスパートナー
③アライアンス事業

以上の3つがあります。以下で詳しく解説します。

アライアンス契約

アライアンス契約は、複数の企業が互いの強みを活かし合い、新たなビジネスチャンスを求めるために締結される契約です。この契約により、企業間で技術や資源を共有することが可能となり、共同で新製品の開発や市場開拓が行えます。具体的には、ある企業が持つ技術を別の企業が利用して新しい製品を開発することが一例です。

アライアンス契約は、新規事業のリスクを分散し、成功の可能性を高めるためにも役立ちます。例えば、異なる市場への進出を計画している企業が、現地の知識を持つ企業と協力することで、地域に適したアプローチを展開することが可能です。アライアンス契約は、協力関係を明確にすることで、双方の企業が互いに成長し競争力の向上が可能になります。

アライアンス契約には、役割分担や資源の共有、情報の交換、機密保持など、協力の範囲を定める詳細な条項が含まれます。また、信頼関係の構築と適切なコミュニケーションが成功の鍵となるため、これらをサポートするための条項も設けられることが一般的です。企業がアライアンス契約を結ぶ際には、それぞれの責任と権利を明確にし、契約解除の条件も予め定めておくことが重要です。

アライアンスパートナー

アライアンスパートナーは、アライアンス契約を結んだ企業同士のことを指します。契約を結んだ企業は、共同でビジネスの機会を追求し、互いの成長を促進する目的でパートナーシップを形成します。パートナー選定の際には、戦略的な目標の一致、専門知識や技術の補完性、円滑な情報交換ができるかなどについて考慮することが重要です。

アライアンスパートナーとは、それぞれの強みを活かしながら、新製品開発などに取り組むことが可能です。例えば、自社が持つ技術をパートナー企業が補完するリソースと組み合わせることで、効率的な製品開発が可能となります。

アライアンスパートナーとの関係は、互いに利益を享受できる平等な関係で構築されることが多く、大企業とスタートアップのように異なる規模の組織間でも成立します。

アライアンス事業

アライアンス事業とは、複数の企業が協力関係を築き、共同で事業を行うことを意味します。アライアンス契約に基づいて行われ、新たなビジネスチャンスを求めることが主な目的です。特に、既存事業の発展や新規事業の立ち上げに効果的であり、業務提携を交わした企業間で新しい市場や技術分野への進出が可能になります。

アライアンス事業の最大のメリットは、各企業が持つ強みを活用して、より革新的な製品やサービスを開発できる点にあります。また、事業リスクの分担が可能であるため、一方の企業だけでは挑戦が難しい新規プロジェクトにも積極的に取り組むことも可能です。

アライアンスの目的

アライアンスの主な目的は、業務効率化や技術発展などによって得られる利益の獲得や成長の促進です。企業間で協力し、連携することにより、新しい製品やサービスの開発、市場シェアの拡大、さらには新市場への進出が可能になります。アライアンスは業務提携や合弁企業の設立といった多様な方法で実施されます。

アライアンスの種類


アライアンスは主に以下の5つに分けられます。

①業務提携
②資本提携
③技術提携
④産学提携
⑤オープンイノベーション

以下で詳しく解説します。

業務提携


業務提携は、異なる企業がお互いの技術や資源を活用して共同で事業活動を行う協力関係です。この提携を通じて、企業はそれぞれが単独では実現することが難しい売上の増加や市場拡大を目指します。具体的には、共同開発や共同販売といった形が一般的で、互いのノウハウや人材を共有し、技術の向上を図ります。

資本提携


資本提携は、異なる企業間で株式を持ち合うことによる資金面での協力関係です。一方の企業がもう一方の企業の株式を取得することによって行われ、双方が資金を提供し合いながらも各社の独立性は保持されます。

資本提携により、各企業は新プロジェクトの資金調達が容易になり、事業拡張や新技術の開発を推進することが可能です。また、資本提携は、単なる財務的なサポートにとどまらず、技術面や業務面での協力を深めるきっかけともなり得ます。

資本提携においては、経営への影響を最小限に抑えるために、通常、株式の持分比率を1/3未満に設定します。これにより、どちらかの会社が他方を支配下に置くことなく、バランスの取れた関係が維持されるため、経営の自由度を保ちつつ効果的な協力関係を築くことが可能です。

技術提携


技術提携は、異なる企業間で技術やノウハウを共有し、共同で新製品・新技術の開発や特許技術の利用に取り組む形式の提携です。技術提携では、特に技術面に焦点を当て、企業が自身の専門知識を結集して新たなイノベーションを実現するための協力関係を築きます。

たとえば、特許技術のライセンス契約は技術提携の例のひとつです。一方の企業が別の企業の特許技術を使用し、その使用料として対価を支払うことにより、双方が経済的な利益を享受します。また、新しい技術や製品の共同研究開発契約も技術提携の一環であり、双方の知識とリソースが結集されることで、より競争力のある製品が市場に投入される可能性が高まります。

技術提携は、企業間で提供される技術が互いの製品開発を加速させるため、特に高度な技術が必要とされる産業で頻繁に見られます。技術提携により、各企業は独立性を保ちつつも、共通の目標達成に向けて協力することが可能です。

産学提携


産学提携は、大学やその他の研究機関と企業が協力し、相互に技術や知識を共有し合う連携形式です。産学提携を通じて、新しい研究開発の道が拓け、革新的な製品やサービスが市場に登場する機会が増えます。

たとえば、ある大学が開発した新しい材料・技術を、企業が製品開発に応用することで、より効率的かつコスト効果の高い製品が生産可能になります。この過程で、企業は特許使用料を支払い、大学はその資金を研究開発に再投資することが可能です。

オープンイノベーション


オープンイノベーションは、企業が自社の枠を超えて、他の企業や研究機関と協力することにより新しいアイデアや技術を創出し、革新的な製品やサービスを開発する取り組みです。このアプローチにより、企業は外部の知識やリソースを活用することができ、独自のイノベーションを加速させます。

企業が自社内の技術やノウハウだけに依存するのではなく、他の企業や大学、研究機関からの入力を受け入れ、また自社のリソースを外部と共有します。これにより、異なる業界や分野のプレイヤーが共同で課題に取り組むことが可能です。

アライアンスと類似の用語との違い

アライアンスと混同されやすいビジネス用語として「M&A」や「コンソーシアム」といったものがあります。違いをしっかりおさえておきましょう。

アライアンスとM&Aの違い

アライアンスとM&Aは、どちらも企業が成長や拡大を目指す戦略ですが、根本的な違いがあります。アライアンスは企業間で協力し合うことで、新しい市場への進出や技術交換、リスクの分散、そして新プロジェクトの共同開発などを目的としています。これに対し、M&Aは一方の企業が他方の企業を合併または買収することで、買い手は市場進出、競合の排除、規模の拡大、そして効率の向上を、売り手は事業承継や売却益を得ることが主な目的です。

アライアンスでは、参加する各企業が自社の独立性を保ちつつ協力します。一方M&Aでは、経営権の移転が伴い、企業は組織的に統合されます。アライアンスは柔軟性が高く、関係を比較的容易に解消することが可能ですが、M&Aはより恒久的な関係を築きます。

このように、アライアンスとM&Aは企業の成長戦略として共通の目的を持ちながらも、アプローチの方法や影響に大きな違いがあります。企業がどちらの戦略を選択するかは、その企業の目指す目的、経営状況、そして市場環境によって異なります。

アライアンスとコンソーシアムの違い

コンソーシアムは「同じ目的を持つ企業や組織同士の共同事業体」のことで、アライアンスと似たような意味を持ちます。しかし、アライアンスは相互の利益を追求する企業間で独立性を保ちつつ形成される提携ですが、コンソーシアムはライバル企業間でも形成されるという点で違いがあります。

アライアンスのメリット


アライアンスを結ぶことで、以下の3つのメリットが得られます。

①企業の競争力を高められる
②迅速に市場参入できる
③比較的コストを抑えやすい

以下詳しく解説します。

企業の競争力を高められる

アライアンスには異なる企業間での協力関係を通じて、各社の強みを活かし合い、競争力を高める効果があります。自社だけでは補いきれない技術や資源、ノウハウを持つ企業と提携することにより、総合的な強みを築くことが可能です。

特に、企業がそれぞれ異なる分野の専門知識を持っている場合、アライアンスは全体のパフォーマンスを飛躍的に向上させる可能性を持っています。たとえば、ある企業が優れた研究開発能力を持ち、もう一方が販売網や顧客基盤を持っている場合、新しい市場の開拓や新製品の迅速な開発といった形で顕著な成果を生むことが期待できます。

迅速に市場参入できる

アライアンスによって、必要な経営資源を有効活用し、新市場への参入にかかる時間とコストを大幅に削減できる点も大きなメリットです。アライアンスを結ぶことで、市場分析、製品開発からマーケティング、流通チャネルの確立までの過程を効率よく進められ、競争が激しい業界内での先行者利益を享受する可能性が高まります。

比較的コストを抑えやすい

アライアンスはM&Aと比較して、事前準備として必要な手間が少ないため、プロジェクトの立ち上げから実施までの時間を短縮できることが多いです。これは特に迅速な市場対応が求められる業界で大きなアドバンテージとなります。

また、アライアンスは比較的リスクも低く抑えられます。M&Aの場合、一度統合が行われると分離が困難ですが、アライアンスでは各企業が独立性を保つため、提携が期待通りの成果をもたらさなかった場合でも解消しやすいです。これにより、失敗した場合の影響が限定的であるため、大きな損失に繋がりにくいというメリットがあります。

アライアンスのデメリット


アライアンスには以下の4つのようなデメリットもあります。

①効果が保証されるわけではない
②情報漏洩のリスクがある
③独自の技術やノウハウが流出する恐れがある
④運営が複雑になる可能性がある

順番に詳しく解説します。

効果が保証されるわけではない

アライアンスは必ずしも成功するとは限りません。提携する企業間でシナジー効果を期待しても、実際の成果が保証されるわけではなく、時には期待に応えられない結果に終わることもあります。

情報漏洩の恐れがある

アライアンスを結ぶ際には、個人情報などの情報漏洩のリスクも考慮する必要があります。自社が高い情報セキュリティ基準を持っていても、パートナー企業が同等の意識や対策をしているとは限りません。

情報漏洩を防ぐためには、提携終了後の情報処理方法についても契約で詳細に規定し、双方の企業が責任を持って情報を管理することが必要となります。また、定期的なセキュリティチェックや情報管理の見直しを行い、変化するリスク環境に適応する対策を講じることが効果的です。

独自の技術やノウハウが流出する恐れがある

アライアンスは自社の重要な技術やノウハウが流出するリスクも伴います。アライアンスにおいては、通常の取引以上に機密性の高い情報が交換されることが多く、それが第三者の手に渡る可能性があります。そのため、秘密保持契約の締結など、情報漏洩防止のための措置を講じることが不可欠です。

運営が複雑になる可能性がある

アライアンスを形成する際、複数の組織が協力するため運営が複雑化し、これが管理コストの増加につながることがあります。それぞれの組織が持つ異なる業務フローや文化を調整する必要があるため、単独で動くよりも多くの時間と労力が必要です。

アライアンス締結の流れ


アライアンス契約の締結は、以下の流れで行われます。

①目的を明確に定める
②自社の強みと弱みを分析
③提携候補の選定
④候補企業の調査
⑤提携内容の設定と契約
⑥提携開始

アライアンス締結の最初のプロセスは、明確な目的を設定することです。明確な目的はアライアンスが成功するための基盤となり、目的が不明瞭な場合、提携先の選定や契約作成が困難になってしまいます。

次に行うことは、自社の強みと弱点を分析し、最適な提携先を選定することです。選定された提携先との初期の交渉を経て、基本的な合意に達し、さらに業務内容や戦略などの詳細な提携条件を設定します。その後、両社が合意した内容に基づいて契約書が作成され、正式な契約が締結されます。

契約後、実際の業務が開始され、提携によって期待されるシナジーを実現するための活動が行われます。提携が始まってからも、定期的な評価を行い、期待される成果が得られているかを確認し、必要に応じて業務提携の調整をすることが重要です。

アライアンス締結の際の注意点

アライアンスを締結する際には以下の3点に注意が必要です。

①契約を守る
②両社の利益を尊重する
③効果の最大化を目指す

契約を守る

アライアンス締結においては、契約内容の遵守が不可欠です。違反が生じると、企業の社会的信頼が失墜し、将来のビジネスにも重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、アライアンスを行う際は、関与する全ての関係者が契約内容を完全に理解し、遵守する体制を整えることが重要です。

両社の利益を尊重する

アライアンスを成功させるためには、参加する両社が互いの利益を尊重することが極めて重要です。片方の企業のみが利益を追求すると、アライアンスは長続きせず、予期せぬ問題や摩擦が発生することがあります。アライアンス締結時には、双方のニーズと期待を明確にし、お互いが納得する形で利益を共有できる体制を構築する必要があります。

効果の最大化を目指す

アライアンスを結ぶ際には、その効果を最大化できるパートナー選びが不可欠です。明確な目的とともに、互いの利益が衝突する部分についても効果的に調整し合うことが重要です。同じ方向を目指し、共に成長できる企業を見つけ出すことが、アライアンスの成功への鍵となります。

アライアンスの具体例

実際の企業で締結されたアライアンスの具体例を紹介します。

東京海上日動とタイムズ24の例

2020年6月下旬、東京海上日動火災保険はパーク24の事業会社であるタイムズ24と業務提携を結びました。

タイムズ24はコインパーキング国内最大手であり、最近では、空いている駐車場をネット上で提供し、ユーザーは予約して利用することができる駐車場のシェアサービス「B」に力を入れています。

自動車保険を提供する東京海上日動には、免許返納により車を手放す加入者の情報が最初に届きます。

車を手放した加入者が駐車場を所有している場合、それをシェアサービスに提供する可能性が高まるのです。

今治造船とジャパンマリンユナイテッド(JMU)の例

造船業界において中国や韓国の大手企業が再編を進める中で、日本でも業界再編の動きが活発化し、2019年に、今治造船とジャパンマリンユナイテッド(JMU)は提携に至りました。具体的な提携内容は、今治造船はJMUが行う第三者割当増資に参加し、液化天然ガス(LNG)運搬船を除く商船の分野で営業と設計の共同会社を設立するというものです。出資規模はJMUの筆頭株主であるJFEホールディングスとIHIの持ち分45.93%を超えない範囲で設定されています。

まとめ

今回の記事では、アライアンスの意味やM&Aとの違い、メリット・デメリット、締結の流れや具体例について解説しました。

事業を効率良く進めるためには、他社とアライアンスを組み自社の強みを活かし弱みをカバーすることが有効です。この記事がアライアンス締結の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修者

POPULAR

読まれている記事